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小説
その8
駅前の商店街にあるドラッグストアに寄ると、何をどれだけ買うつもりなのか、政宗は入り口に積んである買い物カゴをわざわざとった。そして、奥まったところにある少し薄暗い、他とは若干毛色の違うコーナーへずんずんと進んでいき、難しい顔つきで棚を物色し始める。
「え…と、とりあえず、これだろ?」
 久々に来たら、また種類増えてやがるな。日本は少子化進んでるんじゃ無かったか、と政宗はぶつぶつ何か言っている。
「これ?カラフルで美味しそうなパッケージでござるな。」
 その、政宗の手の中にある、ピーナッツチョコレートを思わせる形の紙箱を、お腹が空いてきているのか熱心に見る幸村に、隣に立つ政宗は冷静に突っ込む。
「おいおい、お菓子じゃねえぞ。」
 知らねえぞ、自分が後で、これで、どんなことになるのか。考えもしないだろうな。
 このTHEおこちゃまな幸村が、どんな感じで自分の下で乱れてくれんのかな、と、そのことを想像すると、政宗は自然と、にやつく顔を抑えきれない。佐助に見られたら、残念な男前と、バッサリ称されそうな表情だ。
「えーと、あと、これか…それと、ボックスティシュか。赤ちゃん用のおしりふきとかあってもいいかな。」
 独り言を言いつつ、手慣れた感じで、ぽいぽいとカゴに入れ込んで行く政宗を、不思議そうに眺めていた幸村は、ローションの容器を指さして、思わず問うてしまう。
「これ、調味料か何かで?」
 コホンと、政宗は勿体ぶった感じで、咳を一つすると。
「これとこれも、俺と幸村が、Hすんのに、使うんだぜ。」
 ゴムとローションを指さして、政宗は幸村の耳たぶを摘まみながら、わざといらやしく言う。
「えええええっ!」
 ボソッと耳打ちされた言葉に、ボッと点火したように、幸村は顔を真っ赤にした。おまけに静まる店内で無駄に大きな声を出して、買い物中だったおばあさんに白い目で見られてしまう。今の午後三時という時間帯、一旦客足が落ち着くのかどこか暇そうに、あの人カッコいいよね、と、レジに入っている女性店員達が、政宗をチラ見して噂している。耳をダンボみたいにしてそれを耳ざとく聞いてしまった幸村は、なんかゴメンナサイ、と、心の中で謝罪してしまう。
「こんなもんかな。」
 ドンとレジカウンターに置いたカゴの中身は、いわゆるそれ用の一式。
 さっき政宗のことを噂していたレジの女性が、そのカゴのラインナップと自分達を何度も交互に確認して、なんともいえない微妙な表情をしている。幸村は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまうけれど、政宗は平然とした涼しい顔で財布を出していた。実際は、幸村が正直に顔を真っ赤にしていることで、色々バレテしまっているのだが。


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あきゅろす。
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