死刑囚は企んで
最近の収監所は、随分囚人を優遇する場合があるらしい。
罪を償うための場所、ではなくて罪人の社会復帰を援助する場所に。
毎日の運動に三食栄養学的に正しい食事に社会奉仕活動に。
欲を言うならば、自分とは全く無関係である事か。
「…………」
満腹感からの眠気で目を細くしながら、桃色の天井を見つめる。
夕食後にはなぜか自由時間にシャワー、その後点呼があって消灯。通路等の監視は続けられるようだが、プライバシーだかの関係でこの部屋までは監視はされてない。恐らくは。
分かりきっていた事を自分の中で改めて考え直すと、どうやら自分は罪を被せられた上に極刑になる。
事の詳細はあの金髪の憲兵に話したが、彼女は決して周りに話さないと約束をしてくれた。
………自分は救われない。
外からノックの音が聞こえる。
時間的にはもう自由時間だ。
でもこのまま部屋に籠っている事も出来るので、
敢えて部屋から出る事にした。
「それで彼女は、遂に魚屋の彼よりも左官屋の彼を選んだのです……」
「…………」
運動時に自分に話し掛けてきた鹿人が何らかの話を周りにいるほぼ全員にしている。
いきなり中に割り込む訳にはいかないな、と思っていたら一人の狼人がこちらに近付いてきた。
自分よりも背丈が高いのは当然で、マズルは少々短めか。
「君が新入り君かい?あーハイハイちょっとこちらにー」
出会い頭に手錠の鎖を掴まれてトイレに連れ込まれる。
ヤクトさん等から噂は聞いていたものの、流石に早すぎはしないだろうか。
個室に連れ込まれ、小気味良い音と共に鍵が閉められた。かなり狭い。
「えーとね、君の名前とかはナナカギさんから聞いてるからサックリと言うからね」
あの鹿人の名前はナナカギらしい。それより自分はどうしようか。
「明日囚人一斉に牢屋から飛び出すから、君は俺についてく事だけして欲しいってさ」
「はあ……」
「で、君みたいな新入りの世話役として今まで暇だった俺もよーやく活躍出来る訳よ」
「……明日の何時頃に?」
「朝の点呼時に。看守の命なんかあまり考えないよー」
どうやら魔法陣を早く完成させる必要が出てきたようだ。
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