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小説
<5>
 ここは、どこ?
幸村は、意識の朦朧とする中、思った。
 ああ、いつもの悪夢の中だ。
 自分は、傍観者のように、この光景を目の当たりにする。

「誰が、この子を引き取るんですか??」
「うちは、大学生になる子供がいるし。」
「あら、うちだって・・・。」
「こうなったら、あの子は可哀想だけれど、施設にでも入れたほうが・・・。」
 幼い幸村は、下を向き地面を穴が開きそうなほど見つめ、歯を食いしばっていた。そうしないと、泣いてしまいそうだったからだ。そして、ここで泣いたら負けだと思った。
 両親が突然交通事故。
 その日のうちに、天涯孤独。
 周りが何をしきりに騒いでいるのか、勿論、小学校六年生だった幸村には痛いほど分かっていた。
 自分は、いらない人間なんだ。
 もう、どこかに消えたい。
 絶望と喪失感に、体が蝕まれてゆく。
「泣くな、幸。」
うな垂れる幸村のすぐ横に立ち、煩わしく騒ぐ大人達を睨むように前を見据えたまま、彼は静かに言った。
 そして、今にも闇に落ちそうな幸村の手を引き上げるように、グッときつく握ってきた彼こそ、近所に住む政宗だった。
 血が繋がっているというわけではない。仲良くしていたけれど、近所のお兄さんという感じだった。
「今決めた。俺が、あんたを引き取る。俺と一緒に来い。いいな。」
 じっと政宗の顔を見上げたまま、コクンと一つ頷いた。
「よし、幸村。あんたと俺は今日から家族だ。」
 大きな大きな零れそうな瞳から、涙の珠がじわじわ溢れた。それまで我慢できていた涙が、政宗の前で、初めて素直に流れた。
「幸村。」
 高校のブレザー姿の政宗は身をかがめ両手を広げて、震える幸村の肩を抱きしめた。幸村は、政宗の首元にしっかりとしがみつき、大きな声でわんわん泣いた。
 あれから、早いもので五年。
 あれから、幸村にとって、政宗は全てだった。
 兄で、母で、父で。
 大事な、本当に大事な家族。
 自分がこの世でたった一つ、失いたくないもの。
 それを護るためならば、何でも出来るから。



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あきゅろす。
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