鮮血のRelease
鮮血の姫君
「なんで白蘭が消えるの…!!?」
急に淡く光だした白蘭。
とても綺麗で神秘的だけど、それどころじゃない。
ホントに…居なくなっちゃうの?
信じた人が
また消えてしまうの?
「……実は8兆ある世界のたった1個だけ……鎖チャンがボンゴレ側にいた世界があったんだ…」
…え…?
「結構良い所までいったんだけど、そこの世界の僕が負けちゃってね。僕は他の世界の僕と連動してるから、一緒に消えちゃうんだ。惜しかったなぁ……まぁ愛した子に殺られるのなら本望かな…ハハハ」
「違う世界の私が…白蘭、を……?」
白蘭は震えている私に手を擦り寄せた。さっきまで暖かかったのに…ツメタイ…。
私が…白蘭を殺したんだ…違う世界とは言えど…私が。
…それなら…私も一緒に…!
「…君は普通の人間と同じで幸せになれる権利があるんだ…。もう過去の弱い君は消えた。これから君は、闇の中じゃなくて光の中で生きるんだ」
「そんな…!!」
「マシマロ、ジェラート、ラーメン。覚えてるね?もっともっと美味しいのが光の中にはあるんだ」
「や…いや、だ…!!」
白蘭が居ないと意味がないよ。
白蘭が居るから…!全ての事が楽しいって思えたんだ…!
今まで抱き締めていてくれた白蘭は、苦しそうな表情を浮かべ地に崩れ落ちる。白蘭はなんとか壁を背もたれにし、無理矢理笑う。
白蘭に合わせて私もしゃがむ。
「嫌、だよ…もう…独りになりたく…ないよ……」
溢れないように必死に溜めていた涙が白蘭に落ちていった。
「…鎖チャンの涙、キレイだ…」
「 ! そんな訳…!」
よく見てみても、それはなんとも普通な透明の雫だった。
「んね。…もう君は過去に縛られなくて良いんだよ。鮮血の姫君としての役割は…終わったんだ。
君は…君の生きたいように生きるんだ」
「…っやだ…!消えないで…っ」
どんどん身体がほどけていく白蘭。
もう何十粒落としたか分からない雫が落ち、白蘭の服を濡らしていく。
きっと…きっと白蘭が聞きたいのは謝罪とかワガママな願いじゃなくて…。
「…白蘭……あり…がとう……」
「うん♪僕はそれが聞きたかったんだ。君が涙を流して泣くのは、どの世界でも苦手だからね」
私は過去を清算した代わりに
未来を我慢しなければ
いけないんだ
「また、いつか会おう。…ずっと愛してるよ、鎖チャン」
「私も…ずっと愛してる…!!!」
白蘭は最期に
「ありがとう」と
笑った。
白蘭が消えてから数日後、私は日が照っている廃れた裏道を歩いていた。そう、白蘭に初めて逢った場所。あの時と違うのは今が昼間だという事。
依頼されては殺す。殺してはまた依頼される。同じことの繰り返し。
白蘭の跡を追おうとしたけど、そんな事絶対に許してくれないだろうと思い、向こうに行くのをやめた。
白蘭、やっぱり私は一般人のように幸せには生きれないよ。
貴方が居ないと………。
…今日は報酬のお金であの店行こうかな。
ポケットに入っている硬貨数枚を握りしめた。
「いやぁ、凄く強いね、君」
「!!」
歩こうとした時に一度聞いた事がある台詞が後ろから響いた。2日前の出来事なのに凄く遠く感じる。私はバッと振り返った。
「ただいま。鎖チャン♪」
声が出ず、ひたすら口がパクパクするばかり。声が…出ない…。
これは…夢?
「能力をぜーんぶ盗られて普通の人間になっちゃったけど、一緒に居てくれないかい?」
口を思わず手の平で抑える。もう枯れたと思っていた涙がどんどん込み上げてくる。
泣いちゃダメだ!早く、早く喋らないと…!
そう思うが全く声が出ない。代わりに私は態度で表した。
走って白蘭の手をとり、引っ張る。
あたたかい…確かに此処に居る…!
「美味しいジェラート屋さんがあるの!」
end
2010/07/11
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