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ゆびずもう(丸井)





私は今、彼氏である丸井ブン太のベッドの上で戦っている。


「むむむむむ…っ」
「…の、やろ…!」


普通ならベッドの上で向かい合って手を重ねて、なんて聞いたらどう考えたっていやんな空気を誰もが想像するだろうに。
しかし今この空間には一切そんなもの漂ってはいない、唯一漂っているのは闘志のみ。一瞬でも気を緩めれば相手にのまれてしまう。のまれてたまるか!


「逃げたら終わんねぇだろぃ…っ」
「そっちこそ…!」

親指だけ上に突き出し組まれた手は、次第に汗ばみ、若干不快な感じになってきている。ていうか不毛だ。この戦いの終わりが見えない。
片方が逃げれば片方が追いかけるという行為がもう何分も続いている。リーチの短い私は攻めるにも逃げるにも不利で、いい加減に親指が限界に来ていた。てゆーかまじつるんだけど。

負けるのは絶対に嫌な私はもうやめようと彼に提案しようとした、その一瞬の隙、「よっしゃあ!」とブン太はいきなりぐぐぐ、と腰を浮かせ前のめりになって、ついに私の親指を捕らえた。
すごい力で挟んでくる指から逃げようと、もがいてもビクともしない。ブン太はそんな私を無視するようにカウントダウンを開始した。

「1234567…」
「ちょ…!あああぁぁあ!!」
「89…」
「痛い痛い!」

「10!」

カウントダウンが終わった瞬間、前のめりだったブン太がそのまま体重に任せて倒れ込んできた。ベッドのスプリンクラーがぎしりと音を立てる。
ブン太は「俺の勝ちー」なんて上機嫌に言いながら私の腰に両腕を回してぎゅうう〜っと音が出そうなぐらいにきつく抱きしめてきた。ていうか痛い痛い痛い。臓物的な何かが出ちゃうよ丸井さん!


「ご褒美くれよ」
「へっ!?」

唐突にそんなことを言われてもわけが分からない私はぽかんとしていると、ブン太は私の開きっぱなしだった唇に唇を重ねて、しかも舌まで侵入させてきた。

「むっんん〜…っ」

急だったからかなんなのか、私の口からはただ苦しいと訴えるような変な声が出ただけで、気の利いた声は一切出てこなかった。
でも出ないなら出ないでそれでもいい。どのみち今の私はそんな気分じゃない。


「んぅ、…っはぁ」

口が離された頃にはすっかり私の息は上がって、酸欠のせいか頭がくらくらした。
ゆっくり離れて行くブン太の唇には唾液の糸が引いていて、蛍光灯の光を反射しきらきらと光っている。ブン太の唇もてらてらと光っている、てことは、多分私の唇も。

「名前」
「ん…?」
「かわいい」
「…何、急に……」

どう考えてもブン太の方がかわいいし、私のことかわいいなんていう人は家内以外いないんだけど。なんて言ったらブン太は黙って私の両頬に手をあててむにむにしてきた。

「むむぅ…」
「名前のほっぺたきもちいな」
「どうせ肉ついてますよーだ」
「んなことねーって、そんくらいがちょうどいい。つかもう1回」

そう言ってブン太は私に許可なんか取るわけもなく口づけて、舌を突っ込んできた。私の舌の裏すじを舐めあげてきた時はびっくりして後退りそうになったけど、それよりびっくりしたのはブン太の手。私の着ていたシャツの中に手が侵入してきて、お腹を撫で上げてきた。


「ちょ…っ」

私は無理矢理ブン太を引き離そうと肩を押してみたけど離れたのは唇だけで、お腹を撫でる手は一向に離れる気配は無い。
しかもせっかく引き離したすぐあとにまたブン太は私の唇を塞いできた。あぁ、私はまた不毛な戦いをしている。

さっきまでお腹を撫でていた手はいつの間にか私のブラを外しにかかっていて、抵抗虚しく私の胸からそれは取り払われた。
ブン太は私の下着を見て「いちごうまそう」と一言。ならおとなしくいちごでも食ってろ!私が反論すると、

「名前のがうまそう」

だって。
そう言って意地悪に笑うブン太はなんだか可愛くてかっこよくて、言ってることは変態のくせにやたらとドキドキした。
あぁ、私きっとブン太には敵わないな。だってこんなに大好きなんだもん。

「食っていい?」
「…いいよ。」
「やってみるもんだな」

「……へ?」

ここで私は一つの考えが浮かんだ。もしかしてブン太は最初からこうすることが目当てだったんじゃ無いだろうかって。だってわざわざゆびずもうとかベッドの上でやること無くない?
だとしたらはじめから勝負なんか決められていたわけで。最初から決められていた勝負に挑むなんて私ったらなんて不毛なんだろうって思ったけど。もういいや、なんか気持ちいいから。




ゆびずもう
(もうゆびずもうやらない…)
(え?何?直で襲ったほうがよかった?)
(だまれクマ柄)















おまけ↓


「ブン太のパンツくまさんじゃん。超かわいいんだけど。」
「森のくまさんってぜってーあのあとお嬢さん食ったと思わねぇ?つまりさ、やさしくしてたのは罠だったんだよ。俺今くまさんと対談したら仲良くなれそう。いや、なれる。」
「……やっぱり罠だったんだ」
「うはは」





あとがき

実はこれだいぶ前に工口で諏訪部氏が言っていたヤり方←
俺超必死じゃん!とか言って恥ずかしがる諏訪部氏がちょっとかわいいぃぃとか思ってごめんなさい。


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