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Rire-
Another Story(神楽)
「パパっ…痛いよ…
たすけて…」

目の前に血だらけの娘が横たわり、抱きかかえた腕からは血が滴り落ちている。
既に目の焦点も合っておらず見るからに瀕死の状態だった。

「いま、いま病院に連れて行ってやるからな!
だからがんばってくれ!!」

しかし周囲を見渡しても見えるのは荒廃した建物だけでとても医療施設の整った場所まで近そうにみえない。
辺りにはあちら火の手が上がり車などとても通れる場所ではなかった。

そう、ここは戦場だった。

「畜生っ!なんで、なんでこんなことに!!」

男の目からは涙が零れ落ちた。
今にも死にそうな娘を助けられない悔しさと今の現状を生み出した国への怒りが込められた涙だった。

「ぱ…ぱ…っ…」

小さな手がぎゅっと手を握り、そしてその力が抜けて手がだらんとぶら下がる。
抱えた手からはどんどんとぬくもりが消えていっているのがわかる。

「…イロ?」

答えても反応はない。
小さな顔の小さな眼が閉じている。

「イロっ!私を一人にしないでくれ!!イロ、イロっ!!」

幾ら呼びかけても返答はなく彼の娘は静かに、そして一筋の涙を流して息絶えていた。

「絶対に、絶対にお前一人で逝かせたりしないからな!!」

――――――――

「イロっ!!!!」

静かな部屋に悲痛の声が叫ぶ。

「ハァ、ハァ、夢…か。」

体からは汗が噴出し、息が荒くなっていた。
彼しかいない部屋の施錠を確認して一眠りついた後の梅だった。

「私はまだ迷っているというのか?
あの時私は奴らに復讐してやると決めたというのに…」

モニターを見るとまだ数時間しか寝ていないことに気がつく。

(研究所に侵入者が入って少し記が動転したか?)

そう考えながらモニターの逆にあるドアへと入る。
そこは化け物の入った試験管状のパイプで埋め尽くされていた。

「あの子を使ってまで進めてきたこの計画、断念することなどできない。
絶対に生き返らせてやるからな、イロ…」

化け物の試験管を超えて最奥部へと彼は足を進めた、一際目立つコンピュータに囲まれた大きな試験管の中へと彼は視線を向けた。

そこにあったのは彼が決意を固めたときとかわらない彼の娘の姿だった。



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この話はあくまでAnother Storyで、ただ話の内容を少し進めようと思って書きました。



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