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罪人達は分かち合って
運動。器具は色々あるみたいだが、主だった運動はランニングだ。看守達に囲まれながら暫く走り続ける。
正直かなり辛い。自分の体力の低さも合間って額から汗が浮き出てくる。無論最後尾だ。

「…ふぅ…はっ……」

何周かを走り終えて身体を折り曲げ息を整える。もう十分に疲れたのだが。
後の半分は適当にやれとの事だ。独房に帰っても良いがその時手錠が付けられる。
皆も卓球やら何やらを適当に行っているので、それを見ながら息が落ち着くのを待つ事にする。

「……少し宜しいですか?」
笑みを浮かべた鹿人が話し掛けてきた。

「…はい、良いですけど」
「そうですか。では、名前を教えてくれませんか?」
「サイ=スロードです」
「……実際檻の中は少々暇でしてね。娯楽の中に『次に入ってくる人がどんな人か』という物があるので」
「……名前の中にどんな文字が含まれていたり、とかですか?」
「私は次に来る人の名前にはカ行の字が含まれてない、且つ五文字以上七文字以内に賭けていましたので」

手を差し出してきた。自分と同じく魔力封印用のバングルが着けられたそれを握り返す。

「……賭けてたものもありませんが、単に気分が良いです。宜しく…」
「はあ………」

卓球場で球がリズミカルに高く跳ねた、と同時に一人の狼人がそれを追って高く飛ぶ。目測三メートル半。
追い付いてラケットを振り下ろし、弾丸の如く向かった球は網に引っ掛かってそこで終わる。

「……君はあんな風に楽しめます?見た所、ついうっかりで人を殺したように見えますけど」
「………ああ、うっかりでそんな事になってるみたいですね…」

走り続けている数人を見ていたら、手を振ってきた。

「…私は死にたくないんですが、今まで殺してきた人もそう思っていた事を考えると
やっぱり死にたくないですね。やたらと生きていたくは無いんですが」

死刑囚が平然と自分の隣にいる。ここはそんな場所だった。
否、ここの規模に比ると人が少ないような

「…今いる人が、全員」
「その通りです。無論、君もですよ……」

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あきゅろす。
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