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シャツと夏(仁王)




「暑いのう」
「もうすぐ9月になるってのにねー」


心頭滅却すれば火もまた涼しなんて一体どこの誰がいつ言った。俺らの頭上に輝く丸い火は俺らを照らすことを止めない。

「夏ほどいらん季節は無いのう…」

全く意味の分からない言葉を残しよって全然そんなことないじゃろ、昔の人はいい加減じゃ。


「ぅあっちぃ〜…っ」

いつもの帰り道で俺の隣を歩く女はかわいいかわいい俺の彼女、のはず。
彼氏が隣に居るというのになんじゃそのオッサンみたいな態度は。居酒屋で飲んだくれるリーマンじゃあるまいし。
そんな名前を見かねた俺はもうちょいかわいらしい反応できんのかと聞いてみた。


「あー…できるよ。」

なんじゃあっさり肯定しよって、疑わしいにも程がある。ほんなら最初からそうしんしゃい、そう言うと名前からは「めんどい」と一言。
まぁ媚びられるよりは幾分ましじゃ。俺は名前のそんなサバサバした感じが喋りやすくて気に入っている。
だけどこれとそれとは話が別。


「疑わしい、やってみんしゃい」

俺がそう言うと名前は何も言わず俺の2、3歩ほど前に出て振り返り、シャツをぱたぱたした。


「あつくて汗かいちゃった…拭いて?仁王…。」
「な……」

なんじゃそれ、かわいすぎる、そんであほすぎる。そんでこんなクソ暑いなか名前を抱きしめたいとか思っとる俺は馬鹿すぎる。

名前で頭がいっぱいになったら暑さなんか吹っ飛んだ。代わりに別の熱が俺の中を支配する。

「ええよ。家寄りんしゃい。」
「違うよ!仁王が可愛く暑がれっていうからやっただけ!」
「まぁそう言わんと」

下校前にベストを脱いだ名前のシャツは汗ばむ身体にはり付いて、うっすらと下着が透けて見えた。夏服万歳。
薄いピンクに白レース。いやいや、楽しみじゃ。

「何ニヤニヤしてんの、えろ」
「今日はどう脱がそうか考えとった」
「バカ!」
「いてっ」

さっきはいらん季節じゃと思ったが、夏も悪くない。俺より家の遠い名前が一刻もはやくクーラーのある部屋へ、と、簡単に家に連れ込める。

「…こんの?」
「…………行くけど」
「なら冷たい麦茶でも出すかの」

俺は名前の手を掴んで指を絡め、いつもは別れて一人になるはずの道を二人で歩いた。




シャツと夏
(……ピンク)
(……………殺す…!)







あとがき

3月に何故夏モノを…
日本で一番夏が暑い県に住んでいる管理人は夏が大嫌いです。

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