何らかの意図から負け逃げ
また犬人と猫人が負けて、自分は降りていて、赤毛さんが一人勝ち。
自分もちょっと勝つか降りているかのどちらかで、所持金はおよそ二倍になった。
……と、犬人と猫人はどれだけ勝っていたのか。若しくは負けていた、或いは負けっぱなしか、自分が来るまで勝っていたのか。
「…ぁ………」
「っ…か………」
見事に死相が浮かぶ表情からするに、赤毛さんとはずっと今と同じような感じだったのだろう。
たまに勝つか降りているかしている自分がいるかいないかの違いだけで。
「…………」「…………」
と、犬人と猫人がほぼ同時に席を立って、店の外に出ていってしまう。マスターらしき人の話も聞かないまま。
……自分達、違う赤毛さんを皆が怪訝そうな眼で見ているような。
「あらあら…一対一の勝負、受けてくれる?」
「……暇潰しに、受けてみる事にします」
「そう来なくちゃ楽しくないね。理由はともかく容赦しないかんねっ…」
人数が減る、使うカードが減る、二人の切羽詰まった顔が見えなくなって申し訳無いが、落ち着いて勝負に集中できる。
赤毛さんがカードの束をシャッフルして、途中で束を渡され、次に自分がシャッフル、そして上からカードを五枚渡し、自分は下から抜き取る。
「面白いやり方するね。ジンクスかい?」
いきなりそれなりに多めの金額がテーブルの上に。自分もそれに合わせる。
「さあ、何となくですよ……」
二枚だけチェンジ、赤毛さんは三枚。
そして再び、自分は一枚の硬貨を山に積む。と、赤毛さんは十枚弱。自分がそれに五枚足し。すると七枚。三枚。三枚。
赤毛さんの開かれた手札には、数字が順に続いていた。
自分の手札には同じ数字が三枚と別の同じ数字が二枚。
「……何となくで負けちゃったいっ…」
言いながらも赤毛さんは笑いながら金の山を自分に押しやってくる。
素直に楽しんでいるからこその能天気な笑顔だ。狡猾な笑いよりもずっとずっと素晴らしい笑顔だ。
「続けますか?」
「勝つまでやるさっ……」
そしてシャッフルした束を、赤毛さんに寄越した。
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