暗黙の了解から着席
街中に入ると、まず妙な物を見付けた。自分の背丈よりも大きな丸太が広場らしき所に立てられている。
射撃練習用かな、と思ったが恐らく違う。穴一つ空いていないし、広場はそれにはやや狭い。
「…あの……らしいわよっ…」
「まあ……気の毒……」
「アイツ……適当な理由で…」
「…へっ………良いなそりゃ……」
それなりに住民は外に出ているのだが、皆近寄って内緒話らしき事をしている。
町長の悪口を言ったら犯罪なのに、どうしても言わざるを得ない程に町長が無能か、
その割には道に椀を置いている身なりのボロボロな人物なんかは誰もいない、
やたらごてごてした貴金属類を身に付けた体格の良いスーツ姿の集団も見ない。つまりどういう事だろう。
「…………」
自分の胃袋が内部の空気を押し出して、間抜けな音が腹部に響いた。少し早いが何か食べるとしよう。
歩いている内に有りがちな酒のなみなみと注がれたジョッキの看板を見付け、直ぐ様その中へ入った。
「水と、何かお腹に貯まるものを下さい」
「はいよ、少々お待ち下さい……」
前に出された水の入ったグラスには一点の曇りも無く、
飲み下せばしっかりと冷えた水が自分のこめかみ辺りを少し痛くさせた。
「はい、お待ち……ウチの自信作だ…」
ちょっと待って置かれた皿の上には分厚い肉が挟まれた厚切りのサンドイッチ。
早速端から食べ、熱々のそれは、さくさくとした食感も肉の旨味も十二分。
何より腹に溜まる。二切れで夜まで持ちそうな程だ。時々水を含み、口の中をさっぱりさせる。
「……よぉボクちゃん、面白い遊びをしねぇかい?」
端のテーブルで誰かを呼ぶ声がしたが、多分呼ばれているのは自分じゃなくて、子供か何かだろう。
「……そこのサンドイッチ食ってる人間さんやーい…」
自分はサンドイッチを今食べてはいない。サンドイッチ入りの皿前で水を飲んでいるだけだ。
そろそろつまらなくなってきたので、サンドイッチを食べながら声のした方向に振り向く。
端のテーブルには何人かの男に、それに囲われているようなカードが。
少しぐらいなら大丈夫だと思いテーブルに向かう。そうして破滅の道を歩く方が多い事は、前々から分かっている。
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