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小説
その18
 湖の水面に太陽光がキラキラと反射して、幻想的な世界になっている。
 そんな幻のごとき世界で。
しっかりと抱き合った状態で、息が触れ合いそうなほどの至近距離で、優しげな表情でこちらを見下ろしてくる政宗に、幸村の心は、理由不明のズキズキとした痛みを伴って、息苦しいほどに昂ぶってくる。
―――未だに、俺には分からないのだ。
 こんなにも男前で、人間としても沢山の人々から羨望の的な彼が。
 何故、―、戦国武将にすぎない自分に、こんなに執着するのか。
 両手に抱えきれない沢山のものを与えられても、自分には、何もあげられるものは無いのに。忠誠心は勿論、武田にある。武田のため、お館様のためにしか闘わない。一生分の約束事だ。だから、自分には、このちっぽけな心と、体、それしか無いのに。
 切なさが許容範囲を超えて、心から溢れそうになって、幸村は政宗の体にしがみつく。
「あ、あ、あいしあうとは?」
 どもりつつ、いじらしい仕草でつんつんと政宗の着物の裾をひっぱりながら、幸村は尋ねる。
―――自分達は、もう、好意を持ち合っているのでは無いのか?
 何が何だか分からなくて、混乱してくる。
「一体、これから、何を始めるので?」 
「え、まじで?」
 幸村の頭を、その柔らかい髪の毛を梳くように、くしゃくしゃと穏やかな手つきで撫でながら、政宗は酷く優しい声と語りで、逆に聞いてくる。
「幸村ってば、本当にまだ分かんねえの?あんた、いつまでたっても心は初心だな。」
 このエロい体は違うみたいだけど、と、いやらしい手つきでスススーと括れた剥き出しの腰骨あたりを撫でる。
「くんっ!」
 鋭く息を飲んだ幸村は、自分の意志とは反し過敏すぎる体を、一度ビクンッと大きく揺らし、ぎゅっと政宗の着物に縋る。
「1週間ぶりだけど、ホントに体が火照ったり疼いたりしなかったのか?俺は、かなりヤバかったけど。」
 あーんな可愛いあんたをたっぷり見せられたらな、と、政宗は密かに喉を鳴らした。
「ヤバいとは?ま、まさかっ…他のおなごと…っ。」
「だから、もう、しつけーな。しねえって言ってんだろ。」
 うなじ辺りに顔を埋めて、動物的にスンと鼻を鳴らす政宗に、カアアと幸村は頬を染める。
「あんた、すっげえ良い匂いするよな。他の女とは違う、きついお香とかそういう匂いじゃなくて、あんた自身から、甘い匂いがする…。俺、それ、大好きなんだけど…。」
 そうこうしている内に政宗の右手が腰裏にまわって、ぐっと政宗の前部分を押し付けられて、幸村はハッと何かに気付く。
「ちょっ、そんなとこ押し付けないで下されっっ。昼間から何をっ!」
 強く押し当てられた政宗の股間部分が、布越しにでも分かるほどに、熱く滾ってきている。
 政宗の告げた、愛し合うという意味にやっとこさ気付いた幸村は、ひいっと涙目になって及び腰になった。でもその動きに気づいた政宗に、即座に、もう一度、今度はもっと強めに押し付けられる。
「愚問だな。こんな破廉恥なあんたの裸見て欲情しないわけねえだろ?」
「なっ!」
 少し体を離して、しげしげと幸村の全裸の体を眺める。
 陶器みたいな白い肌に、盛り上がった乳房、吸い付きたくなるほどのピンク色の乳首。
 ねっとりと熱い視線で政宗に見られただけで、きゅんっと体の奥が反応してきて、堪えきれず幸村は、ばふっと政宗の胸板に火照った顔を押し付けた。
「前々から思ってたんだけど。女体化すると、なんでそんな破廉恥な体つきになるんだ?猿の趣味?それともあんた自身の願望か?」
「まさかっ!そ、某の願望ではござらぬっ!変化すると、な、何故か…こんな体になるので…。」
 ううう、と、恥かしさのバロメーターが振り切って、語尾が泣き声みたくなってきて尻すぼみになる。
 でも、ハタと幸村は何かに気付いて、政宗の胸から顔をガバッと上げた。
「そ、それならば、某では無く、こっこんな、破廉恥なっ、ことを、出来るならばっ、おなごであれば、だっ…、誰でも、良いということで?」
「あん?」
 嫉妬心が爆発しそうになって、眉毛をハの字にした幸村は今にも泣く寸前の表情で、早口で捲し立てる。
「女体化した某の体が好きと申されるのであれば、その相手は、某で無くとも、良いということにっっ。」
「もう、なーに言ってんだよ。」
 政宗は少し体を折って屈むと、幸村の前髪をかき上げおでこを全開にして、チュッと尖らせた唇でそこを啄んだ。
「最近とんと会ってねえけど、男のあんたでもむらむらするし、勿論抱きたいと思うけど。最初に俺が好きになったのは、何回も言うけど、男の幸村だし。」
「ええええっっ!」
 だから、楽しみが2倍あるみてえなもん?と、政宗は楽しげに目を細めて言ってのける。
「あんただから抱きてえって思うんだよ。何度言ったら分かるんだ。」
「ひあっ!」
 口で言って分かんない奴には実力行使だと言わんばかりに、政宗の無骨な指が無遠慮に幸村のむっちりとした太腿の間に滑り込み。
「俺、まだ何もしてねえのに、なんだよ、これ?」
 敏感すぎる股間に辿り着き、淫らな手つきで指が這わされる。そこはすでに、幸村の愛液で湿っていた。
 ここ、ねちゃねちゃに、はしたなく濡れすぎだろ、と政宗はくくっと喉の奥で笑う。
「おいおい、想像力逞しいな、幸村は。」
「い…っ、あっ…、はっ…、んんっ…んっ!」
 愛液を指の付け根までたっぷり絡ませながら、形に沿って皮を捲るように敏感な部分を刺激されて。
 首を反らして甘ったるい息を吐く幸村の体から、徐々に力が抜けてきて、カタカタと小刻みに震えた。
「もうちょっと足開いて。これじゃあ、可愛がってやれねえ。」
「あっ…、ひあんっ…。」
 言われるまま足を開いた幸村は、ハアハアと呼吸を乱しながら、目をきつく閉じて政宗の着物の肩口に顔を埋める。
「幸村、指、このまま中に入れるぞ。」
 耳元で低く囁かれて、その言葉だけで、ゾクンッと背中がぞわぞわして、体が震えた。
「あ…っっ、んあああっ!」
 宣言通り、ズズッと、2本の指を一気に根元まで突き入れられて、幸村は激しく身悶える。
「ひあっ、ああっ、んんっ…あっ…、あんんっ…、そ、それっ、だ、だめっ・・・あっ。」
 体の中心を走ったその強い快感に、たまらず身を捩ると、ますます指が奥に食い込んできて新たな快感が生まれてきて、幸村を甘く苦しめた。
 1週間触れてもらえなくて、刺激を欲し、疼いていたそこに、念願の指がズルッと入ってきて。
 ぐちゅぐちゅと割広げるように内壁を探られて、それは気を失いそうなほどに気持ち良くて、幸村はひくひくと体を大きくひくつかせた。
「んあっ!んんっ…、もお、やらあっ…。」
 甘い蜜の様な愛液がそこから滴りすぎて、太腿を伝い落ちる。
「ここ、熱くて、すっげ締りが良くて、気持ち良さそうだな。」
「やあっ・・・、もおっ・・・、あっ…、ま、まさむねどのっ…。」
「もう蕩けてトロトロだぜ。俺を迎えるのに準備万端な感じ…。」
 ぐちゅぐちゅと液を掻き混ぜるように、埋め込まれた3本の指が不規則に蠢く。その動きに合わせて、体を真っ赤に火照らせ、悶えさせて、涙をぽろぽろ流し、幸村は感じ切った声で啼くしか出来ない。
 内部に溜まる手放したい熱。されど、体は、もっともっとと新たな熱を欲しがっている。指では肝心な場所に指が届かなくて、幸村は無意識にじれったげに腰を淫靡にゆらめかせる。
「貪欲だな、幸村の体は…もっと欲しいの?」
 甘さを含んだ声で、政宗は耳元で聞いてくる。
「うわああっ!な、なに?」
 与えられる熱に意識を集中させ、完全に身を委ねていた幸村は、いきなり横抱きに抱き上げられて、足が宙に浮いてふらふらと前後にかいて、その足の不安定さに慌てふためく。
 驚きすぎた幸村は、ぎゅっと政宗の首に、首を閉めそうな勢いで、全力で巻き付いた。
「えっ、えええっ?」
「水の中ですると、さすがに足が寒いだろ?」
 政宗はそう告げると、ちゃぷちゃぷと透明な水面を崩し、水を掻き分け岸まで移動する。
 そっと幸村を大木の袂に下ろすと、くるんと幸村を反転させて、腰骨あたりを両手で支えた。
「木に両手を突いて、尻をこっちに突き出して。」
「はっ、はずかし…いっ、こんな格好、いやでござるよ…っ。」
 もう勘弁して下され…。
 消え入りそうな声で、幸村は政宗に懇願する。
「この姿勢だと、最奥まで突いてやれるぜ。」
「も、もおっ!破廉恥すぎることばかり言わないで下されっ…。」
 政宗の発せられる言葉だけで、簡単に翻弄させて、心も体も熱くなってしまう。しかも、この後ろ向きの姿勢では、相手の次の行動が読めないために、与えられる刺激をそのまま受けてしまうことになる。
 突然、むにゅむにゅと大きな白桃みたいな胸を両手で乱暴に揉まれて、幸村は目元を真っ赤にさせて身を捩った。
「ひああっ!…んん、あっ、ああっ…、んあああっ・・・。」
「乳首、こりこりに立ってんぞ。」
 胸を鷲掴みされながら、赤く腫れあがった両乳首を、母乳を搾り取るような動きで摘ままれて、ぞくぞくっと、凄いスピードで快感が背筋を駆け上ってきた。
「んっ…はあっ…、あ…っ、やっ、やら…もお…。」
 小刻みに体が震えてくる。
 力がくったりと抜けてきて、抱きつくように太い幹に縋る。
「可愛いな、ゆき。はやく、ぐちょぐちょに乱れさせてえ。」
 政宗も息を乱しながら、幸村の首裏に、唾液を纏わせた舌をねっとりと這わせる。
「あっ、乱れるなどとっ、そんなっ、こと…しないで…ござるっ…んっ!」
「あんた、我を忘れてるかもしれねえけど、最後、大方、自分から腰振ってんだぜ。」
「そっそんな!」
 反論しようとした途端、液まみれの入り口に、猛々しく育った政宗自身の先端を、ねちゃりと水音を立てて擦られて、幸村は言葉もろともヒクッと息を強く吸い込んだ。
「いれっぞ。」
「んっ…。」
 可愛い幸村、と、夢うつつのように政宗が甘く囁いたのを聞いた次の瞬間、ズンッと重い衝撃が、腰全体を支配する。奥にぶつけるように、一気に埋められて、幸村の体が、びくびくっと政宗の動きに合わせて反応した。
「ひああっ!」
 チカチカと目の中を閃光が走ったくらいの激しい快感に、幸村はたまらず悲鳴を漏らす。
「きっつ・・・。」
「あんんっ!あっ…、ひあああっ・・・、ひあっ!はげしっ…。」
「ここだろ、幸村が好きな部分。」
 内部のへその裏辺りを鬼頭でぐりぐりされて、瞬間、幸村は堪えきれず感極まった声を上げた。
「あああっ!…んあっ!ふああっ・・・。」
「俺以外のやつに、絶対、抱かれんなよ。」
 心も体も命も、全部、あんたの全て、髪の毛一本でさえも、絶対に誰にも奪われんな。
 政宗は低い声で、幸村の耳たぶを舌で弄りながら、そう告げる。
「…一生、俺だけを見ろ、幸村。あんたが他のやつに抱かれたら、俺、そいつのこと、生かしておけねえから。」
 そして、その胸に宿る狂おしく熱い想いをぶつけるみたく、何度も何度も後ろから幸村の最奥へと腰を打ち付ける。
「あんたのこと狙ってるやつら、有無を言わさず、全部殺してしまいたくなる。勿論、石田のやつは、一番、許しておけねえ…。」
「はんっ!あふ…っ、そ、そこお…、んっ、やあ…、んああっ・・・。」
 必死に目の前の木に爪を立てて、目元を赤らめ涙を滲ませながら、腰に直結しそうなほどの感じ切った甘い声を吐き出す幸村の痴態に、その体内に埋め込んだ政宗の熱も限界まで膨らんでゆく。
「今、奥まで、当たってる?」
 幸村の赤く染まった耳たぶを吸い上げながら、政宗は問うてくる。返事を躊躇っていると、政宗は、幸村の細い腰を自分の方へ引き寄せて、痺れるような快感を伴って、ズンッと奥深くまで抉るみたく入り込んできた。
「ひんんっ!…あっ、あああっ…、ま、まさむねどのっ…、あっ…んんっ…。」
 その質量と、内部から燃やされるような熱さに、そして、悶えるほどの気持ち良さに、幸村は我を失って、涙を滲ませながらひっきりなしに嬌声を上げる。
「けど、これじゃあ、あんたの可愛い顔見れねえな。」
 政宗は、そうボソッと呟くと、内部の奥深くに埋め込んでいた自身を一度抜いて。
「ひあ…、も、もう、もう、俺っ…。」
 幸村はその引き抜かれる時の内壁の擦れにさえ感じてしまい、切なげな声で限界を訴える。
 政宗は、小刻みに震え続ける幸村の体を反転させて、グロスを塗ったように赤くつやつやな甘い唇に、愛しげに口づけると。
「ちゃんと、しっかりしがみついとけよ。」
 再び幸村の蕾へ先端をズプと埋めながら、幸村の両太腿を腕で支えて、抱え上げようとする。
「ひあっ、それは…、む、むりっ・・、絶対、無理でっ…こわいっ…。」
 泣きながら腰が引ける幸村は、フルフルと何度も首を横に振る。されど政宗は、有無を言わさず、強引に幸村の体を引き寄せ、抱き閉めた。
「大丈夫、だから俺を信用しろって。あんたは、俺に全部任せて、気持ち良くなってりゃ良いんだよ。」
 俺だって毎日鍛えてっから、と、ニヤリと笑って。
「ひああ!やらっ!やらあっ!…お、奥にい…、ひあっ!」
 とうとう、政宗は幸村の内部に肉棒を入れたままの状態で、幸村の体を抱っこする姿勢で抱え上げる。
 どこまで入り込んでくるのかと思うほど、子宮の入り口まで届きそうに、ズブズブと奥まで犯される。
「ああっ…もお、あんっ・・・、ふあああっ・・・。」
「蕩けちまいそうに気持ちいっ…、…ゆきは?」
「お、おれもっ…、きもち…、いいっ…。」
 微熱のときのようなトロンとした目で、幸村は政宗を淫靡に誘う。普段の幸村とは真反対の色っぽい表情は、政宗の鳩尾あたりに激しい熱を生まれさせる。
「舌、出して。」
 幸村が、透明な液をツツと垂れさせながら、赤い舌を、躊躇いながら出すと、政宗はそれに自分の舌を絡め、そして強く口内へ誘うように吸い上げて、唇は自然に深く合わさった。
「はっ…ふあ…んんっ…。」
「…ふっ…、はあ…。」
 口を開けた2人の間で、舌は唾液を零しながら、くちゅくちゅと音を立てつつ、絡まり合う。
「もう、そろそろ、ちょっと限界。」
 額に玉のような汗をかいた政宗も、眉根を顰めて、切羽詰まった動きで、幸村を貪欲に求め始める。
 抱き上げられた姿勢で、そのままガクンガクンと上下に揺さぶられて、最奥に何度も何度も猛る肉棒が当たってきて、幸村の体は一気に頂点まで駆け登ってしまう。
「ひああんっ!…んん、も、もおっ・・・それっ、やらっ!…やらあっ…、ああっ。」
「おい、締めすぎっ…も、やべえって・・・。」
 切羽詰まった政宗は、今一度、幸村の体の奥深くへ入ろうと、ズグンと激しく打ち付けた。
「ひあああっ、ああっ!あっ、いくっ!いっちゃっ…、あんんっ。」
 瞬間、一度強張った幸村の体は、ひくひくと痙攣させて、そして弛んだ。

☆☆☆☆

 失神した幸村の体を横向きに抱き直して、そのまま腰を下ろして膝に座らせる姿勢をとる。そして、泣いた跡を舐め取って、自分の上掛けを脱ぎ、剥き出しだった幸村の肩に羽織らせる。
「なんか…、また堰が切れちまったな…。」
 腕の中の、おでこ全開で幼く見える幸村を、誰にも見せたことの無い優しい微笑みで見つめて。
 幸村が寝ている間に、馬走らせてもう少し遠くに歩を進めとくかな、と思い、よいしょと幸村を抱え上げた瞬間。
 そこで、カサリと、葉が掠れる音が耳に届いた。すぐ近くで何かが動いた。
―――くそっ!まさか、このタイミングかよ。
 無意識に護ろうとしてか、幸村を抱く腕に力が自然と入った。
 息を潜ませ鼓膜に集中すると、ガサガサと、その草が踏まれる音が近づいてくるのが分かる。
 政宗は幸村を懐に抱いたままの姿勢で、スラリと鞘から長刀を抜いた。
 政宗の鋭い視線の先に現れたのは、長身の彼だった。
「…貴様、私のそれを、返せっ!」


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