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小説
その19
 徒歩で、学校まで15分。
 普段から、低血圧気味の政宗は朝に弱く、否応が無しの学校までの、すでに校舎が見えている長い歩道のストロークは、気分が憂いがちなのだが。
―――今日は本気で、学校来たくねえと思っちまった。
 あのままぬくぬくと毛布の中で幸村と包まって眠っていたかったけれど、そんな子供みたいな我儘がまかり通る、世の中のわけが無く。
 だるそうに鞄を肩に掛け重い足取りの政宗の、その隣を歩く幸村も、学校が近づくにつれて口数が少なくなっていっている。見ると幸村のスーツの襟元のが乱れていたので、政宗は無言でちゃちゃっと直す。
 学校は文化祭らしく、色んな雑多なもので飾り付けられていた。まるでお正月みたく紅白の襷があったり、その横に星条旗が並んでいたり、多国籍に華やいでいた。あまりの色目に、目がチカチカするぜ、と、政宗はますます顔を歪める。
 そして、心に影を落とす最大の理由。政宗は、幸村に、そっと声を掛ける。
「あのさ、幸村。女の子から、手紙とか受け取らないでくれよ。」
「え?」
「ほら、今日、俺達の代わりに、ホスト役するんだろ。」
「そんなの、もらうわけないでござるよッ!」
 幸村は、速攻で体全体で否定する。
「押しに弱そうだから、心配なんだよ。」
 政宗は苦笑交じりに、前を向いたまま低く声を押し出す。
「そ、それなら、政宗殿が…、女の子とあまり仲良く話すの…、俺、嫌いでござる。」
 口を子供っぽく尖らせて、途切れ途切れに告げる幸村に、政宗は、テンションが分かりやすく上向きに振り切る。
「えッ…。」
「だからッ、俺ッツ。」
 ギュギュッ。
政宗は、突然幸村の、無防備に下ろされていた右手を、包み込むように握った。驚きすぎた幸村は出しかけていた言葉を、息ともども飲み込む。
「だから、俺が好きなの、幸村だけだって。」
「うううーッ」
 幸村は分かりやすく顔を真っ赤にすると、俯いてしまった。


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