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予想外の驚愕から霧散
赤毛さんは悪魔だった。
何処かのお伽噺のようにけたたましく笑い、呆気に取られたような周囲の人達を眺めている。


「………っう、…うわあぁぁぁぁぁっ!」
「キャアアアアアッ!」
「…っ……」

民衆の叫びよりも、丸太に縛り付けられている女性の絶叫の方が耳に響く。腕を掴まれて塞げない。
……フードの連中達は、どう動くのだろう。

魔払いを生業としているなら『魔』と名前にしっかり入っている悪魔も十分範囲内だと思うが。
自分の足が地にちゃんと着いていて、掴まれていた腕が解放されたことから考えると。


「…………」

フードの連中は皆が一斉に逃げ出していた。民衆たちも押しやって。鞭等の道具も全て置き去りにして。
一人ローブの裾を自分で踏みつけ、盛大に転んでいる。
それに続いて民衆もわっと一斉に。耳に届くのはざわめき声と無数の足音。助けを求める声。





静寂。拾う暇も無くて地面に転がる貨幣。丸太に縛り付けられ更に固まった表情の女性。
その女性を見る赤毛さん。

「縛られたままじゃその内身体が固まって筋肉痛になるぞー?」
「…あぁぁぁ…かかかかか……」

がくがくと身体を震えさせている垂れ耳の犬人の女性、確かに全裸の悪魔に突然質問をされたら返す事は難しい。

「……そらよっと」

軽くその緋い手を振るうと、身体を丸太に留めていた縄が一斉に切れた。

「……きゃああぁぁぁっ!」
耳に響く叫び声を上げながら、牛人の女性は走って逃げていった。
犬人の女性は身体を震えさせ続け、その場に座り込む。腰が抜けたようだ。


もう一人自由になった猫人の女性が自分の肩を叩くので振り向く。

「…私の代わりに悪魔にお礼を言って貰えない?」


赤毛さんにその声が聞かれ、こちらを向く。そして近付いてくる。


「…目の前にいるんですから、直接言ったらどうですか?」
「そうだそうだ」
「だって悪魔に頭下げてお礼言って、悪魔の方が困るんじゃない?」
「…………」




猫人に踵を返し赤毛さんの方を向く。
「『ありがとう』との事です」
「…どうも……知ってるけどな…」

赤毛さんは困ったように頭をばりばりと掻いた。

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