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小説
その5
「うわ、嫌なこと…思い出しちまった…。」
 異常な喉の渇きで、目を覚ます。
 いつの間にかクーラーが止まっていた。のっそりと起き上がると、背中に気持ち悪い汗がつたう。汗びっしょりで色が変わってしまったタンクトップの裾を引っ張りながら、今何時だよ、と、ぼやく。
「はっきり、あの時、フラれてんだよな。男は気持ちが悪いって…つきあえないって。」
 そりゃそうだ。普通の反応だよな。と、政宗は、力無く笑う。
 でも、未だ、未練たらしく、季節が過ぎても、自分は幸村が好きなままだ。しかも、自分が気付いて無かっただけで、ずっとずっと昔から、幸村を好きだったのだ。
「でも、何で、男とは気持ち悪いって言ってたのに、俺とのキス、許してくれるわけ?それに、俺なら、Hしても良いって、一体どういうことだよ…。幸村の考えてることが、全く分かんねえ。」
 ぐっすりと寝ている幸村の可愛い唇を、愛おしげに、つつっと形に沿って指先で触れる。
 んん、と、幸村は、くすぐったげに、身じろぐ。
 思い出したように、クーラーのスイッチを入れ直して、ベッドへ横になると、幸村の肩と腰に手をまわして、体を抱き寄せる。幸村は、少しぐずりながらも、ぴったりと身を寄せてきた。
諦めようと思うのに、そんな嬉しいこと言われると、少しでもまだ可能性があるのかな、とか、思っちまうじゃねえの。無意識に俺の心をたぶらかすなんて、小悪魔か? 
「幸村…欲しいんだよ、あんたのこと…全部。」
 そんなの、無理だと、半ば諦めているのに。でも、完全には諦めきれない。
 寝ている幸村に覆い被さって、チュッと半開きの唇に、自分の唇を押し付ける。押し付けるだけじゃ、全然満足出来なくて、舌を忍び込ませて、ちゅくちゅくと幸村の口内をくすぐりはじめる。
「んん…せんぱ…。」
 幸村は寝ぼけながらも、両腕を首に回してきた。
「可愛い…、幸村…。」
 激しいキスに変わり、ちゅっちゅっと音を立て、しつこく角度を変えながら口づけて、舌を絡ませて、ちゅぱと舌を離した途端に唾液がとろりと垂れた、その艶っぽい唇を舐めた。
「ふぁ…、ん…んん。」
 お互いの唇がふやけるくらいにキスをして。
「これは、夢、なので?」
 うっとりしたような、とろんとした目で、幸村は問うてくる。
「うん…夢だよ、…全部、夢だから、伝えてもいいか?」
「ふあ…、せんぱ…い…、何で、ござる?」
 酷く甘えるような、背中がくすぐったくなるような、たどたどしい声で聞いてくる。
「大好きだ、幸村…、ずっとずっと、好きだったよ。」
「ええ?んんっ…ふあ…んっ。」
 甘く口づける合間に、政宗は、心に閉じ込めていた本心を、熱く吐露してゆく。
「すっげえ愛してる、幸村。…幸村に、恋人が出来たら、すっぱり諦めるから。それまでは、好きでいさせてくれ。」
「…せんぱ…、…んんんっ…。」
 穏やかな接吻を受け止めながら、幸村はポロッと涙を一粒零す。
「ど、どうした?幸村。何で、泣いてんの?」
 目元に形の良い唇を寄せると、そのしょっぱい涙の滴を吸い上げる。
「んんっ…やだぁ、せんぱい…離れたくないっ…、もっと、もっと、俺のこと、ぎゅってしてくださっ…。」
「幸村…、怖い夢でも見たのか…、俺はここにいるよ。」
 酷く優しい声で耳元へ囁くと、幸村の背中をかき抱いて、その柔らかい髪の毛を梳きながら、また飽きることなく、甘く蕩けるような接吻を続ける。
「今度、一つになろう。幸村…、あんたの中に、奥深くまで入りたい。」
 息が上がった政宗は、掠れ声で伝えた。
―――体だけでもいい、あんたが、欲しいから。


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