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小説
その12
 ベッドに移動してきて、政宗は幸村の顔中に触れるだけの羽毛みたいなキスをする。くすぐったくて、幸村は笑顔になって、政宗と顔を合わせる。
「可愛い、ゆき、大好きだよ。」
「俺も、だい、すき…。」
 幸せすぎて、怖いくらいだ。心の中が、嬉しさであふれている。
「なあ、ゆき、俺達、これから、お付き合いするって形で良い?」
「え?」
 政宗の腕の中でまどろんでいた幸村は、頬を染めて、コクン、と小さく頷く。
「俺、結構、独占欲強いけど、それでも大丈夫?」
「…は、はい…。」
「まあ、嫌って言っても、もう離さねえけど。」
 誰にもやらないという意思表示のごとく、ぎゅっと両腕で力を込めて幸村を抱き閉める。柔らかい胸がひしゃげるくらいに押し当てられて、政宗は、ちょっとドキマギしてしまうけれど。
 でも、何かを思い出した政宗は、突然切り出してきた。
「なあ、石田のこと、どう思う?」
 じっと幸村を食い入るように眺めて、政宗は聞いてくる。
「いしだ…?あ!あのマネージャーさんのことで…。」
 幸村は今日会った鮮明な記憶の中の彼を思い出しながら、嬉しげに話す。
「石田さんは、背が高くて、色が白くて綺麗で、優しくて、しっかりしてて、でも実はお茶目で可愛い人でござるよ。」
 実は22歳なんでござるよ!すっごく吃驚してしまったので…。と、嬉々として三成の印象を沢山上げてゆく幸村に、政宗は幸村の楽しげなのとは反比例して、不機嫌がむくむくと増してゆく。無言で聞いていた政宗は、眉根をひそめて、声を低めに出す。
「…なあ、会ったことあんの?あの後。」
 枕に肘をついた姿勢で、政宗は問うた。
「えっ…いや…その…。」
 しまったというように、幸村は、目線を外して、言葉を濁す。
「これから禁止な、あいつと会うの。電話も駄目だし。」
 幸村の細い体を包み込むように抱き閉めて、甘えるみたいに、その胸に頬を埋めて、政宗は強めに言ってくる。
「な、何ででござるか?なんで会うの駄目なので?」
 電話をする約束をしたのを思い出して、幸村は少し口を尖らせて言う。そんな可愛く突き出した唇を人差し指と親指でむにゅっと挟んで、政宗は言い聞かせる。
「なんか、あいつは駄目だって。それに、あいつは…あんたの兄貴の…。」
 と、そこまで言って、政宗はそっぽを向いて口ごもる。
「俺のあにき?」
「だからっ、俺だけじゃ、駄目なのかよ?」
 意外なほどに子供っぽく、駄々をこねるみたいに言ってくる。
「え?」
 幸村の額に貼りついていた前髪をかき上げながら、綺麗な唇を寄せた。
「あんたのこと、すっげえ大事にするから、俺以外、見んなよ。」
「せんぱ…。」
 んっと半開きだった口に唇を押し付けられて。
「俺も、あんた以外見ないって約束するし。」
「…せんぱい…。」
 裸にパンツ1枚姿の政宗はベッドから体を起こして、床に落ちていた眼鏡を拾うと。
「そーいや、腹減ったな…夕ご飯まだだっけ。」
 今何時だ、と、TVの時計を確認すると、21時をすでにまわっていて。
「今から食う?」
「ん…。」と、お腹の虫が鳴きそうになっていた幸村は密かに頷く。
「アイスあるんだよ、そういや。」
「アイスでござるか。」
 すごく嬉しそうに頬を綻ばす幸村の顔を見て、何だか、胸がキュンと一回り小さくなって、ときめいてしまった政宗は。
「がっついて悪いんだけど、もう1回良いかな?」
「えええ?」
「可愛いゆきを見たら、我慢できないし、俺。」
「ええええっ。」
 ベッドの中で、枕に押し付けられるように、ちゅくちゅくと音を立てて深くキスをされて、幸村は観念したふうに、政宗のがっしりした背中に腕をまわした。


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あきゅろす。
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