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小説
その12
「幸村の手、温かいな。まだ、酔ってんの?」
「ち、違うでござるよ…。」
―――先輩と手を繋いでるから、体が熱くなってる、なんて言えないでござる。
 顔を覗き込まれて、頬を染めた幸村は、ムムムと、口を引き結ぶ。
 皆の奇異なものを見る視線もなんのその、仲良く手を恋人つなぎで繋いだまま、家路を急ぐ。足元がふわふわと浮かぶような、嬉しいのか何なのか、背中あたりがくすぐったい気持ちにずっと心が苛まれたままで歩いていると、時が過ぎるのはあっという間で、いつのまにか通い慣れた政宗の家に着く。
「お、おじゃまします。」
 政宗の後を追ってきた幸村は、少し緊張気味に、誰に言うことでも無く、玄関でボソリと挨拶する。夜分遅くの訪問なので、いつもとは勝手が違う。何だか不謹慎な、悪いことをしているようで、心がうしろめたいのだ。
 しかも突然、政宗が玄関の扉を開けた途端、立ち止まってしまったので、少し高めの鼻の頭をバフッと政宗の肩口にぶつけてしまった。
「せんぱ…、どうしたので?」
 ちょっぴり赤くなった鼻の頭を抑えながら、幸村は、真剣な表情の政宗の横顔を、後ろから身を乗り出して覗き込む。政宗は玄関の高級そうな大理石の床を見ながら、ボソリと言葉を足元へ落とした。
「あーあ、おふくろ、帰って来てんな。」
「え?」
「ほら、靴がある。」
 確かに政宗の視線を追って、外の外灯を頼りに眼を凝らすと、女性物のローヒールがきちんと揃えてそこにあった。幸村は驚きのあまり暗闇の中、エエエッと仰け反る。
 まあいいや、と、気を取り直した政宗は、壁にあった廊下を灯す蛍光灯のスイッチを押すと、そのまま2階の部屋に続く階段をトントンと軽快に上ってゆく。幸村は眉毛をハノ字にして少し不安げに玄関の方へ視線を送りながらも、従順にその背についてゆく。
 そして、政宗は、自分の部屋のドアをしっかり閉めた途端、入り口で立ち止まる幸村を、そのまま強く腕を引いて、自分の方へ引き寄せた。体の向きを変えて、幸村の両肩を抑えると、その体をベッドへ仰向けに押し倒してしまう。頭をベッドマットへ押し付けた衝撃で、幸村の後ろ髪を束ねる赤い紐が解かれ、シーツの上に髪が散らばった。
「…あっあの、先輩ッ…。」
 いきなり始まってしまった行為に、幸村は慌てた様子で、政宗の下で声を漏らす。
「何?」
 政宗は、幸村の反らされた首元にヂュッと吸い付きながら問うてくる。切羽詰まった動きで、もうすでに掌は、幸村のシャツの中に差し込まれていて、直に平たい胸や腹筋あたりをいやらしい手つきで撫で擦っていた。ンンッと、敏感な幸村は大きく息を吸い込みながらも、腕を強く突っ張って、覆い被さってくる政宗の肩を押し返していた。
「なんだよ、幸村。」
 その思わぬ反抗に、政宗は少し苛立たしげに声を出しながらも、ますます体重を掛けて体を密着させる。
「おばさん、家に帰って来ているって…。」
 確か両親の部屋は、この部屋の隣だ。隔たりが壁一枚だと、すなわち…。
「そうだけど。」
「だからっ、今日は、その…エッ、エッチなことは、駄目でござるよっ。」
「なんで?」
 そう平然と聞いてくる政宗に、なんでって…、と、幸村は、ますます泣きそうになる。
「だって、駄目でござるっ。」
「だって、何だよ?」
「こ、声がっ…、おばさんに聞かれたら…。」
 自分達の本当の関係が政宗の母親に知られたら…、考えただけで怖すぎる。
「大丈夫だって。幸村が、喘ぎ声、我慢すれば良いだろ?」
「ひんんッッ…。」
 政宗はわざとなのか、シャツを首元までたくし上げて、幸村が感じてしまう性感帯の弾力がある尖りを口に含み、思い切りヂュッと音を立てて吸い上げてしまう。
「あんんッ!!」
「だから、声、抑えろってば。」
 そして、もうすでに固く立ち始めている薄い色の乳首を、舌の中心で折りたたむようにくすぐった。その鋭すぎる刺激に、ひんッと体を竦ませた幸村は、下唇を噛み締め、政宗の肩口に全力で縋りつく。
「幸村の、ここは素直なのにな。」
 じいっとその可愛い幸村の薄桃色の乳頭に熱視線を送った政宗は、フーッとわざとらしく生温かい息を吹きかけて、ますます幸村の快感を煽ってゆく。
「んんーっっ。」
 右の乳首をちゅくちゅく赤ちゃんの授乳みたいに吸い上げながら、左乳首を親指と人差し指で捏ね繰り回す。その断続的に続く甘辛い快感に、細い腰を必死によじりながらも、気持ち良さげに幸村の顔が惚けてきた。それを乳首に吸い付きながら横目で確認した政宗は、右手を下にそろそろと下ろしてゆく。
「ああっ、だめでッ。」
 Gパンのファスナーを下ろされる無機質な音に、これからの自分に起こる事を想像して、幸村はゾクゾクッッと背筋を震わせた。そのままズボンと下着を剥ぎ取って、幸村の下半身を丸裸にしてしまう。体の力が抜けてきている幸村の抵抗は意味無く、簡単に両足を大きく開かすことが出来た。
「やっ、やだあッ!みちゃ、やだあッ…ああッ。」
 身体を小刻みに震わせる幸村は、快感交じりの、甲高い声を上げてしまう。
「可愛いって言ってんだろ。」
 幸村の最奥、薄い色の蕾は、幸村の先走りの液で、女性の愛液を彷彿とさせるぐらいに、ぐっしょりと濡れてしまっていた。
「嫌だ嫌だって言いながら、ここ、すっげ熱くなってるじゃねーの。」
 入り口辺りをくちゅりと水音を立てながら、円を描くように擦る。幸村はその刺激にも、シーツの上でヒクヒクッと腰を跳ねさせた。
「やっ…、だっ、だめでっ…!指、中、入れちゃ…っ。」
 敏感な内部に入れられると、もう、欲望は止まらなくなる。体が快感だけを追い始める。
 政宗は、抵抗を抑え込んで、有無を言わさず、グニッと滑り込ませた指を付け根まで入れてしまった。
「ひあああッ!…んん−ッ!」
 泣き叫ぶように声が大きく出てしまった幸村の口を、政宗はぴったり塞ぐように口づけた。
 涙の雫を目の端に滲ませた幸村も、必死でくちゅくちゅと舌を絡める。政宗の首元に両腕で巻き付きながら、顔の角度を変え、何度も激しく唇を吸った。
「幸村の体も、すっげえエロくなってきたよな。あの純情そのものだった幸村はどこに行ったんだよ?」
 ペロッと舌舐めずりした政宗は、蕾に入れ込んだ指を増やすと、好き勝手に蠢かせた。
「もう、中、変わって来てる。だから、もう指、締め付けんなって。」
「やあっ…、そんなッ、い、言わないでくだっ…。」
 恥ずかしすぎる、と、涙と汗で顔をぐしゃぐしゃにしている幸村は、何度も首を振る。
「あッ…んんッ…ひあんっ!…、そ、そこッッ!!…ああっ…。」
 普段よりは遠慮がちに、小さく、幸村は甘く啼き始める。その吐息交じりの官能的な声に、昂ぶってきた政宗の股間も熱くなってゆく。
「この浅い所も擦られるの、好きだろ?」
 入り口辺りを指で何度も擦られて。
「んんッ…、あッ!…やっ…やあッ、…んああッ!」
 快感に雁字搦めに、体と心を支配されてきた幸村は、可愛く目元を赤く染めて眼を潤ませながら、酸素を求めるように喘ぐ。
 ぐちゅぐちゅと音を立てて、中を掻き混ぜられて、意識が白く塗り潰されてゆく。幸村は首をカクンと反らせて、ぼんやりと歪む視界を目に映す。
 とうとう、前立腺の裏、感じる部分に指が届いてしまった。
「もっ、もおッ…、ひあッ!…んんっ、だっ、だめっ!おれっ…もおッ…。」
 一気に上りつめた幸村が、達しそうになった瞬間、政宗の動きがピタッと止まってしまった。
「ええ?」
 続いて指を内部から引き抜かれて、驚きすぎた幸村は、眼を大きく見開く。
「ごめん。やっぱ、やめるか。」
「えええっ…。」
 こんな体が反応してきた状態でやめるなんて、と、切なげな視線を送る幸村を無視して、政宗はチュッと幸村の汗ばんだおでこにフレンチキスを送ると、肌蹴ていたシャツや、下着ごとズボンを穿かせた。
「今日は、大人しく寝ようぜ。」
 政宗は幸村の隣に横になると、玉の汗が浮かんでいた幸村の顔を、そこいらにあったタオルで甲斐甲斐しく拭う。
「せ…先輩…。」
―――体の奥が苦しいくらいに、燃えるように熱いのに、こんな状態で、眠るというのか…。
 何か言いたげに体を擦り付けて来て、苦しげに息を吐いて政宗の胸板に額を押し付ける幸村に、政宗は顔を覗き込んで聞いてくる。
「どうしたんだ?幸村。」
「…何だか…、俺…。」
 俯いた幸村は、顔を真っ赤にして、体を震わしながらしゃくり上げる。
―――奥が疼いてしまって、こんなんじゃ、眠れない。
「…せ、せんぱ…。」
 ぎゅうと政宗のシャツを皺になる位に握って、たどたどしい声で言ってくる幸村の頬を両手で包み込んで、おでこ同士をコツンと軽くぶつけてくる。
「何だ、幸村?はっきり言わないと分からないだろ?」
「うううっ…、俺っ…。」
 言葉が喉まで出かかったけれど、どうしてもそれを口にすることは躊躇われる。恥ずかしくて、言えない。けど、身体は暴走して、我慢出来ない。
「おやすみ。」
 そして、政宗は幸村の背中を、規則的なリズムで摩る。そんな穏やかな仕草も、今の幸村には逆効果だった。
「せ、先輩っ…、やっぱり、俺、このままじゃ、…眠れないでござる…。」
 とうとう、欲望に負けてしまった幸村は、切羽詰まった表情で、政宗に告げた。
「どうした?」
 ん?と、すぐ傍でも端正な顔の政宗は、甘やかすように優しい声で聞いてくる。
「かっ、体が…熱いのでっ…。」
 顔を、耳まで朱が増殖したみたいに真っ赤に染めて、眼を充血させた幸村は、しゃくり上げながら恥ずかしそうに告げる。
「なら、どうして欲しい?」
 両腕で幸村の体を手繰り寄せて、抱き閉めると、政宗はその良い声で耳元へ囁くように問うてきた。その声だけで、体中が過敏になっている幸村はゾクンッと体を震わせる。
 そんな幸村の素直すぎる反応に、酷く楽しげに、クスクスと政宗は笑う。
「言ったら、ちゃんと最後までしてやるよ。」
 その表情で、政宗がわざとやっていることに、やっとこさ幸村は気付いた。


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