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小説
セツナレンサ。−中編−
 <12月24日 PM10:09>
 政宗の非の打ち所のない顔が近づいてきて、もっともっと脳裏に焼き付けるほど見つめていたいと頭の隅で願ったけれど、やがて、それが近すぎて視界は膜が張ったみたいにぼやけて、勝手に瞼が降りてきてしまう。
 どちらかともなく、自然に惹かれあうように唇を寄せていた。
 弾力のあるそれが、柔らかく隙間無く触れ合った瞬間、涙が出そうになるほど、胸がきゅんと切なくなり鼓動が激しくなる。飽くほど、ちゅっちゅっと、触れ合うだけの甘く蕩けるキスを繰り返していた。
 やがて政宗は、テーブルに座るように腰をかけている幸村の上に覆いかぶさるかんじで体制を変えて、キスを送る。幸村の顎を軽く持ち、口を開けるように促した。
「口、開けて。」
「ふあ・・・んんん。」
 顔を横に倒し角度を変えて、もっと深く貪欲に繋がろうと、政宗は幸村の歯列を割り、生温かい舌を滑り込ませた。その極端に小さい空間で、反射的に隅に逃げ惑う幸村の舌を追いかけて、強引に絡め取り、裏筋や内頬まで執拗に嘗める。幸村の口内を貪りつくすように、丹念に舌で蹂躙する。
 コクンコクンと小さく幸村の喉が鳴る。もうすでにどちらのものか分からない唾液を飲み下していた。
「ふううんん・・・。」
 息が止まるほどの、長いキス
 幸村の手はすがる様に、左は政宗の広い背中に回り、左はテーブルの端を指先の色が白くなるほど強く掴んでいた。
 唇を開放すると、幸村の紅をひいたように赤くなった唇から、甘い吐息がふあっと漏れて。政宗だけを写すその眼も、熱に浮かされたみたく、トロンと甘える感じになっていた。
「幸、愛してる。」
 腰に直結する、擦れた、それでいて甘い美声で、耳元に直接囁いた。
「俺もっ・・・。」
「絶対、浮気なんかするなよ。」
「そんなの、政宗殿の方が心配でござるっ。すごくカッコいいから、女の人に、こっちが嫌になるほど、もてるし・・・。」
 語尾を言いよどんで、そこで幸村は、トクン、と心臓が不整脈みたく疼いた。
――――きっと、あの同僚の女性も、政宗どののことが好きだったんだと思う。
 それは、ほぼ確信に近い。
 政宗に対して、同じ気持ち=好意を持っている自分だから分かる。はっきりと、ストレートにびしびしと過剰に、それは自分へと伝わってきた。だから、連鎖反応みたいに切ない感情が伝わってきて、心がズキズキと痛辛いんだ。
 苦笑した政宗は、黙り込んでしまった幸村の頭を抱きこんだ。倒れこんだ幸村の額は、こつんと政宗の鎖骨辺りに当たる。
「ばーか。もう、この際白状すると、幸村が気づいてないだけで、あんたのこと狙ってる人間なんて沢山いるんだぞ。あんたが知らないトコで、俺が先手打って、牽制して近づけないだけ。」
「え。」
 幸村は大きな目を更にぱちくりさせた。
「俺は、あんたを誰にも奪われたくないって、必死だったんだぜ。」
照れたように政宗は言いながら、目の前の幸村の短めの前髪をかき上げると、指先が湿ったのに気づく。雪が解けて、やがてそれは水になって、幸村の前髪をぐっしょりと濡らしているのを見咎める。
「幸村、体がこんなに寒くなってる。」
 ぎゅーっと、両腕で羽交い絞めして、政宗は幸村のうなじ辺りにちゅっと唇を落とした。
「ひやっ。」
「なあ、風呂、一緒に入ろうか。」
 いたずらっぽく言った声が、幸村の鼓膜をくすぐる。
「ええっと、あの、ええっとお・・・。」
 不自然に泳いだ視線の先に、参禅と輝く赤と緑の派手なパッケージを見つけ、神の助けと言わんばかりに、幸村は腕を精一杯伸ばして、それに手をやる。
「せっかくだからっ、俺っ、ケーキ、もらおうかなっ。」
「・・・ケーキなんか後で良いだろ。それに幸村、さっき、このケーキ嫌いって言ってたじゃねーの。」
 男前な顔を再度近づけて、幸村の耳たぶを軽く噛んだ。男前に免疫がある幸村でも、負けてしまいそうなほど、威力がありすぎる。
「んんっふあ・・・、でもっ・・・。風呂は、やだあっ・・・。」
「何でなの?」
 ちょっと甘える口調で、政宗は幸村の返事を促した。
「恥ずかしっ・・・から・・・。」
 恥らう感じで目線を落としながら、息も絶え絶えに幸村は、声を絞り出す。
「幸村、いつも恥ずかしがるけど、男同士だし、俺しかいないんだからいいじゃねーか。」
「・・・政宗どのだから・・・一番、恥ずかしいのでっ・・・。」
「何もしねーって。体、洗うだけだから。」
「うわあっ・・・。」
 いきなり前触れ無く体がふわりと宙に浮いていて、幸村はおもわず泳ぐみたいに足をばたつかせてしまう。視線の先は、満面の政宗の笑顔。
 いわゆる、お姫様だっこ状態だ。
 そんなに幸村も軽い方じゃないはずなのに、どこからそんな力が湧いてくるのだろうか。
「幸村、暴れんな、怪我するぞ。」
「・・・ううううっ。」
 ぎゅううっと幸村は政宗の首に全力で、両腕で巻きつき、真っ赤になった顔を見られまいと、その肩口にしっかりと埋めた。
「観念したか?」
「はい。」
「よろしい。」
従順に従った幸村に、政宗は、喉を鳴らして喜ぶ。そして、ちゅっと、啄ばむキスをまっかっかの朱に染まった頬に、ひとつ落とした。



<12月24日 PM10:25>
 風呂場は、浴槽から漂う乳白色の湯気がふわふわと充満していて。
 椅子に腰掛けて、しゃわしゃわと頭を地肌から丁寧に洗われていると、昔、お母さんにしてもらっていたような、ふわふわとした夢心地にうっとりとしてきて、やがて、頭が前後に船を漕いでいた。
「おい、幸村、寝んなよ。」
「ふあ、ふあいいっ。」
 ハッと我に返ると、思わず口の端から零れていた涎を拳でごしごし拭き取った。
「寝てられねーようにしてやるよ。」
 ボソリと意地悪く零したその声は、儚すぎて、すぐ傍の幸村まで届いてなくて。
角が立つほどよく泡立ったシャンプーの泡の残りをそのまま掌にもっさりと集め、幸村の蒸気で火照った肌へと無造作に塗りたくった。掌を直にマッサージするように滑らせると、幸村の肌がササッと粟立つ。
「何っ・・・。」
 ピクンッと幸村の背筋が伸びて、彼の過敏な体が揺れてきて。その緩いけれど、幸村の全てを知りきった的確な動きに、徐々に幸村の意思とは反して、体が勝手にピクンピクンと面白いように反応してゆく。
「いっ・・・。」
政宗は、ぴったりと後ろから幸村の背中に寄り添うと、円を描くようにくるくると両胸あたりを重点的に、洗うという大義名分を繰り返す。手の出っ張った中心部分で、胸の突起をこねるような動きをする。
ふあと、熱い吐息を零しながら、幸村は涙目で密かに悶える。
「変な事、しないってえっ・・・あんっ・・・。」
「体洗ってるだけだろうが。幸の体が敏感すぎんだろ。」
してやったりの、他人には見せられないニヤついた顔で言うと、政宗は幸村のうなじ部分にキツク吸い付いて、内出血の華を咲かせてゆく。
「最近、仕事が忙しくてご無沙汰だったからな。」
「あ・・あんっ・・・。」
「ピンクで美味しそうなここも、嫌って泣いて頼むくらい、可愛がってやる。」
 ピンッと、既にふるふると立ち上がってきていた乳首を指で弾かれた。
 その鋭い刺激に、幸村は白い喉を反らせて、甘い声を漏らす。
「いあっ・・・。」瞬間、幸村は溢れそうな嬌声を飲み込んで、下唇を噛んだ。
「声、聞かせろよ。」
それを見咎めて、政宗は両方の乳首を両手で同時に可愛がる。ヒリヒリと赤くなってきているそこを摘んだり引っ張ったりして、幸村の欲望をしきりに煽る。
「声があっ・・反響してえっ・・・。やっだあ・・・ひっああっんっ。」
自分の感じきっている、女みたいな甘く高い声が、聞きたくなくても耳に滑り込んでくる。それが恥ずかしいのに、恥ずかしくてたまらないはずなのに、何故か、次第に股間辺りが爆発しそうに熱くなってくる。
「あんっ、いああああっ。」 
無防備な幸村を四つんばいにさせて、移動してきた政宗の手が、引き締まった臀部から太ももあたりをさわさわと摩っている。
 それ以上何かしてくるわけでもない、その緩やかなその手の仕草が、憎らしい。
 わざとだろう、収縮する桃色の蕾の周辺あたり、ギリギリの部分を掠めている。
「んんっ・・まさっ・・・むねどの・・・っ。おねがっ・・・。」
 焦らされるのが、もどかしくてもどかしくて、苦しくて。
早く待ち望んだ刺激が欲しくて、指を入れて、力強く、燃えるように焦がれる内部をぐちゃぐちゃにかき混ぜて欲しくて。
無意識に、腰がそこに誘うように、揺れていた。
「幸、すっげえ、いやらしいな。俺以外のヤツにそんな姿見せんなよ。」
 普段の性と無縁な幸村の、こんな乱れた姿。
自分しか知りえないその姿に、政宗は嬉しげに口の端を上げてニヤリ笑う。
「ここ、どうして欲しい?」
「入れてっ・・・くださっ・・・んんんっっっ。」
「聞こえねえよ。」
「入れてっくださっ、おれっの、なかにっ、おねがっ・・・。」
「このまま、後ろだけでイク?」 
 こくこくと何度も幸村は首を縦に振る。
「んんっ、あんっ、指、入れてっ・・・俺のなかっ・・・もっ・・・っ。」
 ひっきりなしの喘ぎ声が浴室中に木霊するけれど、もう幸村の意識は別の方へ飛んでいた。
 未だ指を入れようとせず、周辺部分を行ったり来たりしているその間も、政宗の片方の指は、幸村の弱い部分、胸の尖りを捏ね繰り回して執拗に愛撫している。
「幸、村。」
 明るい蛍光灯の元、幸村の感じきった表情を、政宗は愛しげに見つめている。
「まさむねっどのお・・・っおねがっい・・・もおっおかしっなああっんんんっ。」
 そして、望みどおり、双丘の中心に指を滑らせて。
「ひっあああああんんっあんっ・・・もっ・・・だめっでっっ。だめええっ。」
 焦らされすぎたその体は、指をグッと突き入れただけで、あっけなく絶頂を迎えていた。 
「おっと。」
 ガクンッと人形みたく力を脱力した幸村の体を、政宗が力強く両腕で支えた。
「俺だけの、もんだろ。全部。」
 汗ばんだ幸村の全開のおでこに、ちゅっと軽く音を立ててキスをすると。 
「幸、なあ、ベッド、行く?」
 政宗の腕の中で、幸村はコクンと夢うつつの表情のまま頷いて、首にしっかりと、しがみついてきた。


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あきゅろす。
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