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God Requiem
第1話 面倒事
「半分回りました。現在死者69名。魂を回収してください」

一人一人が書類をもち、少しの暇も見せない今日この頃。
ここ、天界セーフリントではいつも通りの日常が過ぎていた。

天界セーフリントのちょうど真ん中に位置する城にそん
な日常に飽き飽きしている人物が一人。

青い髪のくせ毛に、小柄な体格。

神特有の赤目を光らせ、左手の薬指に指輪をはめてる。

冥界を司る神『ハデス』は、欠伸をしてから手に握って
いた赤い林檎をかみ砕いた。

「仕事熱心もいいけれど、休憩くらいすればいいのにねえ」

まるで誰かに同意を求めるように女性の声のトーンで言
葉を言う。

すると、近くに控えていた黒い羽根を持つ美青年『レイヴン』が
ふっと笑みをこぼし、ハデスの言葉に答える。

「それはできないことです。ハデス様」

あなたもわかっているでしょうという瞳を向けると
ハデスもそれを感じ取り、息を吐く。

「人間の魂はいつもさまよっているからねえ…」

よく人間たちの間では魂は勝手に天に上がるとされてい
るが、それだけではない。

魂のほとんどに未練があり、未練がある魂は自ら天に昇
ろうとしてはくれない。

そのため、天界に住む精霊や天使などが回収に向かう。

「そういえば、また精霊が消滅したらしいね」

ハデスは思いついたようにレイヴンに問うと、レイヴン
は静かにうなずき、詳細を語った。

語れとは言葉にしていないものの、心では詳細を語れと
言っていることがレイヴンにはわかる。

周りから見ていて、この二人はそれほど長い付き合いだ
ということが見てわからないものはいない。

「今回はアテナ様の水の精霊が一体消滅が確認されました。
いつも通り人間界で一人仕事をしていたそうです。
犯人はやはり痕跡を残しておらず、精霊の魂も残っては
いない…ということが現在状況ですね」


今日までで六体の精霊が魂ごと消滅している。
魂ごとの消滅はあってはならないこと。

犯人は依然わかっておらず、神々も悩まされていた。
自分の大切な精霊を失った神にとってそれは悲しくもあり、憎らしい事件。

その一方でハデスは、林檎を芯まで食べ終わり、唇をなめていた。
レイヴンの言葉を聞いても動揺もみせない。

彼女にとってこの事件は
どうでもいい事件の一つにすぎないのだろう。

――――――――――――――――――――




「まったくいやになるなあ、こう事件」

もう一人、ハデスと同様どうでもいいと感じている神がいた。
その神は神々の中の最高神にあたる人物。


創造者『ゼウス』だ。



ゼウスはまるで他人事のように
それらの詳細がかかれた書類を破り地面にばらまいた。

「ゼウス様!ひどいことを…」

「あのなあ、レイン。こういう事件なんて過去にもあったろう?
いちいちこれで俺のところに連絡がこられたら仕事が片付かん」

「ろくに仕事してないくせになにぬかしてます?」

「レインお前俺にだけ口調荒いよな」

額に宝石を埋めた青年、死神『レイン』は
大きくため息を漏らし破られた書類を拾い出す。

死神は彼だけしか存在せず、天界で唯一階級がない種族
のため、すべての者と平等と見なされている。

「きっとハデスも同じことを思ってるさ」

「あなた方は本当に似てますね…スト、君もなにか言ってくれ」

破られた書類を集め終わり、立ち上がったと同時にレイ
ンはそばで仕事を黙々と片づけていた少女に声をかけた。

紫の短い髪に冷たい瞳を持つ少女『スト』は動きをとめ
ゼウスを見つめる。

「…別に。正直その事件は私もどうでもいいです」

「ほおら!ストは俺と一緒の考えだぜ?」

「ストまで!あーもうなんでここってこういう人ばかり…」

レインは額を抑え、ふらつくが、ゼウスはそれを見てへらっと笑い出す。

二人がまた会話を始めた時、ストは誰にも聞こえない
声で呟いた。


「世界がどうなろうとしったことじゃない…」


ストの呟きは二人には聞こえていなかったらしく
二人はそのまま会話を続けていた。

「はあ、もういいです!じゃあこの書類に目を通してくださいゼウス様」

「えー!まだあるのかよ…ん…?なんだ、これ」

先ほどまでふざけていたゼウスの顏が急に険しくなったためストとレインは顔を見合わせて首をかしげる。

ゼウスは人差し指を自分の顎へ当て、なにやら考えごとを始めた。

「…ゼウス様?」

レインが恐る恐るゼウスへ話しかけると、ゼウスは立ち上がり、そばにあった杖をとる。

それはゼウスが出かける合図だとレインとストは悟った。

「どちらへ?」

怪訝そうにストが聞くと、ゼウスは憎らしいものでも見るかのように遠くを見た。



「神殿へ向かう。久々に集まるぞ、神々が」


ゼウスはそう言い残すとついてこなくていいと短く言い
自らがいた部屋から出て行った。

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