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小説
<11>
 プルルルル。プルルルル。
「ふっ・・・っああんうんっ・・・あんっあっ・・・いっ。」
 何度も何度も着信を受けている健気な携帯は、可哀想に部屋の隅っこに放り投げられていた。
 もう、幸村の耳には、完全に届いていない。
 何より、幸村の心と体は、いまや快楽だけを追い求めてしまっていた。
 先ほどまでの初心な彼は、どこにも存在しない。
「いやらしいね、幸村、自分から腰を振ったりして。」
 先走りの精液を窪みからぷくりと滲ませる肉棒の先端を、指で軽くはじくと同時に、内部を骨太な指数本で、ぐちゅぐちゅと激しく突き上げる。
「ひいいっ・・・。だめえっ、もうもうっ、さわっちゃ・・・んんんあっ。もおっ、イキたくなっい・・・のにいっ。」
 幸村は、涙と涎でぐしゃぐしゃの顔で懇願した。
 もう何時間、そうしているのだろうか。時間の感覚が麻痺してきている。
 ひっきりなしに出しすぎて、幸村の嬌声は徐々にかすれが混じってきていた。
 足元に転がるチューブから出された透明なラブローションと、何度もいかされたことにより放出した自らの多量の精液で、幸村の内部は、ぬるぬるに濡れてしまっていた。
慶次は、幸村の内部に指を潜入させ、乱雑に内部をかき混ぜるように動かす。
「いいっよおっ・・・っ、ふああっ、あああっああああん。」
幸村は歓喜の声をあげて、もっともっとと、ねだるように腰を動かす。
巧みな指さばきで内壁を擦りあげて、今日何度目かの絶頂を目指して、幸村を追い上げてゆく。
感じすぎておかしくなる場所、前立腺の裏側部分を、グリグリと爪で引っかくように擦りあげられて。
「ひあああんんっ、もうっっだめっ、もうイクぅッ・・・。あああああっ。」
 その腰に直結する鋭い刺激に、ぶるるっと背筋を震わせて、幸村はあっけなく達していた。
「うんんっ。」
 はあはあと肩で息をし、ぐったりとベッドに身を沈めている幸村の体内から、慶次は、余韻に浸る暇も与え無いまま、指を全て抜いた。
「もうそろそろ、入れれるかな?これが欲しいんだろ?指なんかじゃ物足りなくて、ぶっとくて、熱くて、固いやつで、奥をずんずん突かれてぐちゃぐちゃにされたいんだろ?」
「やだっ・・・っ。」
 目の前に晒された慶次の、凶器に見えるほどグロテスクに、そそり立つそれ。
 視線を逸らせない幸村は、密かにゴクリと生唾を飲み込んだ。
 指で犯されて、さんざん解かされた自らの最奥は、確かに、淫らにそれを待ち望んでいるのも事実。
「欲しいんなら、ほら、自分で入れるんだよ、幸村。」
 優しい声で誘う慶次から、幸村は拒絶するように顔を背けた。
「だっ、駄目ですっ・・・。」
 最後の理性を総動員させて、幸村はマットレスの上をお尻でずり下がると、スプリングが軋み、体が揺れる。
―――最初は、大好きな、大切な人と、したかったのに。
「・・・政宗どのっっ。」
 心が苛まれそうな幸村は、きつくきつく両目を閉じて、神様に唱えるかのごとく、小さな声で呟いていた。
 その儚い心の悲鳴を、鋭く聞き逃さなかった慶次は、幸村を乱暴にベッドへと押し倒すと、そのまま腰をずるずると引き寄せ、両足を最大限に開けていた。
「いやあっ・・・っ。」
 ぐっしょりと濡れそぼち、ひくひくとうごめく物欲しげな蕾が、間接照明の仄かな灯りの元、その眼前に曝け出される。
「幸村っ。」
「ひいっっ、あああああああんっ。」
 慶次は容赦なく一気に幸村の内部に、猛々しい自分自身を突き入れていた。
「ふああっ・・・。」
 途端、びゅびゅっと先走りの液が宙を飛んだ。
「入れただけでいっちゃったの?もう、はしたないんだな。」
 くくっと、慶次は喉で嬉しげに笑う。
「まだまだ、終わらないからね。」
「慶次どのお・・・。あああっ、もっ・・・と、奥まで・・・くださっ・・・れえ。」
 やっと焦がれていた、焼けるように熱いそれで我が身をいっぱいにし、恍惚の表情で顔を上げ、幸村は慶次を見つめていた。
「伊達のことなんて、忘れ去れてあげるから。」
 睫毛を震わせ瞼を閉じた幸村の瞳の端から、切なげな透明な雫が一筋流れた。


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