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小説
その14
 もう、坂から転げ落ちるかのごとく、幸村を求める動きは止まらなかった。
 幸村の薄茶の柔らかい髪に差し込んだ、男性にしては長い指をくしゃくしゃにない交ぜにしながら、政宗は、幸村の蕩けるほどに甘い唇を唾液ごと吸い続ける。角度を変えて塞ぐ度に、お互いの口から、湿った水音が漏れる。幸村の柔らかい上唇を、自分の唇でハムッと挟んだりして、瑞々しい唇の、そのぷりぷりの弾力を一しきり楽しんで。
―――センセと、まさかこんなこと出来るなんて、マジで夢みたいだ。
 いつもの夢落ちじゃない。この生々しい、キスの感覚は夢じゃない。この、うっとりと潤んだ目でこちらを見てくる先生も夢なんかじゃねえだろ。
 何度も何度も、しつこいくらいにキスを繰り返したせいで、お互いの息が、ハアハアと、軽く100m走った後みたく乱れてきた。政宗は垂れてきた唾液を拳で拭いながら、寝転んでいる幸村の上に跨る形で座ると。
「なあ、そろそろ、良い?」
 上がった息を整えつつ、政宗は掠れ声でそう尋ねながら、ぐったりとシーツに身を預けている幸村が無抵抗なのを良いことに、Tシャツ、続いて短パンを脱がし、ボクサーパンツのゴム部分に指を引っかける。
「ちょ、ちょっと待っっ。」
 酷く困った顔をした幸村は、体を僅かに起こして、力が抜けてきた震える手で、政宗の手の動きを抑えるかのごとく、ハシッと手首を握ってきた。
「どうしたの?」
「な、なんで、俺だけ全部脱がされるのでござるっ?」
 真っ赤になった顔を両手で覆い隠しながら、上ずった声で大きく聞いてきた。指の隙間から見える頬が、真っ赤な秋の紅葉みたく色づいている。
「だって、全部脱がさないと、気持ち良くしてあげられないだろ。」
「えええっ…、そんなの、俺だけなんて…、恥ずかしいっ。」
 触りっこじゃなかったので、と、幸村はたどたどしく非難の声を上げるけれど、それを聞かないふりを決め込んで、政宗は、再び押し倒した幸村の鎖骨部分に、強く跡をつけるように口づけながら、その首元に顔を埋める。と、シャンプーの爽やかな匂いが漂ってきて、なけなしの理性を簡単に打ち砕いてゆく。
「大丈夫だって…、幸村。」
 耳の傍で、柔らかい耳たぶをくすぐるみたく舌で嬲りながら、わざと甘ったるい声で囁く。
「んっ、こんなときに、名前…、反則でっ…。」
 その声だけできゅんっと感じてしまった幸村は眼をきつく閉じて、んんっと息を大きく飲む。
 とうとう最後の砦だったボクサーパンツを邪魔っ気に取り覗いて、全裸になった幸村の体を、黒縁眼鏡の奥から熱を含んだ視線で見下ろした。
か細い体。でも、しなやかな筋肉が、付くところには付いていて、されど、そこはかとなく未だ少年らしさも見て取れる。
「あまり、そんなっ、見ないで下され…っ。」
 丸みを帯びた女の子とは決定的に違う。けれど、どんな女の子とするより、自分は今、高揚していて、恥ずかしいくらいに、初めての時みたいに、いやその時よりも、がっついてしまうのだ。
 政宗は白い肢体に鮮やかに主張している乳首周辺を、掌で円を描くように揉み始める。最初柔らかかったそこは、徐々にコリコリと固くなって掌を押し返してきた。ヒクッと幸村は涙目で顔をひくつかせて、もどかしげに細い腰を僅かに揺らした。
「いやだ…、そこっ…さわっちゃ…。」
「いやにしては、気持ち良さそうだけど。乳首、弱いよね。」
 小さくて可愛い、立ってきた薄桃の乳首を親指と人差し指でキュッと摘まむと、とうとう幸村は喘ぎ声を半開きの口から漏らした。
「あっ!…、んんっ…、はっ…。」
「かーわいい声。」
 そんなからかい口調の政宗に、ムムと、一瞬幸村は拗ねた表情を見せて。
「おっ、俺ばっかり、こえがっ…でちゃっ…、ひあっ、なんでっ…。」
 自分ばかり女の子みたいに扱われて、と、悔しげな幸村の表情は言いたげだ。
「良いんだって。俺が気持ち良くさせたいんだから。」
「そんなのっ…、ずるいぃっっ…。」
 乳首を、桃色から赤に変わるくらい執拗に嬲られ、シーツの上で、のたうつみたく激しく悶えながら、幸村は涙目で抗議してくる。
「それに、俺だって、ほら。」
 政宗は自分の穿いているスウェットを下着ごと腰骨あたりまでずらして、窮屈そうに仕舞っていた自分の猛々しく育った熱いそれを、幸村の眼前に取り出す。
「幸村の可愛い姿見てたら、俺も立ってきたから…。」
「ええっ…。」
 目の前に晒された政宗の、その自分自身より一回り以上の大きさの質量に、少し怯えた表情で、幸村は小さく喉を鳴らした。
「一緒に気持ち良くなろ?幸村。」
 そう芝居がかったような官能的な声でわざと囁きながら、政宗は先走りが滲む幸村自身に、自分の熱い欲望の塊をぴったりとくっつけてしまった。
「ひあっ!」
 その触れ合った生々しい感覚に、幸村は腰が引けるけれど、ますます政宗はぴったりと合わせてくる。そして、生温かい白濁の液を滴らせながら、両手で包み込むようにして上下にしごき始めた。
「んっ…ふうっ・・・、あ…、あふっ・・・はあ…。」
「…っ、なあなあ、幸村も、1人で、抜いたりすんの?」
「えっ…そんなっ、ふあっ…、破廉恥っ、なことっ…しないっ…。」
 眉間にきつく皺を寄せ目をぎゅっと閉じて、幸村は鼻に抜ける嬌声を漏らしながらも、必死に切れ切れに答えてくる。
「え?まじで?しないと病気になるって。」
 青春真っ只中の自分なんて、毎日そればっか考えてるってえの。幸村のこと、妄想の中でどんだけ犯してるか、バレたら即嫌われそうだ。自分の夢の中では、幸村は淫らに、色んなシチュで感じまくってる。かなりマニアックなんだけど、満員電車の中で痴漢とか、放課後の保健室でエッチとか、夏のプールで水の中で行為に及ぶとか…、やべえ、これじゃ本気で変態だ。AVの見過ぎか?
「それとも、俺と、定期的にやる?」
 そんな冗談っぽく聞いてきた政宗からの提案に、えっと幸村は一瞬驚いた表情を見せたけれど。
「ん。」
 僅かに頭をコクンと縦に揺らした。
―――ま、まじで?こんなに上手く行って良いの?
「もお…、幸村、可愛すぎってば…。」
 たまらないという感じで呟きを漏らした政宗は、自分の唇を濡らすようにペロッと舐める。
「じゃあ、幸村は力を抜いてて。俺のすることに身を委ねてて。」
「え…、お、俺もっ、…俺もするっ…。」
「だーめ、幸村の手はここ。」
 政宗は、股間に伸ばそうとした幸村の手を逆に取って、自分の肩に回すように促す。
「なら、舌、出して。」
 眼を閉じた幸村は、長い睫毛をふるふると切なげに揺らし、躊躇いながらも口を開いて、トロッと透明な液を滴らせた舌を出してきた。
「はっ…、はあ…、んふ…、ふあ…、あ…。」
 出した舌を、唾液を滴らせつつ宙で絡めながら、政宗はお互いのそれを高みへと昇らせてゆく。煽情的な白い喉を反らした幸村が、恥じらいながらも、甘い声を大きく漏らし始める。
「はあ…、も、液でドロドロだ…、俺のもべったべた…、まじ、やべえし…。」
 2人分の液で、政宗の両手は勿論、幸村の白い体の腹辺りも精液まみれになってしまっている。その姿も、そそるものがあって、欲望が音を立てて背筋辺りをせり上がってくるようだ。
「んんっ…。」
 ねちゃねちゃの粘り気のあるそれをたっぷり絡ませて肉棒全体をしごかれると、得も言われぬ快感に襲われる。
「ひあ…、も、もっ…ふうっ…ああっ。」
 政宗は目の前にある痛いほどに立ち上って過敏に震えている尖りを、アイスを舐めるように、ベロンと舌の中心で舐め上げた。
「んんっ!」
 そして、そのまま強く吸い付いて口内に誘うと、赤ちゃんがおしゃぶりを吸うみたくちゅくちゅく音を立てて刺激し始める。
「ふあっ…、くんっ!…そこ、やだあっ・・・あっ…。」
「これ、好きなくせに。」
 互いの先端の割れ目からトロッと新たな液が零れる。それをすくいながら、両手で包み込んで更にしごいてゆく。
「…あふっ、んんっ…、あ…、やっ…ああっ…。」
 ハアハアと息を乱しながら、恍惚の表情を見せる幸村は、熱っぽい眼を隠すようにきつく目を閉じている。
 幸村の意識が完全に乳首と前部分にいっている間に、政宗は幸村の太腿の隙間に手を差しこんで、精液で粘着質に粘った指を、薄いピンク色の蕾周辺に滑らせた。
「ひあっ・・・そんなトコっ、汚いっ…。」
 ツプと第一関節まで埋め込んだ指で入り口部分を割り開くように擦られて、幸村は体中を真っ赤にして、イヤイヤと首を振りまくった。
「この浅い部分も擦られるの良いでしょ?」
「ひああっ・・・、やあっ…、ふあ…、あんっ!や、やらっ・・・。」
 無意識に、細い腰を上下左右に蠢かす幸村に、政宗は更に指を深く付け根まで飲み込ませた。敏感に腫れた内壁を擦って、そして。
「…確か、この辺だったよね。気持ち良いトコ。」
 前回、触れただけで幸村が乱れまくった、その内部で感じる部分を爪で軽くひっかくと、それだけで、面白いぐらいに、幸村は腰をビクッと大きく跳ねさせた。
「ひあっ!…、やらあっ…なんか、あっ、…あんんっ!…。」
感じ切った声で自我を失いかけたように啼く幸村が可愛くて、可愛すぎて、もうその声だけで股間が熱くなってきて、呆気無くイッてしまいそうだ。
体温が上がってきているのか、幸村の体全体が、扇情的に桃色に色付いている。
「なあ、中、指でグリグリされて、どう?」
「あっ…はあっ…、もっ、むりっ・・・あっ。」
 額に玉の汗を滲ませて、幸村はシーツをきつく掴んで、荒く呼吸しながらひっきりなしに甘さを帯びた声で喘いでいる。中がぐちゅぐちゅに蕩けていて、指にねっとり絡まって、きゅっと締め付けてきて。
―――やべえ、もう、俺の、このまま一思いに入れてえ。
そんなに強くない理性が、僅か皮一枚で繋がっている感じだ。
「んっ…、あっ…、あっ…、あんっ・・・ふあっ・・・。」
 政宗の、陰茎に絡みそれを扱く指は、この気持ち良さが断続的に続くように、イク寸前で止まるように、緩いテンポで動いている。
「…隣の、2人に…ふっ、聞こえちゃうかもな。」
「えっ…んんっ!」
 瞬間、冷水を浴びたかのごとく、裸で寝そべっている幸村が、強張った表情を見せる。
「ここ、壁、薄いからさ。」
 それは、自分の赤っ恥をかいたアダルトビデオ事件で実証済みだ。
 水分を含んだ不安げな眼で黒目を揺らして、声を必死に噛み殺そうとする幸村を、嘲笑うかのごとく、政宗は更に埋め込んだ指を釣り針型にして、奥をぐりぐりときつめにひっかく。
「ひやあっっ!!もっ、もおっ・・・、んあっ…、あ…、ふう…んん!」
 堪えていた分、大きく喘ぎ声が喉から絞り出されてしまい、泣きそうに表情を崩した幸村は両頬をカッと赤らめた。
「今、中がぎゅっと閉まったけど。そんなに、聞かれるの、恥ずかしくて感じるのか?」
「…もっ、もお…やら、やらってばあ…あああっ。」
 とうとう子供みたいにポロポロ涙を流して泣きじゃくりながら、細い膝を内股に擦り合わせる。
「膝、立てて、もうちょっと足広げて。奥まで可愛がってあげられないから。」
「んんっ…、まさむねどのおっ…。」
 幸村は真っ赤になった顔を背けながらも、言われる通り、徐々に力が入らない膝を開いてゆく。血液が集まってきているのか、薄桃色から赤へと周辺が変色した蕾。そこに、3本に増やした指を捻じ込んで、少し乱暴に突き入れた。途端、幸村の腰が感電したかのごとくビクビクッと跳ねる。
「ひあ!…あんっ!あっ…、ああっ…も、もお…だめえっ…!」
「はあ…、もっ…、きもちいっ…。」
 政宗は、腰を動かして肉棒同士を前後に擦り合わせながら、その腰の動きに合わせて、中に埋めた三本の指を、過敏な内壁を引きつらせながら激しく出し入れする。
「はんっ!ああっ…、もっ…、やらっ・・・もお、俺…、あっ!…くんっ!」
「…も、やべ…、いっちゃいそ…。」
 汗を滴らせる政宗は、苦しげに目を細めながら、熱を帯びた声で漏らす。
―――なんか、これ、疑似本番みたいだ。
 心も体も、熱く満たされてゆく。
―――好きだ、俺、先生のこと、すっげえ好き。
 そんな今にも心から溢れ出しそうな感情を込めながら、動きを速めてゆく。
「もお、とまんね…、いくぞ、幸村…。」
 そう苦しげに声をかけた政宗は、右手で前をしごく動きを速める。ぬめって滑りながらも、液を搾り取る動きで射精を促し、それと連動して、幸村の最奥を突く動きも激しくなった。
「んあっ!あっ…、ひあああっ、も、もっ…ああんっ!・・・んっ。」
 幸村は感極まった声を喉から絞り出し、政宗の首にぎゅっと縋って、頂点まで一気に駆け登った。
「んんっ…、ふああ…。」
 射精の余韻に体を震わす幸村の肩を、そっと抱き閉めて、その状態で政宗は自分も呼吸を整える。
「ごめん…なんか、シーツ、すっげ汚したかも…。」
「それは、だいじょうぶ…。」
 あまりの快感の強さからか、まだ熱が引いて無い幸村は、政宗に身を預けたまま、胸板に顔を埋め舌足らずに呟く。
 互いの液が飛び散って、もうシーツの上と互いの体は、白い液まみれだ。とりあえず、政宗は右手だけで幸村を抱き支えて、空いた左手で、自分のタオルを使い、液を拭っていく。
「大丈夫?幸村。寝ちゃった?」
 まだ腕の中で身動きしない幸村に、今回は寝落ちってパターンじゃないよな、と少し不安気に声をかけた。すると、未だ気だるげな幸村は、自分から顔を寄せて、尖らせた唇でチュッと軽く政宗の唇を啄んだ。
「え?え?ええ?」
 えと、こ、これは、一体、どういうつもりなのかな?
 幸村からのキスなんて信じられなくて、政宗は豆鉄砲を喰らったかのごとく、目を真ん丸にしている。そして、じわじわと頬が熱を持っていくのを感じる。さっきまでの激しいHよりもキスの方が恥ずかしいなんて、なんでだろ。
「他の人とも、こういうこと…するんでござるか?」
「あ…、まあ…、うん…。」
 見つけた箱ティッシュをとって、幸村の体と自分の手についた精液を拭いつつ、言い辛そうに、政宗はそうそっけなく告げると、口を噤んでしまう。
 嘘ついていることに、少なからず罪悪を感じた。こんな純粋な幸村を騙して、自分は何をしてるんだと、いう自覚はある。でも、理性が無さすぎて、欲望に負けまくりだが。
「そ、…そうでござるか…。」
「だ、だから、深い意味とかねえし、…つまり、その、そんな悩まなくて良いから。」
 今度は、難しい表情をして幸村は、裸の状態でぎゅぎゅっと強く抱きついてきた。
 そんな幸村に、政宗は薄く微笑んで、年上っぽい口調で優しく言い聞かせる。
「幸村、風邪ひくって。上、着ないと。」
「このまま、しばらく、いて下され…。」
「なあに、どうしたの?急に甘えて…。」
 クスッと笑いを零した政宗は、掛け布団を引っ張って、幸村の寒々しく見える肩までかけると、背中と腰に両手をまわして抱き閉め返した。
「甘えん坊だな、幸村ってば。」
「…甘えん坊にしたのは…誰で…?」
 責任とって欲しいと、口を尖らせて告げる幸村に、政宗は、え?俺なの?と冗談交じりに零しつつ。
「勿論、俺で良ければ、責任取るよ。」
 お嫁さんに来てもらっても良いし、と、言葉に出来ない本心を隠しつつ、政宗は幸村に顔を近づけて、その甘い砂糖菓子みたいな唇をもう一度味わった。


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