4649 8 * 叶多side * 「ニャー」 ベンチに座ってぼーっとしながら時計を眺めていると、突然猫の声が聞こえた。 真っ黒な、綺麗な毛並みの猫。 目がはちみつみたいにてかてかと光っていて、 「おいで」と小さく呼ぶと、賢いのか膝に乗っかってきた。 「お前、名前は?」 「ニャーン(ないよ)。」 「そっか、ないのか。」 猫がまばたきを一つする。 どうやら会話が成立したことに驚いているらしい。 叶多は動物と話すことができるのだ。 これも、実験の成功者だから故の能力。 だから、動物は好きだ。 「野良?」 「ニャ(そう)。」 「じゃ、俺が飼ってもいい?」 「ニャー(うんっ)!」 「名前、付けなくちゃな。」 叶多が、笑う。 それにつられてなのか、心なしか黒猫も目を細めて心地よさそうにした。 暖かい空気と微かに吹く風、周りの木々の音に加えて膝に乗っている温かな重みに、段々と眠気が襲ってくる。 (少し、寝よう。) 「おやすみ…凪。」 目を閉じている黒猫…凪の背中をゆっくりと撫でて、叶多も目を閉じた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |