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小説
その12
 お風呂場の洗い場で、幸村の中に自分が出したものを指でかき出して、それでまた感じてしまった幸村自身を、指でイかせて。
「ふう・・・。」
 溜めたお風呂にまったり浸かりながら、体全体を襲う疲労感に、幸村は寝てしまいそうになる。
「ちゃんと肩まで浸かれよ。」
「うううっ。」
 後ろから耳元に囁かれて、幸村はビクンッと背中をまっすぐにする。
 あんなことやこんなことをしてしまっても、やっぱり明るいところで一緒にお風呂に入るのが、一番恥ずかしい。
「とりあえず、今日はもう遅いから、うちに泊まっていけ。明日の夕方送って行くから。」
「は、はい。」
 幸村は素直に頷くと、三成にぴったりくっつきながら、湯船に肩まで沈む。
 クリスマスの終わりまで、その間はずっと幸村を独占して2人で一緒にいられる、と、三成は心の中でほくそ笑む。
「明日の夜から明け方まで勉強すれば、とりあえず大丈夫だろ。」
 顔にお湯をかけながら、頭の中でこれからの計画を練っていた三成はそう呟く。
「勉強…、…そういえば、先輩、京都の大学…。」
「え?」
「…来年の春には、関西に行ってしまうんですよね。」
 幸村は見るからにしょんぼりした。ふと急に思い出してしまって、幸せいっぱいだった心に影がかかる。
「ああ、あれ、止めたから。」
 なんでもないことのように軽く言われて、幸村は思わずガバッと振り返る。
「えええ!!!」
「まだ、化粧、完全に取れてないな。」
 目の下黒くなってると、親指で目の下を優しく擦られる。その仕草がくすぐったくて、片目を、んん、と、閉じてしまった。
「第二志望の方にした。うちの大学部の医学部。一昨日、もう学校には提出済みだ。」
「ええ?そんな何故・・・ランクを下げたので?」
「そんなの、幸村と離れるのが、嫌だからに決まってる。」
 きっぱりはっきり、三成は堂々と言い切る。
「え、そ、そのためにで?」
「え、駄目か、な?」幸村から駄目出しされるのが、一番凹むと、三成は及び腰になる。
「う…っ、うう、嬉しいでござる…っ。」
 嬉しさがこみ上げてきて、またじんわりと泣きそうになって、ぶくぶくとお湯に鼻の下まで沈む。
「ああ…、そういえば、今日、クリスマスイブだったよな。」
 三成はバスタブのへりに肩肘を突き、前髪をかき上げながら、思い出したように言った。
「明日、一緒にクリスマスケーキ、作ろうか。でっかいやつ。」
「え?作れるので?」
「ああ…多分、見よう見まねだけどな。・・・生クリームと苺を買いに行くか。」
「俺、ケーキ、大好きでござるっ。」
 嬉しそうに、幸村は振り返って、無邪気に喜んでいる。
「…・・・。」喜ぶ顔を見られるのは凄く嬉しいけれど、さっきの流れの時よりも、今日一番の笑顔を見せられて、表には出さないが三成は若干凹む。
「…私が傍にいるよりも、そんなにケーキが好きか?」
 照れくさそうに、斜め上を見ながら、三成は、ぼそぼそと口の中で告げる。
「え?」きょとんとした顔で幸村に見上げられて、しまったと三成は自分の発言に海峡のごとく深く後悔する。
「っ、何でも無いっ。」
「嘘でござるよ。」
「え。」
 またぶくぶくとお風呂に浸かった幸村が、こっちに背を向けたままでぶつぶつ言う。
「そんなの、言わなくても、分かっていると思ってたので…。」
「幸村?」じんわり汗が滲んできた顔を擦りながら、三成は幸村の顔を覗き込む。
 その幸村の顔は耳までまっかっかで。
「誰よりも、何よりも、三成先輩が・・・大好きで、ござる…よ。」
 口を尖らせて、恥ずかしそうに途切れ途切れに言った幸村に。
「…・・・。」
「先輩?うわっ!!」
 突然、ぎゅっと胸元をクロスするように、後ろから抱きしめられて、幸村は驚く。
「私も・・・何よりも、幸村が好きだ。」
「先輩。」
 振り返った幸村の、熟れた苺よりも美味しそうな唇を、チュッと軽く音を立てて啄んだ。
「なあ、幸村、もう一回しても大丈夫か?」
 耳元に熱っぽく、その良い声で誘うふうに囁く。
「えええっ?」
 さわさわと、三成の手は既に、幸村の剥き出しの胸にいやらしく回っていて。
「なんか、そんな可愛いことを、そんな可愛い顔で言われたら、…我慢できない…って。」
「……ここで?」
「ここで、今から。」
 返事の代わりに、少し背伸びして、幸村から甘酸っぱい、癖になるキスをした。


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