[携帯モード] [URL送信]

小説
この真白い世界に、溺れるように(佐幸です)
 浴槽に張ったお湯が適温かどうかを、掌でお湯を一度かき混ぜることで確認すると、佐助は浴室から顔だけを出し、六畳の空間にいるはずの幸村を目で探した。当の幸村は、バスタオルで濡れた頭を荒っぽい手つきでごしごし拭いて乾かしている。
甘やかせる口調で、佐助は背中に声を投げかける。
「旦那、おいで。」
「佐助が入った後でいい。」
「駄目だよ、風邪ひくから。」
「俺は、風邪などひかぬ。」
「旦那。」
 人の良い笑顔を浮かべた佐助は穏やかな口調で、でも諭すように呼ぶ。おいでおいでと手招きをしながら。
 幸村は石鹸の香りのする真っ白いバスタオルを頭からすっぽり被り、じっとこちらを見ている佐助の視線から逃れようとする。けれど、隠し切れない、タオルからはみ出した耳は、真っ赤に熟していた。
 喉の奥で苦笑した佐助は幸村の側までやってくると、断固拒否を体全体で発する彼の背中から、バスタオルごとぐっと抱き寄せた。お互い雪の中で長時間佇んでいたため、体が芯から冷え切っていた。佐助の行為を予測していなかった幸村は、動揺から心臓を跳ね上げさせる。
「ほら、嘘ばっかり、こんなに冷たくなってるよ。体も髪の毛も…。」
「大丈夫だってば…。」
「一緒に、入ろ?ね?」
「…。」
 それでも、視線を伏せたままの幸村は無言だったが、少し態度を軟化させたようで、佐助の方へ少しだけ体重をかけて寄りかかってきた。
 幸村の性格を熟知している佐助は了承されたことを確信して、続いて思い切った行動に移す。少しかじかんだ指で、大人しくなった幸村の衣服を、背後から一枚一枚剥ぎ取ってゆく。濡れて重量の増した上着を脱がし、シャツを首もとまでたくし上げると、白い肌は蛍光灯の暖色系の灯りの元で露になる。少し桃色に上気した肌は、なんとも言いようが無いほど、艶めいて色っぽかった。不器用な焦った動きで、手をもつれさせながらも、そのまま流れるようにGパンのファスナーに手がかかる。
「…さっ佐助ッ。」
たまらず幸村は抗議を含んだ声を上げると、振り向きざま咎めるみたくきつく睨んだ。幸村の手は、両手がかりで佐助の腕を抑えこみ、動きを阻んでいる。
「なあに?」
 無防備なうなじ辺りに、佐助の吐息交じりの問いかけが降ってきて、くすぐったくて、密かに身をよじる。体重で圧し掛かるみたく後ろから抱きしめられているため、幸村の抵抗も制御されている。耳の後ろに温かい息が吹きかけられ、幸村は今度こそはっきり佐助に伝わるほど、ビクンと体を揺らした。
 幸村が密かに感じていることに、気を良くした佐助の左手は、すでに敏感に立ち始めている可愛いピンク色の乳首をきゅっと親指で摘んで指の腹でくすぐる。
「…いッ…アッ…。」
 背筋を電流のように快感が走って、歯を食い縛っても、鼻にかかったような甘い声が歯列の隙間から漏れてしまう。
「だって脱がないと風呂入れないよ。」
 くすくすと佐助はしのび笑いを漏らす。
「自分で脱げるッ。」
「いいから、ね、俺に任せて。」
 後ろから羽交い締めにしたまま、器用にスボンを膝まで下ろし、続いて下着まで力任せに脱がしてゆく。
「…ッ。」
「旦那…。」
 蛍光灯の元に曝け出された幸村のそれは、釈明の余地も無く、熱を帯びて既に堅く立ち始めていた。
 まるでこれからの情事を期待しているかのごとく。
 佐助にばれてしまったことで、下唇をかみ締めた幸村は、恥ずかしすぎてどうにかなりそうだった。
「大丈夫だよ、旦那。」
 形の良い顎を持ってこちらに向かせると、羞恥心から涙を大きな目の縁に溜める幸村の顔中に、佐助はちゅっちゅっとキスの雨を降らせる。
 佐助は、自分の腰を幸村の臀部にぐりっと押し当てた。そして、余裕無さげに呟いたのだ。
「俺も、もう、ヤバイから。」




 シャワーの水音に混じって、自分の感じきった、甘ったるい喘ぎ声が大袈裟くらい、ひっきりなしに耳に届いていてくる。狭い室内に反響し、耳を塞ぎたくなる嬌声だったが、幸村の手は、必死にバスタブの縁を落ちないように指先が白く変色するほど必死に握っているため、それも叶わない。
「…ッ、ふあ・・・ア…ンン…ア。」
 全裸の幸村はバスの縁に座らされ、その前に佐助が跪いている。幸村の達しそうなそれを佐助は口で含んで舌を巻きつけて追い立てる。
「んんッ…アッ…も、離、しッ…。」
 もう、出したくて、出したくて、たまらなくて。
 脳の一部が火花を起こしたみたいにスパークして、限界を感じ、涙交じりに懇願するけれど。
「いいよ、出して。全部飲むから。」
 ニヤッと口の端を上げて意地悪く微笑む佐助を、力なく睨みつけるけれど。
 次の瞬間、じゅっときつく吸われて。
「…いああああああ…んッ」
 顎を反らした幸村は、びくんびくんと体中を震わし、抵抗の意味が無いほどあっけなく、佐助の口の中で果ててしまった。


 ボディソープの泡を指先にまとった佐助は、達した余韻からぐったりと冷えたタイルに身を預けている幸村の片足を肩に抱え込んで大きく股を開かせると、慣れた手つきで、待ちわびるようにひくつく秘部に、躊躇無く指をくっと差し込んだ。
「んんんっ、はあっ・・さ、さすけッ・・・あんっ、」
「大丈夫、すぐ、良くしてあげるからさ。」
 いつもみたいに、いっぱいいっぱい感じさせてあげるね。
 すぐに内部は柔らかくほぐれてきて、佐助の指を奥へ奥へといやらしく誘う。
「んんっ。」
 お互い舌を出した状態でねっとりとすり合わせると、そのまま貪るように深いキスをする。何度も角度を変えて、息も止まるような口づけは続いた。
「ふあ・・・んんあっああああっ。」
 右手で後ろを探りながら、覆いかぶさるように身を寄せると、堅く立ち上がっている乳首を尖らせた舌先でくすぐるように執拗に愛撫する。
「いぁっ・・・だめっ・・・あんっ・・・あっ。」
 舐められすぎて赤く腫れてきている突起を、生温かい口内へ誘い、何度もしつこく吸い上げる。
「駄目って言いながら、ここはこんなにぐちゃぐちゃだよ。いつからそんなに淫乱になっちゃったの・・・さっ・・・。」
 言いながら、先走りの液をトロトロ垂らし、切なげに震える幸村の前をつんつんと突付く。
「だ、れがっ、いん・・・らんっ・・・ひああああっ・・・。」
 喉を引きつらせながら、幸村は抗議の声を上げるけれど、襲ってくる快感が強すぎてすぐ絆されてしまう。
「んんん、ああん・・・んん、さ、さすけえっ・・・あっ。」
 佐助はわざと幸村が望む部分をピンポイントで外し、聞こえるように音を立てて、ぐちゅぐちゅとかき混ぜるみたく、三本に増やした指で内部を犯してゆく。 
 体が蕩けてしまうほどの甘く辛い刺激に翻弄されて、ただ幸村は涙を流し声をあげ続けるしか出来ない。
「腰がユラユラ揺れてるよ。あそこ、触って欲しいんでしょ。淫乱じゃんねえ。最初のころはあんなに純真で純情だったのに。今は、こんなに、自分から淫らに腰振ってさ。俺のをくわえ込むんでしょ、ここでさ。」
 くすりと佐助は含み笑いをする。
「さすけっ・・・ふああっ。」
 怒りからか、さっと頬は朱に染まったが、次の佐助の行動に、幸村は声を詰まらせる。
 猛々しく勃起するそれを、舌でべろんと舐め上げたから。
 力が抜けてきている幸村の足をガバッと極限まで開かせて、ねめつけるように、卑猥に蠢くそこを見つめる。
「綺麗なピンク色だよ、旦那のココ。」
 ふうとため息混じりに、うっとりした声で佐助は称した。
「いや・・・だってばあ・・・おねがっっ、ああああっ。」
 とうとう指先が内部の待ちわびた弱点をかするように引っかく。少し触れただけで、瞬間怖いくらいの快感が襲ってきて、幸村は身をビクンッと数センチ跳ね上がらせる。激しく左右によじって逃げようともがくが、腰を体重で上から押さえつけて、佐助は更に追い立てる。
「あああっ、だ、だめえっ、そ、そこはあ・・・っいああああっ・・・っ。」
 おかしくなる、本当におかしくなると幸村は涙目で訴えるけれど、佐助はもっともっと激しく叩きつけるみたく其処を攻め立てた。
「いあああああっっ。」
 頂点まで上り詰めた幸村は、ビクンビクンと大きく体を震わせながら二度目の絶頂を迎える。
 視界が靄がかったみたくぼやけて、脳が真っ白に漂白されて。
「あ・・・いあああああっっ。」
 ガクガクと余韻で幸村の体が震えているうちに、間髪入れず、佐助は自分の猛ったそれを幸村の蕾にあてがうと、斜め上からずずっと埋め込んでしまった。
「あ、だ、だめっっ・・・休ませ・・・てってばあ・・・んんあっあっ。」
「だ〜め。」
 佐助は幸村の乳首をきゅっとつまみ上げながら、腰を激しく打ち込んでゆく。
 達したばかりの幸村のそれも、二人の狭間で次第にまた熱さと堅さを取り戻してゆく。
 的確な動きで幸村のイイ部分に当たるように、熱く猛々しい鬼頭をぶつけ続ける。
「あ、あああっ・・・いああっ。」
完全に感じきった声が幸村の喉からひっきりなしに漏れる。
 腰に直結する甘いそれを聞きながら、佐助はリズミカルに抽出運動を繰り返す。
 同時に、唾液でベタベタになり、蛍光灯の光でいやらしく照らされ小刻みに震える乳首をじゅるじゅる吸い上げる。
「んんんっ、いあああ、さすけえ・・・さ、すけっっ。」
 すがるみたく幸村は佐助の首に両腕で全力で巻きつきながら、言葉をたどたどしく漏らす。
「なあに?」
「もっと、もっとお・・・っああっ奥までっきてえッ・・・んんん・・・。」
「おっけー。」
 佐助は幸村の両足を肩にかつぐと、そのまま激しく音を立てて打ち付けてゆく。
「ああああっ、も、もお、いっく・・っ、いっちゃうッ・・・いああああっ。」
「く・・・っ。」
 お互いの腹のあたりに温かい液を感じながら、佐助も同時に上り詰めると、幸村の中に沢山の愛を注ぎ込んでいた。




二人で余韻を楽しむみたく布団で裸のまま抱き合う。煎餅布団は固くて、おまけに薄すぎて、フローリングから直に寒さがしんしんと伝わってくる。けれど、今の二人にはそれは全く気にもならない。
「俺、すっげー幸せだよ。」
「何を突然言ってるんだよっ…。」
 幸村は恥ずかしそうに目を伏せると、顔を隠すべく佐助の胸板に頬を寄せる。
「だって、旦那と一緒にいられるのが、すごく、すっごく嬉しいんだよ。もう、こんなに幸せでいいのかってくらい。」
「…っ…。」
「ね、旦那は?」
「うるさいってばっ…。」
「旦那ってば〜、答えてよ。」
 顔を上げた途端、視界いっぱいに飛び込んできた佐助のドアップ。
「ん?」
 目が合った、そのしたり顔の佐助がむかつくけれど。
結局、幸村は佐助の笑顔に弱いのだ。
そして、答えの決まりきっているそれを告げるしかない。
「好きにきまってるっ。バカっ」


[*前へ][次へ#]

19/42ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!