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小説
<9>
 ベッドに横たわらせた幸村の隣に寝そべって、慶次は、震える彼にその熱が伝わるほどぴったりと傍に寄り添う。
「大丈夫、初めてでも痛くないように、ちゃんと気持ちよくさせてあげるから。」
 慶次はがっしりとした腕で幸村を抱きしめたまま、聞いた女性が皆恋に落ちるという、甘く蕩けるような声で、耳内に吹き込むように直接囁いた。
 ちゅっと軽い音を立てて、黒目勝ちの大きな瞳に今にも零れそうな涙をたたえた幸村の、ふっくらとした唇を愛しげに啄ばむ。
「いやだっ、こんなの、やめてくだされっ、慶次どのっ。」
 動いた途端、とうとうせきを切ったように涙が一筋零れた。
 じたばたと四肢を動かしてどんなにもがこうとも、体格差の慶次が体重をかけて上から圧し掛かっているために、無駄な足掻きでびくともしない。無力な幸村をせせら笑うように、逆に慶次は上体を倒してますます密着してくる。
 左手で器用に、幸村のYシャツのボタンを上から順番に外していき、左右に前をはだけると、クーラーで必要以上に冷やされた外気に晒された白い肌は、寒さと、これから起こることへの怯えからか、皮膚が瞬時に粟立った。その肌を滑るように、右手で、薄い胸板をまさぐるように円状に撫でる。
「なあなあ、幸村。少しは自分で抜いたりするの?」
 端正な顔を寄せ、耳元に体温より数段熱い息を吹きかけながら、楽しげに、慶次はそんな卑猥なことを聞いてくる。
「そんなっ、破廉恥なっ、したことありませんっ。」
「へえ、伊達のこと考えながらとか、したりしないの?」
「そんな汚らわしい事っ・・・。」
 即座に、早口で言い捨てると、幸村は顔を耳まで真っ赤に染めて、顔を背けた。
「そうかな?好きなら、普通だと思うけれど。」
 当然みたく無表情で慶次はそううそぶくと、次の動きに移る。
 カチリ。チー。
 自分たちの会話と息遣い以外聞こえない静かな室内に、ズボンのベルトを外し、チャックを下げる無機質な音が響き渡った。
「ひやあっ・・・っやめっ・・・。」
 ズボンのファスナーを完全に下ろし、トランクスの中に手を滑りこませ、驚くほど熱くなっていた幸村自身に触れた。
「いあああっ・・・ひああっ・・・。」
 無遠慮に触れられた瞬間、幸村の甲高い声がたまらず喉からほとばしり、何度もいやいやをするように頭を振った。
徐々に変化してゆく形に添って、骨太な五本の指を、不規則に強弱をつけて這わせてゆく。裏筋に指をつつーと這わせたり、敏感な先端部分をやわやわと押したりして、その的確な動きで、幸村を徐々に確実に追い詰め、性急に追い上げてゆく。
「ふうううっ・・・いっ。」
 目の前で揺れる、すでに立ち上がりかけている肌色に近い綺麗なピンク色をした胸の飾りに、弾力を持った唇で押しつぶすみたく触れる。舌先で窪みをつんつん突付き、生温かい湿った口内に招き入れると、舌を絡め強く数回吸い上げた。 
 その鋭い刺激に、幸村の体がビクッと感電したかのように波打つ。
「っ・・・ふあああっ。」
 喉から零れそうになった甘い嬌声を噛み殺そうとして、逆に、盛大に漏れさせてしまう。
「幸村、気持ち良いの?」
 窮屈なズボンの中でパンパンにはちきれそうに成長した肉棒を上下にシュッシュッとしごくと、感じたことの無い強い痺れが背筋を這い上がり、腰を完全に砕かせる。
自慰行為さえしたことのない幸村は、その信じられない、自分の意思では逃れきれない気持ち良さにどう対処して良いのかも分からず、首を反って短く喘ぐばかり。
「ひあっ・・・あんっ・・・いやっ・・・なにっこれぇっ・・・っんん。」
「幸村、可愛いよ。」
「あっひああああっ・・・もおおっ。」
 先走りの精液が指に扇情的にねっとりと絡まり、くちゅくちゅと粘着質の音が幸村の鼓膜を犯し、なんとも言えぬ切なさでじんわりと涙が零れる。
 陰茎を握った手を上下に動かす動作に合わせて、吸いすぎて赤くなっていた乳首を舌でコロコロと転がして。
「いっ、だめえっ、もお・・・っ。」
 蕩けたような表情に変わってきた幸村が、あっけ無くてっぺんまで上り詰めようとしたその時だった。
ブルブルブルと、幸村のズボンの尻ポケットから、規則的な振動が起こる。
「ふああっ?・・・。」
 携帯電話だ。
 夢から覚めたみたく、我に帰った幸村が気づいたと同時に、目ざとく慶次もその存在に気づいていた。
 幸村の口を、白濁した液でしとどに濡れた掌で塞ぐと、慶次は、幸村の体重で押し潰されそうになっていた折りたたみ式の携帯を、ポケットからするりと抜き取り、躊躇無く通話のボタンを押した。
「・・・んんんっっ!!!」
 それを目の当たりにした幸村の、声にならない抗議の声が、塞いだ掌の隙間から漏れる。 
―――もしも〜し、旦那?もう今どこにいんのさ?カレー全部食べちゃうよ〜。いいの?
「もしもし、その声は佐助君だっけ?」
―――・・・、あんた、誰だ。
 つい先ほどまで軽快だった携帯ごしの相手の声の質が、一瞬にして変貌した。
―――あんた、誰?
 もう一度、佐助は、トーンを下げた声色で、同じ質問を繰り返す。
「ふうううっ・・・。」
 佐助っ佐助っ、と必死に呼ぼうにも、それは全く意味を持たない息になって、儚く消えてしまう。
「俺、別に名乗るほどでもないけれどね〜、幸村と仲良くさせてもらってんの。」
 からかう調子で続ける慶次は、携帯を肩と首の間で挟むと、自由になった手で幸村を追い上げる行為を再開した。
「んんっ・・・ふうっんんんんーっ。」
 通話の状態で、こんな事するなんて。
 信じられず幸村は体全体で阻止しようとするけれど、腰をよがって抵抗するけれど、全く無駄で、体は実に正直に、欲望を体外に吐き出すよう加速気味に追い上げられてゆく。
「・・・っっんんーっ。」
「けれどね、今、ここにはいないんだよ〜、ごめんねえ。」
 そして突然、慶次は、塞き止めていたはずの手を外す。
「っふああああんんっっ。」
 唐突に開放されたそこから、噛み殺しきれず思わず零れ出た甘ったるい声。それは、携帯の先にいる佐助の耳にも鮮明に届き。
―――旦那っ!!おい、あんた、旦那に何してくれてんだよ。
 声は殺気を帯びている。目の前にいたら、本気で殺しかねない声だ。
「別に〜。佐助君には関係ないから。」
―――今、どこにいるんだ。
「当ててみてよ。そしたら、幸村を返してあげても良いよ。でもその頃には、もう俺のものになってるけれどね。」
―――なんだって。
 慶次の手は、その手の中にあるものを、早急に速度を上げて愛撫して追い上げてゆく。
「あああっ、やああっひいんっ・・・。」
 幸村はもう何も考えられないくらい、欲望の渦に巻き込まれていて、ひっきりなしに甘く喘ぐ事しか出来ない。
 そして、目の前が、閃光が走ったみたく、真っ白になって。
「ひっっいあああああんっっ。」
 弓なりに体を反らせて、慶次の掌の中でとうとう達して、欲望の証をたっぷりと吐き出していた。


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