液体の蒸発から再会 その途端、まるで沸騰でもしたかのように牙を刺した箇所から黒色が泡立ち始めた。 ぼこぼことゲル状の表面が波打ち、牙を握る手元が徐々に熱くなり始めている。 暫くの間黒色は沸騰し続け、自分の周りに熱い黒煙を吹き出して。それに合わせて体積が減ってきたようで。 厚みが減ってきているのだ。最初は水玉みたいな潰れた半球状だったような、 更に黒色は薄くなる。牙が地面に触れた感触がする。 ごく普通の水溜まりのようにまで減って、黒煙が出なくなって、今度はひび割れ始めた。 最終的には全体に縦横あちこちに亀裂が走り、崩れ出して。粉状になって、全く動かなくなった。 自分は列車に乗って、がたごとと揺られている。所持金は町に来る前より大分増えた。 何気無く先程出た町を見ても、特に何も見えはしなかった。 「……………」 座席は六割半ぐらい埋まっていて、辺りは少し騒がしい。話し合う声はどれも楽しそうに聞こえる。 眠って時間を潰したいが、金の詰まった鞄を取られるかもしれないのが心配だ。 眠気は特に無いので、復路の景色を見て暇を潰すのも悪くないか、 と、何処かの町の駅で停車、新しい乗客が数人入り込んでくる。 何故かフードを目深に被った、そのせいで何人かは分からないが、 手袋を身に付けているためにやはり種族は何か判別出来ないが、 足元まで隠すようなロングコートを纏っているためやはり種族は分からない、 その人が列車の中に入るや否や、ポケットから何かを取り出した。銀色に煌めく物体だ。その人はダガーナイフを手に持っていた。 自分の前に座っていた乗客がそれに気付いて、はっと息を飲み込む準備を。 女性は驚きから耳が痛くなる叫び声を上げる用意を。 その人は何をするのか分からない、目についた人をナイフで襲うか、それともまた何か取り出すか、もしかしたら自殺か。 「う、うわ」「……キ」 鈍い音が車内に響いた。固い物同士がぶつかり合うような音。 その人は下半身を上にして、頭が床に接していた。腰にはその後ろの人の白い体毛で包まれた腕が回されている。 「あぁぁぁ……?」「アァ…っ?」 勢いがみんなかき消えてしまった。 [*バック][ネクスト#] [戻る] |