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いかれた思想から合掌
「ぎゃあぁぁぁぁっ!?いやぁぁぁぁぁっ!」

身を捩っても無慈悲に、比較的スレンダーな腹に串が突き立てられている。
串の動きがそこで止まる。腹から背中を突き抜け、恐らく丸太に少し刺さっている。

「では、もう一本……」
「いやあ゛ぁぁぁっ!?ぎゃぁぁぁっ!?」

止めようとは思わない。集まった民衆が自分に何をするのか分からない。
フード連中が何をするかは分かる。
『この人間にも魔が憑いている!』後は自分も仲良く棒に縛り付けられて、それで民衆が何もせず自分を見る。それで、終わりだ。


「皆様、大変残念なお知らせがあります……」
「…………」
「またしても、魔が定着しきっていて、住民の命がまた一つ失われてしまいました……」
「…………」
「…しかしっ!私達は屈したりはしませんっ!今度こそ魔を追い出して見せましょう!」
「オォォォォッ!」
「嫌あぁぁぁぁぁっ!」

身体に六本もの串を刺しておいても、誰もおかしいとは思わないのだろう。
嫌いな人。商売敵。何と無く。そんな簡単な理由で人が公開処刑される。利用するに越した事はない。
残念ながら。確か人は集まって興奮状態になると、善悪の区別が付きにくくなる、と。



「……皆様、再び我々は過ちを犯してしまいましたっ………」
「……………」
両肘の先を潰されて、ついでに十数回頭を棒で殴られ血を流して死んだ牛人の女性一人。
それを尻目にフードの人は周りの民衆に話しかける。
次は赤毛さんの番だ。助ける事は出来ない。助ける必要が無い。助けなくて良い。


「……続きましては、こちらの魔憑き候補を」
「………男は燃やしちまえ!」

と、始めて民衆から野次が飛んだ。言っている事は魔憑き調査に賛成しているようだけれど。

「男は火で炙らないと魔が出てこないって聞いたぞ!」
「聖なる炎で浄化をするべきだ!」
「男の拷問なんざ全くつまらねぇぞぉ!」

「もーやーせ!」
「燃やせ!」
「燃やせ!」



「……分かりました皆様、いざ、炎による浄化を!

皆分かってて、これを止めようとはしない。
最大の娯楽は無理に止めたりは出来ない。

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