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鮮血のRelease
異界の姫




あの白髪の男の名前ってなんだろう。えーと…ミルフィオーレのボス…ボス…はくらん、だっけ。ずっと前に始末した殺し屋が言ってた気がするけど、一々そんなの覚えてるはずがない。

目をゆっくりと開けるとまた白だらけだった。でも、ふと横を見ると肌色があった。…肌色?はくらんの肌は全体的に白っぽかった。何を食べているのだろう。

…そういえば久しぶりに熟睡する事が出来た。私は元々殺し屋だったから始末した奴の仲間に恨まれる事も多く、深く睡眠を取る事などそんな命を危険にさらすなど中々なかった。


なんか隣、あんしんする。


「…ぅーん…。…鎖チャン…?起きたんだ」


ゆっくりと光を取り込んでいく彼の瞳。アメジストみたいでキレイだ。


「うん。はくらんも良く寝た?」


そう言うとはくらんがフッと吹き出す。「あははは!そっかそっか、まだ名前紹介してなかったもんね。僕はミルフィオーレファミリーのボス、白蘭。はくらん、ってちょっとおしいね」と言い、くすくす笑い続ける白蘭。…笑ってる顔好きだなー。


「前に始末した奴が言ってたの。よく覚えていなくてはくらん、って思ってた」
そう言うと白蘭は鎖チャンならなんて呼んでも良いよ。って笑いながら言った。じゃあ飛びきり変なので良い?って聞いたら断られちゃった。


「鎖チャン。今日からは僕のアジトだからね。此処は長く居ると気が狂いそうになるよ」

「白ばっかりだもんね…。…でも此処は白蘭の部屋じゃないの?」

「うーん。集中するときは此処を使うんだけどね。普段はあまり居たくないよ」


ハハハ、と笑う白蘭。
そっか。…白蘭もキレイ過ぎる色はキライなんだ。



「鎖チャンの瞳の色は落ち着くね。とても…綺麗だ」


白蘭のその言葉に、ヒュッと呼吸が乱れた。綺麗?落ち着く?この瞳が…?

紅くて

沢山の血を吸ったような

この眼が


「あははーそんな事言うの、白蘭だけだよー。他の皆(沢田綱吉達)は、忌み嫌ったのに」


私にしてみれば、よっぽど白蘭のアメジスト色の瞳の方が綺麗だった。


「沢田綱吉達、だよね?」

「…そうだよー。中学生だった時の恨みー晴らすことが出来て嬉しいな。ねぇ、今から襲いに行って良いー?」


そう言うと「ダーメダーメ」と笑顔で制止された。じれったいよ。


「あの子達に会う前に、一つ話を聞いてくれない?聞いてくれたら準備を整える為にアジトへ行こう」

「話?」


そう、話。ニッコリと笑う白蘭が何だかちょっと怖く見えた。


「ね。パラレルワールドって、信じる?」


パラレルワールド?…こことは違う世界って事だよね。ないんじゃないかな。ホントにあるって言うなら見てみたいけど。


「信じてくれないかも知れないけど実は僕、約8兆分の世界とリンクしてるんだ」


8ちょ…。えぇと、唐突過ぎて思考が回らないんだけど。呆けてる私をニコニコと見ながら「さらに異世界ともリンクしてるんだけどね?なんと異世界では鎖チャンはどの世界でもお姫様なんだよ」と続けた。って、え?姫?


「君の瞳が紅いのは、異界の姫だっていう証なんだよ」


ちょっと待って。ますますついていけないんだけど。私が、姫?…でも。


「…全部の…その、…8兆の世界全部?そんなこと」

「ありえないよ」


普通はね、と言葉を続ける。あーやっぱりその笑顔は今はちょっと怖い。


「そしてこの表世界でも全ての君の瞳が紅かったんだよ。生き方はそれぞれ違ったけどね」


唖然としている私に白蘭は、


「君が強いのは異界の姫だから。これは全裏表世界共通の事なんだよ」


さっきの笑顔から一変、とても真剣な顔つきになった。
私だって馬鹿じゃない。目を見つめれば全部本当の事だと理解した。


「…鮮血の、姫君」


殺してきた奴等が最も口にした言葉。なんとなく、違う世界の私もそう呼ばれてるのかなと思った。


「姫にナイトは付き物だよね♪まだ君の隠れている能力を引き出してあげるよ。…さぁ、姫の思うがままに」


ねぇ、何がしたいの?そう笑顔で問われる。決まってるじゃん。

私はあの時の屈辱を忘れない。否、忘れられるはずがない。



復讐




ただその言葉だけが脳を支配していた。
白蘭の目的も沢田達ならば――…


「…それじゃあ、アジトに行こうか」


ニッコリと笑うと白蘭もまた、ニッコリと笑った。




2010/06/03


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あきゅろす。
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