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誘導役は裏があって
「どのくらい時間を練った計画だと?」
「えーと、入ってすぐに計画を思い付いたらしくてー、皆賛成してノリノリで計画に乗ってくれてる」
「それぞれの大概の役割は決まっている?」
「勿論。因みに俺は『決行日間近に入ってきた遅れ羊を導く役、来るまでは雑務と言う名の役無し』」
「………貴方的に考えて、計画に穴はあります?」
「無いね。億に一つぐらいならあるかもね…」

実にしっかりした計画のようで。だけどナナカギさんは指導役云々で自分から動きはしないだろう。
自分の手は汚さずに悠々と脱獄。何をやって何人を殺したのか。爆弾。毒。それともよく分からない何かで。

「……という訳で明日は特に何も考えず俺についてきてねぇぇぇ?」

いきなり狼人が自分の手元を見つめる。
手錠にバングルに、赤毛さんの牙が数個ぶら下がっている。

「大事な物だ」と嘆願したら腕飾りぐらいは、と多目に見てくれたのだ。
実際そうとう危なげな代物だけれど。

「……この腕輪はとある町の蚤市で買った物で」
「嘘つきは泥棒だ」
「蚤市からは盗んでませんよ」
「蚤市自体行ってるかどうか」
「…………」

狼人はにやりと笑いながら自分に顔を近付けて。
大体の獣人のように縦に裂けた瞳孔が見えない。吐息の感触も無い。
更に良く見つめ返してみると白目の部分が存在しない、代わりに蒼色にインクを落としたような黒色が一点。

「……だから面白いんだ。君は殺ってないのにいるなーんて、上出来なジョークだ。またね」

狼人は手を振りながら鍵を開け、出ていった。
さて、まずは魔法陣を描き上げなければならない。
案外時間は無い。今すぐにでも部屋に戻って消灯ぎりぎりまで頑張る必要も出てきたかもしれない。




「………」
解呪用の魔法陣はこれで良い筈だ。これで金髪の女性さんからの頼まれ事は完遂。部屋に置いておけば逃げた後に誰か気付いてくれるだろう。
燃やされなければの話だが。

「…………」

でもまだ夜は長い。予想以上に早く終わってしまった。
しかし特に思い付く暇潰しも無いので、再び例の官能小説を読んで、そうしている内点呼、そして消灯となった。

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あきゅろす。
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