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初見だから眼を凝らせる
「……分かりましたか?では、これにて。」

そう言って獅子人の教師は部屋から出ていこうとして

「あ、そう言えばサイ君。」
「何ですか?」

「私が娼夫をやっていたことを、お友達に話さないで下さい。もし話したら…」
「……了解しました。」
「よろしい。」

そして獅子人は部屋から出ていった。





「はぁ………」
いつも使ってる鞄が、嫌に重く感じる。
あの獅子人の言っていた事は概ね正しい。
確かに自分は頭の回転は早い、記憶力も間違いは無い。
そっち方面なら、活躍できるだろう。
しかし、『ここ』では自分以外の人は別なことに秀でていて。

「ふんっ…!ふんっ……!」
名前も知らない筋肉質な犬人が、バーベルを担いだままスクワットをしている。

「…─〜…─…〜〜〜──」
自分と同じ程の体格の猫人が、案山子に向かって顔くらいの大きさの火の玉をぶつけている。

「よろしくお願いしまっす!うおおおお!」
自分のちょうど前方に盾と剣を構えて誰かに突撃する牛人。
大方スカウトしに来た便利屋に力試しでもしてもらっているのだろう。

巻き込まれないように避けようとして、


「ガファァァッ……!」
鈍器同士がぶつかったような音が正面から耳に入り、
視線を上げて見てみれば

牛人が宙を飛んでいた。

そして自分の飛び越して、後方数メートル辺りに無事に胴体着陸。
気を失っているようで、うつ伏せ気味に倒れ、白目を剥き、舌がだらしなく口から出ている。
先程まで構えていた剣は、根本から見事に折れていた。


「…オイ、やり過ぎだろうが。人間一人飛び越しちまったぞ。」
「カウンターが綺麗に決まり過ぎたんだよ…それだけこいつが力自慢だったってだけだ」


騒がしい声が牛人離陸地点予想地から聞こえる。そちらを見てみると、
白い竜人とありがちな体色の虎人が言葉のドッジボールを繰り広げていた。

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あきゅろす。
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