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小説
LOVE SYNDROME (ダテサナ現代モノ)
空気の狭間に流れているのは、自分とは一生肌が合いそうに無い優雅なクラッシックの音。
きっと、夢を、見ている。
暖かい靄に、薄いベールのように包まれていた。
こんなの、夢だと、分かってる。
なのに、人肌の温もりが、はっきりと実感として伝わってきた。
浅い眠りは、現実世界とリンクしていて。
瞬く間に、その場所へと、何かに腕を引かれるように、漂っていた水中から岸へと上がるみたく、急速に戻されていった。




「う…ん…、ふえええっ。」
 幸村は、重い瞼を開けて辺りをぼんやりと見回す。すると、政宗のドアップと遭遇して、まどろんでいた意識も即座にシャキッとした。
 夢にまで進入してきた暖かさの原因は、今自分のすぐ傍にある。
 まるでプロレスの技みたいに、政宗の腕も足も幸村の体に絡まっていたからだ。それはいわゆる抱き枕状態で、政宗の両腕はしっかりと幸村の体を羽交い絞めし、懐に押さえ込んでいた。しかも、お互いに何も身に着けていない。羽毛布団に覆われた下半身もしかり。幸村にとっては思い出したくない所業だが、昨晩政宗と激しくやっている最中で、意識を飛ばしてしまったらしい…。
「すごく、気持ち良さそう、だな…。」
 幸村はそう呟くと、自然に湧き出た笑いを零す。
 間近ですうすうと眠っている政宗の表情は、普段の毒気も抜け落ち、無邪気そのものだ。
そうだ、彼も成熟した大人じゃなくて、まだ自分同様の高校生だったんだって、改めて思う。
 それに、少し心臓が、必要以上にドクドク早鳴りするのは。
(…政宗殿は、やっぱカッコいいから。)
 枕に流れた乱れ気味の扇情的な髪も、外見の美しさを引き立てている。
 ファンクラブがあるのも、この表情を見せられたら、素直に頷ける。
(言ったら調子に乗るから、口が裂けても言えぬがな。)
 眼の縁を隙間無く埋め尽くす睫は女子のそれよりも長くって、肌もきめ細かくみずみずしくって綺麗だ。そして何より顔のパーツ一つ一つが整っている。
 あ、まずいでござる。
 なんかじーっと見つめている内に、キスしてみたくなってしまった。
 こんなにぐっすり寝ているし、たまには、いいか、・・・・な。
 幸村はがっちりホールドしていた政宗の腕の中から何とか抜け出すと上体を起こし、誰もいるはずのない十条以上ある政宗の部屋を数回見渡して、一度頷き、意を決す。
 前屈みになり、政宗の規則正しく寝息の漏れる唇に自分のソレを、ふわり近づけてみた。
 チュと小さく啄ばむフレンチキス。
 瞬間、目を開けていられなくなるほど、胸がクッと切なくなった。
 えへへッ。
 いたずらを終えた後のようなしたり顔で幸村は子供っぽく笑う。
 そして任務を遂行し、触れ合っただけで十分満足した幸村が唇を離そうとした、その時。
「!」
 いきなり、熟睡中のはずの政宗の右手が目にも止まらぬ早業で動き、幸村の後頭部に到達すると、離れようと動き出していた首をぐっと引き戻した。
 薄く開いていた唇の隙間から生暖かい舌を差し込まれて、ねっとりと絡まれる。
「…んッ。」
 息が苦しいのを主張するように、政宗の胸元を叩く。
「…んん…はあ…。」
 それでもお構いなしに、口内を隅々まで犯される。
 甘くて深い口付け。それだけで、脳が真っ白になって、何も考えられなくなるほど、上手で巧みなキスだった。
「何をするっっ。」
 幸村は唇が解放された瞬間、息と共に非難のそれを、うろたえ気味に吐き出していた。
「そういう、あんたこそ、何、してたんだ?」
 ニヤリと口の端で笑った政宗は寝たまま頬杖をついた余裕綽々の状態で、少し意地悪く低い声で訪ねてきた。
「・・・どっから、起きてたので?」
顔を耳までゆでたこくらい真っ赤にした幸村は、視界に入った政宗の使っていた枕を、半ば取り上げるように持つと防御盾みたくそれで顔を覆い隠す。
 幸村は自分の一番見られたくない行為を思いっきり見られた上にからかわれてしまって、顔から火が吹きそうなほど恥ずかしくなった。もうとんでもなく死にそうに恥ずかしくて、政宗の顔がまともに見られない。穴があったら入りたいくらいだ。
「あんたが、俺におはようのキスをするちょっと前。」
「おはようのキスなどしておらぬっ・・・。」
「へえ。」
 政宗は逆に朝から上機嫌だった。キャンキャン吼える幸村も何のそので、細やかな手つきで彼のピョコピョコ寝癖のついた後ろ髪を愛しげに撫でている。大好きな彼に優しくされて、なんだかだんだん憤りの火がしぼんでくる。幸村は、いたたまれなくなって、目線を宙に泳がした。
「…もう、勝手に言っててくだされ…。ああ!ほら、こんな時間っっ。早く支度をせねばっ。今日も学校があるし…。」
 不自然に彷徨わせた先にあった時計を確認して、幸村は度肝を抜く。
 ただいまの時刻、始業一時間前。
幸村はひどく慌てつつも、身支度するためにその場から離れようとしたけれど…。
「今日は、休もうぜ。」
 気付くと、目を開いてもイケメンな政宗の顔は、息の触れ合うほど、幸村のすぐ側にあって。
 政宗は両腕を伸ばし、幸村の腰を後ろからぎゅっと力強く抱きこむと、敏感な耳元に唇を寄せ、腰に来る低音の美声で、鼓膜に直接吹き込んでくる。
「好きだ…幸、お前を今すぐ抱きたい。」
「…何、言って…って破廉恥ッ。朝っぱらから…ッ。」
 幸村はゾワッと背筋を一直線に這い上がったむず痒い何かに体をビクンと飛び上がらせ、瞬時に顔は沸騰させた。
「朝から、俺を煽ったあんたが悪いんだろ。」
「ちッ…ちがッ…煽ってなど…。」
 体を、見た目以上に逞しい両腕に捕らわれて、幸村はなけなしの理性を働かせて、抵抗を試みる。
「…やめ…ッ。」
「もう…素直に欲しいって言えよ…。可愛いヤツ。」
 そんな幸村の痛くもかゆくもない甘い反撃は、勝手知ったる幸村の体、政宗にとっては何の障害にもならなくて、どんどん幸村のウィークポイントを責めてゆく。指がそれを的確に抑えつつ進んでゆくにつれて、幸村はもう一度シーツ上に舞い戻り、四肢を縫い止められ、甘い声をあげるしかできなくなっていった。
「も…あッ…んッッ。」


To be continued??


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