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God Requiem
第2話 神々
「ハデス様」

レイヴンは一つの小さな書類を取り出した。
先ほどまで林檎を食べていたハデスは眠たそうに返事をする。

「ゼウス様から緊急時の書類が届いています」

「…ゼウスから私にかい?」

レイヴンの「ゼウス」という言葉にハデスは珍しく
興味がでたようで耳だけを傾ける。

レイヴンは頷くと書類を読みだした。

「ハデスへつぐ、至急浮島宮殿にこい。これは命令だ…だそうです」

書類を見終わったレイヴンはハデスの背中を見る。
するとハデスは巨大で長い溜息をついた。

「はぁあぁぁあ…!!」

この反応は何回もレイヴンは見たことがある。
メンドクサイと思っている時の反応だ。

ハデスは自分の頭をかくと指を口にくわえ音を鳴らす。
すると白い曇がハデスの足元に集まりハデスはそれに乗る。

レイヴンはその光景を止めずに頭を下げてこういった。


「いってらっしゃいませ、我が主」


返事もろくにせず頭をあげるころにはハデスはもう
レイヴンの目の前にはいなかった。


――――――――――――――――――――――


天界セーフリントにはたくさんの草木が生え、清い水が流れている。
その中央に位置する浮島に堂々と構える宮殿がある。
現在そこに約十二名の神々が集まっていた。

天使や精霊たちは十二名の神々を「十二神」と呼ぶ。
十二神の中でも一人巨大な椅子に座る男がゼウスであった。
ゼウスはあごを手に置きもう片方の手の指でゆっくりと椅子をたたく。

ゼウスの指の音だけが響く中とある女神が口を開いた。
赤い神にサイドロールの髪。

ゼウスの妻「ヘラ」だ。

「あなた、いったい誰を待っているのです」

苛立ちが隠せず、怪訝そうな顔をするヘラにゼウスは返事をせず
ただ巨大な扉を見つめていた。

無視をされたがヘラは構わず続ける。

「もう十二神はそろってますわ。早く問題を話し合い早急なる解決を…」

しかしその言葉は最後まで言い切ることはできなかった。
言葉を遮るようにゼウスが見つめていた扉が開かれたのだ。

ヘラを含む他の神々は扉の方角に視線をやる。
ゼウスの口元は笑っていた。

全員の視線の先にいたのは巨大な鎌を担ぐ神ハデスだった。
ヘラは小さく舌打ちをすると、子供のようにそっぽを向く。
他の神々もどうでもよさそうにゼウスに視線を戻した。

ハデスの登場に反応したのはゼウスただ一人だ。

「遅いじゃないか、ハデス。待ちくたびれた」

ゼウスの言葉にハデスは顔をしかめると柱にもたれかかる。
ハデスが席につかないのは「席がないから」だ。

この宮殿は十二神が集まる場所であって、十二神以外の神が
来るようなところではない。

つまり、十二神の椅子しか用意されない。
十二神ではないハデスの席などあるはずもないのだ。

「で、十二神でもない私がなぜ呼ばれた、ゼウス」

「口を慎みなさい!ハデス!」

嫌々に口を開くハデスをヘラが声を張り上げて注意する。
この光景を見てハデスの右近くに座る神が声をあげて笑いだした。

「はは!ヘラちゃん怒りすぎだよお、兄弟なんだから仲良くしようよお」

男のしては声が高く、女にしては整いすぎている顔を
した神「ポセイドン」がヘラに言う。
ヘラはまたむっとすると深呼吸をして羽根の扇を口に当てた。

ハデスが横に目を流すとポセイドンが軽くウインクをしたが
ハデスは無視をしてゼウスにまた視線を向けた。

ゼウスはそれを確認すると書類の一部を出して石机の上に置く。



「下界での自然の消滅についてだ」



下界、神や天使、精霊以外の種族が住み着く場所であり
この世界でもっとも人口が多い人間が自由に生きる場所である。

ゼウスの言葉に一人挙手した神がいた。
全員がそちらを向くと、挙手した神「アルテミス」が席を立つ。

「ここからは私が話そう。半年前から突然下界で
不自然な自然消滅が起こっているそうだ。

枯れたわけでも燃やしたわけでもなく、ただ黒い粉
となって森や川がなくなっている」

ここで戦の神「アレス」が疑問をアルテミスにぶつける。

「ちょっとまて、森なんかには精霊や天使がいるはずだ。
そいつらはどうした?報告なんてきてないぞ」

「当たり前だ、消滅した森にいた精霊や天使たちは突然消えてしまったのだから」

消えた。

ハデスを含みこの場にいる神々が同じことを考えた。
もう一つの問題、精霊が魂ごと消滅している件だ。

アルテミスは首をたてにふるとつづける。

「そう、何匹かの精霊の魂が消滅している件で…
その消滅してしまった精霊は不自然に消えた森の精霊だと調べてわかった」

一瞬で周りがざわつきだす。
するとゼウスが手を鳴らし周りを静まり返らせた。

ゼウスの権力がこの中でもっとも強いことをすぐわからせた。

「つまり、何者かが自然を消滅させ、森などにいた
精霊や天使を誘拐し魂ごと壊していると?」

ゼウスの問いにアルテミスは大きくうなずいた。

「可能性はあります。ですが問題はどんなに小さな森でも精霊や天使は何百といます
それを一匹も逃さず捕まえるのは…」

「不可能だわなあ…オレでも無理だわ」

アレスは両手をあげ横に首を振る。
もちろんハデスたち他の神もアレスの意見と同じだ。

ゼウスは顎に指を当てるとしばらく悩みだす。
ゼウスの言葉をまつように全員がゼウスを見た。

するとゼウスは立ち上がり、壁にもたれているハデスを指さした。


ハデスは直感でわかった。
嫌な予感がすると。


「よし、決めた。ハデス、お前原因を探りに下界へ行け」


しばらくの沈黙が続く。

そして…ハデスの巨大な悲鳴が沈黙をやぶった。


「はぁあぁあああ!?」



(続く)












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あきゅろす。
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