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小説
その11
「さーて、どうやって寝るべかー。ベッドに2人で、ソファに1人?風邪ひきそー。お、そうよ。幸村くん家に、俺達3人の誰かがいけばいいんじゃね?」
 良いことを思いついたと、元親は大きく伸びをしつつ、提案する。
「ストップ!駄目だろ、先生の家になんて迷惑っ!お前ら2人とも俺と一緒!分かったか。」3人で雑魚寝、それでいいっしょ?
 慌てた政宗は、速攻で小姑みたく口を挟む。
「俺は、別に良いでござるよ。誰かと一緒にいるの楽しいので。」
「えええっ?」
 即座に政宗は大きな動作で、隣で水を飲んでいる幸村に、視線を送る。
――この2人と―緒に同じベッドで寝るってこと?あなた、ベッドに入ると必ず擦り寄ってきて、甘えるみたいに抱きついてきて、キスしても全然平気っぽくて…それよか、もっとキスしてって可愛く強請ってきたりして…、酔った勢いとはいえ、あげくの果てには簡単に体まで許したり…、俺の理性が効かなけりゃ完全犯されてたって…って、やべえじゃん!絶対、俺以外駄目だってっっ!
 悶々と政宗は、幸村が恥じらいながら服を肌蹴るさままで想像してしまって、あわあわと叫びだしそうになる。
「じゃあ、じゃんけん。」
 もうかなり眠そうな元親は、いつもとは違いテンション低めで、拳を上下に振りながら言ってくる。
「えっ?」
「幸村くんもそう言ってくれてるし、3人でじゃんけんな。勝った人が、幸村くん家にお泊りってことで。」
「何それっ!てめえ、勝手に決めんなよっ!」
「よーし、わしも負けないぞっ!」
「家康、てめえまでかっ」
 まさか家康がノリノリでノッテくるとは思わなくて、政宗は間髪入れずそちらに噛み付く。両方に突っ込まないといけないので、忙しない。
「えー、政宗は、良いのか?加わんなくて、2人でじゃんけんするけど。」
 そう言われてしまうと、しぶしぶみたいに円陣に加わって、拳をぐっと握る。
「最初はグー、じゃんけんぽんっ!」
 本気丸出しの3人は、勢いつけて力強くじゃんけんする。
「んー?」
「あっ!」
「あれ?」
 3人の出した手を、4人でまじまじと見て。
「え?わし?わしで良いのかな?」
 申し訳なさげにグーを見せる家康に、チョキだった政宗は、ううう、と不服そうに唸る。
 まあ何となく元親より人畜無害っぽい家康ならまだましか、と思ったのも束の間、そういえばこいつ、先生のこと可愛いって言ってやがったと、過去の発言を思い出して。
「やっぱり…。」駄目っ、絶対反対っ!と、発言しようとしたのに。
「徳川君、じゃあ行こうか?」
「はい、先生。」
 荷物持とうか?とか、和やかに笑って、優し気な印象の2人は肩を並べて部屋から出てゆく。
「じゃあ、2人ともおやすみー。」
「伊達君も長曾我部君も、おやすみなさい。」
「おー、おやすみー。」
「お…、おやすみ…なさい…。」
 政宗は、その場にフラリと倒れそうになって、玄関の壁にもたれ掛った。

☆☆☆☆
 シャワーから出てきた元親が、一番に見たのは。
―――この隣で2人が…2人が…。
 壁に向かって何だかぶつぶつ言っている政宗に向かって、ええーと、腰引け気味な元親は訝しげな表情をする。
「何、黄昏てんの。そんなにショックなのか?ジュリエットがあっち行っちまったの…。」
「ば、ばっか!ちげーよ!」
 筋肉隆々のジュリエットが、どこに嫁いでも、俺は諸手を上げて祝福するぜ。
「ローテーションで、平等に泊まらせてもらえば良くね?」
 欠伸を噛み殺している元親は、若干めんどくさそうに告げる。
 ぐるぐる1人で悩みすぎた政宗は、振り返りざま、とうとう声を張って聞いてしまう。
「この際はっきり聞くけどっ、元親、お前は、幸村センセのこと、どう思ってだよ?」
 仁王立ちで、政宗は元親に強い口調で問いかける。
「はあ?何を突然。」
 ぐしゃぐしゃとバスタオルで濡れた頭を拭きながら、目を眇める。
 ムムと、政宗は若干怖気づいて、トーンダウンして。
「いや、ただ、何となく…。」そっぽを向いた政宗の語尾は、ごにょごにょと尻すぼみになってしまった。
「じゃあ、お前は?先生のこと、どう思ってんだよ。」
 お返しみたく、元親は質問を質問で返してきた。
「おっ、俺は、な、なんとも思ってねえよ。センセは、友達だよ、友達。」
 平常とは程遠い状態、どもりながらぶつぶつ言った政宗に。
「ふーん。」
 政宗を流し目で見てきた元親は、含みのある感じで鼻を鳴らして、ボソリと呟く。
「俺は、好きだけどな、あの先生。」
「えっ?」
「いつも一生懸命頑張ってて、なんかほっとけない感じする。」
「友達、とか、仲間としてかよ?」
 ぐっと腰の横で拳を握りながら、若干、狼狽えつつ、政宗は会話を続ける。
「友達とかじゃ無くて、恋愛感情の方で。」
「な、何だってっ!」
「だって超可愛いじゃん。だから、今回、せっかくのチャンスだし、お近づきになりてえけど。」
「何言ってんだよ、そんなの駄目に決まってんだろ!」
「お前のもんじゃねえだろ、先生が決めることだろーが。」
 何だか不毛な言い合いになりそうだったので、元親は早々切り上げて。
「それより、さっさと寝ようぜ。」
遠慮することも無くフアアアと大きく欠伸をした元親は、政宗が横になったベッドに、当たり前みたいに隣に滑り込んでくる。セミダブルとはいえ、高校生男子が2人、しかもガタイが大きい元親が1.5人分くらい稼いでいるので、かなりきつい。
「政宗、もうちょっと詰めろよ。」
 ベッドから滑り落ちそうになっている元親が、ぶちぶち文句を垂れる。
「狭いんだよ、でかい図体で。お前、ソファで寝ろよ!」
「お前なあ。こんな大事な時期に、大事な友達が風邪ひいても良いっての?」
 元親に背を向けた状態の政宗は、渋々壁に寄って隙間を空ける。
「まさかお前、センセの家でも、一緒に寝ようって魂胆かよっ。」
 噛み付くみたく言ってきた政宗に、眠い元親は、もうめんどくせえなあ、と顔に書いて。
「…さすがにそれは無えよ。いきなり一緒の布団なんて、それはおかしいだろ。友達だからだろ、こうやって図々しく出来んのは。」
「そ、そうか。」
 やっぱいきなり一緒の布団はおかしかったのかな、過去の自分の行動を今更ながら反省する。
「おい政宗…、お前、一生懸命に隠してるつもりなのかもしれねえけど、残念ながら、分かりやすすぎだぞ。頭隠して尻隠さずってやつ?」
「えっ!な、何の事?」
 何の事って、と、元親は政宗の言葉尻をとって苦笑すると。
「でも、別に好きなら良いんじゃね?でも俺は、お前が幸村センセのこと好きでも…。」
「え?」
「遠慮はしねーけどな。俺だって、センセとつきあいてーもん。」
「えええっ!」
 ガバッと起き上がった政宗に、さみいよ、と、元親は口を尖らせてぼやく。
「だから、幾ら俺達友達だからって、一切手加減無しだからな。お前も本気で来いよ。」


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あきゅろす。
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