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担当者は剥がして
空きっ腹な割に集中力は絶えない。思いの外大作の予感。ラーツは何だかんだで友達だから。
周りの騒がしさは消え失せている。皆散らばっているのかもしれないが、自分には関係が無い。

あと六割といったところか。ナナカギさんは外にいたままなのか、やはり自分にはどうでも良い。

ごつごつ、と扉が叩かれている。受け答えぐらいはしようと立ち上がり、扉を開けようとしたが内側からは持ち手が無い。
あちら側もそれに気付いたようで、ゆっくりと開かれると、そこには例の狼人が笑みを浮かべて立っていた。

「時間だ、俺についてこい……と思ったけど先約があったんで」
「………これ、ですか?」
「ああ、ソレだよソレ…へへ……」

腕に巻いた牙を軽く振ると、嬉しそうに何度も頷いて。
「ちょっとした話を教えてやるとね、俺は人気の疎らな道で一人の死体を見付けたの」

喋りながら頭を掻いている。爪が鋭すぎるような気もする。

「毒飲んで死んでた。近くには『罪の意識が消えない』って遺書も書いてあった。で、そこで俺は思い付いた」
今度は身体を解すように腕を伸ばしている。ごきりごきりと間接から音が響く。

「コイツを借りようってね。んで俺は捕まった、十何人殺して死刑になった、そこでナナカギとかに出会った!」

全身の皮膚が弛んでしまったように見えた。そして狼人は頭を掴み、思い切り引っ張る。

「早速皆に知らせたの。スゲェ面白い事だよ。俺は構う暇は無い…それじゃあな!」

かなり聞き覚えの少ない音を立てて、狼人の皮膚が裂けた。千切れた。中身が見えた。
それはあえて言うならば、昆虫を無理矢理二足歩行に仕立て上げたような異形。
瞳が気になったのはこのためだったか。口が開く姿は少し身を固めてしまう。
そんな異形が元気良く自分に向かって手を振った挙げ句に、床を蹴って駆けていくとは。

「…………」

ナナカギさんの言っていたもしもの事が実際起ころうとしている。
きっと赤毛さんもここに入ってきているのだろう、自分の無実は恐らく証明されるとして。
魔法陣を描くのを続けよう、自分が遺せる物を。

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