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小説
その13
 紺色のカーテンの隙間から、朝日が差し込んできている。眩し気に手の甲でそれを遮りながら、身じろいで。
「えーっと…何時だ。」
 裸のままで寝てしまっていたらしく、さむっと身震いしながら、寝ぼけ眼の政宗は、手探りでローテーブルから取った黒縁眼鏡をかけた。そして、寝癖だらけの髪をくしゃりと気怠そうに掛け上げながら、ベッドの下に無造作に置いてあった携帯で時計を確認した。
「やっべ、もう8時…、学校っ…。」
 と一瞬、欠伸も飲み込んでしまうほどに焦った政宗だったが、って、今日土曜日じゃん、と思い直して、よし、まだ眠れる!と、ガッツポーズで至福を表した。二度寝しようと布団の中でもぞもぞ動くと、柔らかい何かに当たって、政宗は眼鏡の奥で睫毛を瞬かせた。
「あ。」
 半身を起こし、隣をはっきり見ると、白い剥き出しの、女性特有の丸みを帯びた肩が目に入る。それは身じろいで、こちらへ寝返りを打ってくる。すやすやと寝息を立てながら、幸せそうに眠る寝顔が、ひどく幼く見えて。
「もう、可愛いなあ。」
 と、目じりを下げてしまう。
 そして、その柔和な体を包み込むように、そっと肩を抱き寄せた。 
「あったけー。」
柔らかな朝日の中、じっと胸の中の寝顔を眺めていると、脳裏に浮かぶのは、あのバイト先に来てくれる彼の朗らかな笑顔。
「やっぱ、超似てるんだよなあ…。」
 ツンと鼻の頭を突くと、打ったら響くように、んんと、幸村は密かに身じろいだ。
 似てるって言うか、似すぎだろ。最初に会った時、別人に思えなかった。それに口調も性格も似ていて、性別だけ違う。そういうのってあるのだろうか。双子ってそんなもんなんだろうか。
 若干、政宗は混乱してきて、下唇をしきりに舐める。
「そうだ、あの子も…、泊まりって言ってたな。」
―――あの子が石田の野郎と…と思うと。
 なんか胸の中が、この朝の爽やかさとは逆にもやもやしてくる。しこりのように、重苦しい何かが心に残る。
「せんぱ…。」
「な、何?」
 呼ばれて、考え事に夢中になっていた政宗は焦り気味に返事をするけれど、その瞼は開かず、むにゃむにゃと何かを食べるように口元を動かしている。その無邪気な感じに、フウと、苦笑して。
「ごめんな、ゆき。」
 腕の中の彼女をおもんばかって、こんなの浮気だよな、と、力無く頭を振ると、胸の詰まりを掻き消そうとする。
「こんな幸せもんなのに、これ以上望んだら、罰当たりだろ。」
 と、自分に言い利かすようにして、幸村に向き直ると、整った唇を寄せた。チュッと瑞々しい唇を啄んでも、ピクリとも起きない幸村に、政宗はいたずら心がむくむくと湧いてくる。
 勢いよく掛布団を剥ぐって、その裸体を露わにした。幸村は両手を体の前で握る姿勢で丸まって、こちら向きに寝ている。
 眩い朝日を浴びてはっきり丸見えな、綺麗すぎる裸をじっくり眺めて、政宗はゴクリと喉を鳴らす。
「ここ、美味しそうだな。」
 幸村の肘を避けて、桃みたいに大きく白い胸を、むにゅと全体を包み込むように揉んでみる。
「んん…。」
 幸村は、小さく喉を鳴らした。
 今度は舌を出して、まだ柔らかいピンク色の突起を、尖らせた舌先で突いてみる。そして、そのまま口に含んでちゅくちゅくっと吸ってみた。
「ふあっ…あっ…。」
 徐々に幸村の吐息が甘さを帯びてきた。目元を赤くして、んんっと、息を飲みながら、無意識に身を捩じらせている。そんな幸村に、雄の本能を刺激されて、ものすごく興奮してくる。起きないことをいいことに、もっと大胆に動き始めた。
 幸村のくびれた腰を煽情的にスススと撫で、そして、そのむっちりとした太ももの間に手を伸ばす。股間の秘密の部分に手を添えると、人差し指と薬指でぱっくり開いて、中指を内部へ突き入れる。そこは昨日の名残が残っていて、未だ熱を持ってトロトロに解れていた。
「ここ、ぐちゅぐちゅ。やべえ、入れちまいてえ…。」
精液を掻き混ぜるようにクチュリと音を立てながら探ると、容易に指は三本とも飲み込まれ、おへそに近い部分、膣の天井の感じすぎる場所にすぐ指先が到達する。
「ふああっ!」
 ビクンと大きく体を揺らし、幸村はとうとう声を大きく漏らして、目を見開いた。
「な、な、何…っ、あっ、やだ、そこおっ…。」
 激しく悶えながら、幸村は泣きそうに表情を崩す。覆い被さっている政宗に気付くと。
「せ、せんぱっ!…、朝からっ…なにして…っ。」
「え?なんか悪戯心が…。」
 ひあっと、熱い吐息を吐き出しながら、非難するように幸村は涙目でこちらを見てくる。
「もお、やめえっ…んんっ!や、やあっ、ああっ!」
 激しく悶え、じたばたと四肢を動かし始める幸村に、政宗は楽しげに逃げ惑う腰を押さえつけ、ますます弱い部分を刺激し続ける。
「やめたらヤバそうだけど、いいのか?」
 政宗はサディスティックな性癖を覗かせて、そう低く告げる。
当の幸村の体は完全にHなモードに切り替わってそうだけど。
「んん!だって、あさっから、なんて…、はずかしっ…。」
 そう泣きそうに声を上ずらせながら言った幸村は、シーツをきつく皺になるほどに掴んだ。されど、腰はもっと快感を得ようと、貪欲にびくんびくんと揺らめいてくる。
「朝だから良いんじゃねえの、ほら、俺のだってたってっし…。」
 生腰に元気なソレを押し付けられて、その生々しさに、幸村はひっと息を飲む。
「やらあっ!もお…、あっ、そこっ、ああっ…。」
 ツンと立ち上った乳首をいやらしくぺちゃぺちゃ舐めながら、内部をしきりに指で突かれて、その動きと連動して幸村は大きく喘ぎ始めた。
 男前の政宗に胸を口で直接弄られていると思っただけで、身震いするほどの快感が強く襲ってくる。
「も、もう、や、やめっやらってばあっ、あんっ。」
「ホントにここでやめても大丈夫なのか?」
 意地悪く笑った政宗は、本当に、指を内部に埋め込んだ状態で、動きを止めてしまった。
「んんっ…。」
 切なげに悶えた幸村は、じれったそうに体を動かし、泣きそうに顔を歪めて。
「ううう、やだ。」
「やだってどっちが?」
「…ッ。」
 本当は分かっているくせに、それを幸村の口から聞かないと、サドッ気のある政宗的には納得出来ないらしい。
「ううう…っ、やめちゃ…やだあ…。」
 短く荒く息を上げながら、目に涙を溜めて可愛らしく言った幸村に、たまんない、と、胸を躍らせた政宗は、チュッと汗ばんできたおでこにキスを落として。
「じゃあ、今は指だけでいく?」
「な、なっ、ああっ、ひああっ、あっ…!」
 その再び開始された慣れた手さばきに、簡単に幸村は頂点まで追い上げられてゆく。
「あっ、ひんっ!そ、そこおっ…あっ、あああっ…。」
 翻弄された幸村は、甘い喘ぎ声で必死に啼きながら、宙に浮かせた白い爪先をビクンビクンと大きくひくつかせた。
「ひあああっ、もお、らめっ、らめえ!いくっ!」
 一気に上りつめた幸村は、ぎゅっと政宗にすがって、体を強張らせた。
「んんっ…ふあ…。」
 体中を真っ赤に火照らせて、強い快感の余韻にヒクヒクとよがる幸村の肩を政宗は摩り。
 政宗は幸村の内部から指を引き抜いて、自分の精液と幸村の愛液が滴る指を、舌を出してペロッと煽情的に舐める。
「あ…。」
 それをまざまざと見てしまった幸村は、心臓が爆発しそうになって、こちらを熱っぽく見ている政宗から、真っ赤になってパッと背を向けてしまう。
「もお、ゆきってば…。」
 そんな未だ初心な面を見せる幸村に、政宗は愛おしすぎて、後ろから両腕できつく巻き付いていた。
「あの、…その…、先輩は?」
 幸村は恥じらいながらも、尾てい骨辺りに存在感を保って当たっている政宗自身に気付き、小さくぼそぼそと呟く。呼吸器官が詰まるように息苦しく感じるのは、きゅっとますます拘束する腕に力を込められた、それだけが理由じゃないみたいだ。
 好きで好きでたまらない気持が満タンになって、心から溢れ出しそうだ。
「かーわいいな、ゆき。」
 いじらしい幸村に、愛しさを滲ませて、目の前の丸まる背中にキスを落とした。
「後で、お風呂に一緒に入ろ。」
 そん時な、と、蕩けるような甘い声で、耳元で言われて、胸がキュンとときめいてしまった幸村はその巻き付いている腕に、そっと手を添える。
「もうしばらく、このままで、ずっといたいし。」
「お、俺も…。」
 このままでいたいです、と、恥ずかしそうに政宗の腕に顔を隠しながら、小さく小さく囁いた。
「じゃあ、いっとき布団の中で、いちゃいちゃしとく?」
「え?」
 体を反転させて正面から抱きつき直した幸村は、恥じらいながらも、コクンと頷いた。そんな幸村の唇を、微笑んだ政宗は甘く吸い取った。


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