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小説
ふたりぼっち-後編-
 佐助は女性との経験は豊富だったが、男性と、となると全く勝手が違う。
 欲望の赴くまま、むりやり突っ込んでしまうと、きっと酷く傷つけてしまうに違いない。
 そういえば、高校時代、クラスメイトが面白半分で持ってきていたホモ雑誌…。その記事の内容で得た、うろ覚えな知識をなんとか頭の中でかき集めながら、佐助はすっくと立ち上がると幸村を置いて洗面台のほうへ消えた。
 しばらくして戻ってきた彼の手の中には、チューブ式の軟膏が握られている。
 幸村は上体を起すと、肩で大きく息をしながら、訝しげに佐助に視線を送る。
「佐助?」
 それを、この状況で何に使用するのか?
 その卑猥な事にしか考えられない現状に、言葉に出して聴くことは躊躇われた。きっと、言って欲しくない言葉が返ってくるに決まっていたから。
そう思うと、ドクンドクンと心臓が再び不規則に乱れ始める。息苦しさがぶり返してきた。
「旦那、後ろ向いて、」
 佐助は従順に従う幸村の腰を背後から高く持ち上げると、下半身剥き出しの裸体を四つんばいにした。すると、誰にも見せなかった部分が、蛍光灯の下で、あられもなくさらされることになる。
「も、…こんなの、恥ずかしい…。」
 幸村はあまりの仕打ちに、理性も平常心も限界越えで、耳まで火を噴きそうに赤くしている。既に、幸村の欲望は、触ってもいないのに再びくっきりと形になって表れてきていた。幸村はただ、気絶しそうな自身を保つために、何かにすがるように、両手に爪が食い込みそうになるまで、握り締めるしか出来ない。
「大丈夫、誰もいないから。」
 その全身の力がこもり青白い血管が浮き立つ拳に、自らの手を包み込むように添えて、佐助は声を掛ける。
「だって佐助がいる…。」
 そう言いながら、咎める目で振り向きざま佐助を見た。
 そう言われても自分はどうすれば良いんだ、と佐助は苦笑すると、一旦脇に置いてあった軟膏を取り、たっぷりと零れ落ちるほど指先につけ、そのまま幸村の秘部の入口にその濡れたまま指を押し当てた。
「ひゃ…。」
 なんともいえぬ異質な感触に、背筋にゾクッと悪寒が走った。
「冷たかった、平気?」
「…だいじょうぶ…。」
長く深く押し出す形で息を吐きながら、幸村は自分にも言い聞かせるように呟いた。
 佐助は動きを再開すると、そのまま指を体内に押し広げるようにして回転させつつ埋め込んでいく。内壁に爪を立てぬよう最大限注意を払いながら、亀の動きよりも遅い速度で、指は徐々に先へ先へと進んだ。すると、思ったより、すんなりと第二間接まで入ることに成功する。
「どう?」
 目にかかる汗に濡れた髪を、煩わしげに左手で避けながら、佐助は問う。
「まだ、へいき。」
 幸村は舌足らずに返事する。
 痛くも、痒くも無い。今は異物感があるだけだ。
 時間をかけて慣らそうと、佐助は中腰の姿勢から座りなおし、指先だけに集中し始めた。
「痛かったら言ってよ。」
 まるで歯医者か何かか、と内心思いながらも目では見えない場所に手探りで指が到達していく今の状況は、苦痛ならば言葉に出してもらえないと、こちらでは予測不可能なのだ。
 指の腹を前後左右に動かしながら内部を蹂躙していると、幸村の腰が、前触れも無く、飛び跳ねるように揺れた。
「…あッ。」
 幸村自身、何故そんな所を触られて声が漏れたのか、分からなかった。
 男でも後ろで感じる部分があるらしい。
 佐助は、ここがその部分なのか、と半信半疑でそっと突いてみる。
「う…んッ。や、…そこ…。」
 幸村の吐息が再び熱を帯びだした。
 足の全ての関節を折り曲げ、むず痒いような刺激を必死でやりすごそうとする。
 先ほどまでの緊張からの筋肉の強張りが解れたのか、内部のきつさが弱まり、一本ならば指が出し入れ出来るようになった。内部で僅かに硬くなった場所を忘れないように覚えつつ一旦引き抜くと、指を二本にすぐさま増やす。その感じる箇所を触れるか触れないかの紙一重の周辺を触っていく。焦らされるようなじれったい動きに対し、幸村は、たまらないように、もっと強い刺激を追い求めるように、自ら腰を浮き、奥へ奥へと招くように動いていく。
「ア…。も、駄目…ッ。あ…ンッ。」
 佐助は頃合を見計らって、その探し出した場所につっと触れ、こそばすように、小刻みに振動させた。
「だ、も・・・だ、めッ。あ・・・ん。アア・・・。」
 もう、どうでもいい。
 ただ、この体内の熱をどうにかしてほしいだけ。
「旦那・・・。」
 指の動きを早め、幸村が望むようにその場所を執拗に狙う。
 佐助の呼び声も届かないくらい、幸村は行為に没頭していた。
「あ・・・。んッ。はあ・・・。」
そして、佐助は指を引き抜くと、壁に背を持たれかける状態に体制を立て直した。
「こっちへきて。」
幸村の上体を起し、向かい合い座った状態で、幸村の腰を佐助の膝の上に座る形に腰を下ろしていく。
「い…ッ。」
 先が挿入しただけで、指とは比べ物にならない圧迫感に襲われる。
 想像以上の激痛に、幸村は我に返り、苦しげに表情を歪めた。
熱い塊が、体全体を貫いていくような錯覚に陥る。
 その状況があまりに辛そうなので、佐助は腰の動きを止めた。
「ムリなら、やめようか?」
「・・・。」
 それでも、幸村は歯を食いしばり、無言で頭を左右に振る。
 逆に腰にそのまま体重をかけて下ろてしまった。
 全て埋まってしまったところで、佐助も張り裂けそうなほど彼の内部のきつさに眩暈を覚えた。
 優しくしてあげたいと思っていたが、欲望が抑えきれずうまくいかない。それでも、苦痛を和らげようと、左手で萎え始めていた幸村自身を摩った。それと同時に、胸元に顔を寄せ、わざと音を立ててキスをする。
 「ん…ッ。」
 幸村の背中が弓なりにしなる。
 力が抜けた瞬間、動きを再開し、さっき見つけた奥の感じる場所を探り当て、そこに狙いを定めたようにピンポイントで打ち付ける。
「あ…ッ。さっ・・・すけッ。ア・・・アア・・・。ンンッ」
「幸・・・。」
火照ったお互いの体をかき抱きながら、熱を迸った。


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