小説
永遠の愛を。
パチパチと炎の破片が空中を浮遊する。
俺は何を見るでもなく、暖を取るために焚きつけている火にじっと目線を合わせていた。
「なあ、幸村。俺がいなくなったらどうする?」
柔らかい髪の毛を5本の指で撫ですきながら、ふと聞いてみたくなって、腕の中で夢心地に瞼を閉じている彼の耳に直接吹き込む。
「そんなの、嫌でござるよっ。」
途端、幸村は、俺の首に腕を回し、ぎゅうぎゅう力を込めて抱き返してくる。絞め殺すつもりかと思うほど、首に巻きつくその力は本気度100%だ。
「けどさ、今の荒れた時代、いつ死ぬかなんて到底分からないだろ。」
俺は幸村の腰に両腕を回し、甘えるように肩口に額を置いて、投げやりみたく告げた。
今日の戦いで、敵も味方も、何人も死んだ。修羅場では、人間いつ死んでもおかしくない。そして、最悪な事に、自分のこの手は、何人もの人の血で汚れているのだ。
「政宗どのは?某が死んだら・・・。」
泣きそうな声で、幸村が聞いてくる。
「・・・あんたが死んでも、俺は・・・。」
考えただけで、目の前が真っ暗闇に包まれる。意識は、絶望の淵に沈む。
―――幸村が死んでも、それでも、それでも俺は生きなきゃいけないだろう。
この心臓は鼓動を刻み続け、この身は動き続けるのだろう。
幸村がいなくなった世界なんて、俺にとっては、全て色褪せて。全てが無くなったと同時なのに。魂は死んだと同じなのに。
けれど、自分は守るべきものが多すぎて。
―――俺はきっと幸村の後を追うことなど許されないのだ。
「政宗どの。」
切な過ぎて、痛苦しく喉からこみ上げてきた何かが、頬を生温かく伝った。
「そんな、政宗どの、泣かないで下され。」
狂わしいほどの想いは、俺の胸を灼熱に焦がす。
両の掌で俺の顔に触れた幸村は、零れたしょっぱい液をちゅっと吸い取るように、唇で頬をなぞる。
「この世で別れたとしても、俺は生まれ変わって、またあんたを探すよ。だから。」
「政宗どの。」
「だから、どうか、ずっとずっと俺の傍にいてくれ。幸村。」
俺は、幸村の背がしなるほど、感情と比例してその身を強く強く抱きしめる。
「政宗どの、きっと、約束でござるよ。」
ふわっと春のたんぽぽみたく微笑んだ幸村の唇に、俺は優しく唇を合わせた。
「大好きでござるよ、政宗どの。」
「俺も、大好きだ、幸村。俺は生涯、あんただけのものだよ。」
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