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犯罪者は檻の中へ
「…私達と一緒に、来て貰えないかな?」

見掛けによらず柔らかい口調だが、その表情は十二分に険しい。
一昨日列車の中で銃を振り上げたと思ったら白狼人に押さえられた人に関しての証言か。それとも。いや、それで合っている。

「…とりあえずは、少し待ってて下さい……」

蒼蜥蜴人を押して追い出そうと。身体の感触が非常に固い。きっと鍛え上げられている。
扉を閉めて上下着終わったフーガさんに近寄る。

「…ちょっと出掛けてきます」
「え?お客さんにお茶は出さなくても?」
「実は昨日列車乗っていたら不審者が来まして、多分詳しい証言をすると思います……」
「じゃあ来てるのは憲兵?……気を付けてね。愛情とかを込めた料理作って待ってるから……」

今まで食べてきた物に愛情以外の不可思議な隠し味は入っていないと信じ、扉を再び開ける。憲兵達は皆揃っていた。

「大丈夫、みたいなので……何処に行けば良いのですか?」




簡単な証言なら近くの駐在所等でいいのに、列車に乗せられた時に気付いておくべきだったのか。
自分が連れられる場所は、もし今持っているならば銃も捕集器もきっと没収されるような場所か。
まだ本は読みかけだったが、特に悔しさ云々は感じられない。
不思議な事に手錠の類いは一切付けられてない。別段暴れて逃げようとは思わないが。

「…………」

流れ行く景色をただ見ている内、に目的の駅に辿り着いたらしい。
降りようと席を立ったので大人しく着いていく。自分は無罪な筈だ。恐らくは。



自分の予想より大規模で、広大で、何重にも囲われていた。

全体を一周する塀は獣人の身体能力を考慮しての事か高さは自分の身長の三倍強。その上には有刺鉄線。
その内側にも自分には到底登れそうにないような金網。ご丁寧に電流が流されているようだ。
更にあちこちに魔物が放されている。口を閉じたままでもその鋭利な牙が良く見えるようなそんな魔物。
喰らい付いていたのは何かの骨だ。かろうじて残った肉には服らしき布切れがくっついている。

多分ここはそんな場所だ。
比較的重い事をした罪人の命を終わらせるような。

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