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囚人は独りの部屋で
「………」「……さよなら」
蒼蜥蜴人が自分に対しての尋問、だろうか。自分は無実だが赤毛さんの事を喋ったら話が拗れると思い、その辺りは適当に誤魔化した。



「ありがとう。ちゃんと描き上げること」「分かりました」
紙を数枚と鉛筆とを渡された。あの魔法を打ち消す魔法陣を描き上げろとの事だ。案外中は暇らしい。
ついでに描き上げた後は何を描こうか。自分に与えられた最後の娯楽ならば存分に楽しみたいが。

「……さぁ、こっちだ。下手に抵抗したなら…」
射殺もありうる、と思って振り向いたら手にしているのは警棒だった。
スイッチが手元に付いているのが見える。高圧電流でも流せる、そのまま殴られたら意識など呆気なく飛んでしまう。
中身入りのホルスターもしっかり腰に吊られているので、大人しく後に続いた。



「……ここがお前の部屋だ」
「…思いの外広いですね……」

しかし簡素な部屋だ。ベッドに空いた空間にトイレ。
角が削れた棚には疎らに本。
採光用の窓にはぎっちりと鉄格子が。

「……ほれ、スケジュール表だ。実刑になる前に病気されたら困るから、と善意を持ったスケジュールだ。遅刻すんなよ。それでは……」

そして重厚な扉が閉められる。食事を差し入れるために開けられたスリットもしっかり閉じてあった。

今身に着けているのはジャージに似た服で、所謂囚人服だ。
更に手元には手錠と、魔力を限りなく封印に近付けるらしいバングル。
自分には魔法は使えないが、標準装備となっているらしい。

「…………」

された『検査』のお陰で、相当臀部がずきずきと痛む。彼処まで奥まで手を突っ込む必要は無い気もするのだが。

スケジュール表を見た。埋め込まれた時計によると、『昼食』は過ぎ、もうしばらくで『運動』の時間だ。
ベッドの下を調べると埃一つ無い。とりあえず紙と鉛筆をそこに敷いた。そしてベッドに横になる。

「……………」

首吊りも薬物注射も電気椅子もここには揃っているとの事だ。
死刑の前日には好きな料理がリクエスト出来るらしい。
天井には照明が柔らかい光を発している。
血気盛んな人を落ち着かせるためか、部屋の壁は柔らかな薄桃色だった。

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あきゅろす。
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