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熱意ある会話から帰宅
「……やぁ皆様!御安心下さい!不審者は無事に拘束します…この寒がりめ!」

威勢の良い声で喋りながらその白狼人はフードの人を取り押さえる。彼、或いは彼女は既に気絶しているようで。


確か、シューゴを捕まえた時に自分とすれ違って、話し掛けてきて、黒豹人の女性に吹き飛ばされていた憲兵だ。

「…………!」

ぱちぱちと疎らな拍手を乗客は鳴らし始める。その白狼人は深々と一礼をして、駅員らしき人物にフードの人の身柄を預けた。


その私服姿の白狼人は改めて車内に入り込み、辺りを見回して空いている席を探し……自分と目が合った。

「!」

早足で自分の隣に近寄って、いきなり座り込んできて興味津々といった表情でこちらを見てきている。

「君ぃ!…もしかしたら……あの便利屋じゃないのかなっ?」
「……多分その通りかな、と」
「やはりそうかっ!あ、シューゴ君は元気みたいだぞ!愛する彼氏も出来たようだしなっ!」

拘置所で会った時と同じテンションの高さ。普段からこういった感じなのだろう。
シューゴについては一応喜んでおこう。獄中結婚も夢じゃない。

「…何故か私の部下にな、まあ入りたてホヤホヤの子供が嫌に便利屋を毛嫌いしてるんだがね…私は、君達とも仲良くやっていくつもりだ!ヨロシク!」


親指をぴんと立てて、しかも列車の中でそんな高らかに宣言しなくても良いんじゃないか。そう思いながらも、取り敢えず相槌を打った。

それから白狼人は他愛無い話を続ける。最近部下の黒豹人に吹き飛ばされる回数が減ったとか、
自分が鍛えている憲兵が全員異常な伸びを見せているとか。適当に頷きながら、
目的地に着き、自分は列車を出た。白狼人は手を振っていた。




「お帰り、サイ君。所長達は何日か泊まるってさ…」

戻ってきた便利屋には、何時ものように暖かな食事の良い匂いと、服を着ていない鳥人の姿が。

「そうなんですか…暫く二人きりですね……」
「だよね?だからさ、私と一晩くらい」
「すいませんが、今日は無理です」
「……『今日』は?」
「明日もきっと同じ事を言うので、そのつもりでいて下さい…」


残念がるフーガさんを尻目に、普段より寂しい夕食を摂りにかかった。





【第七巻 終】

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