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小説
その18
連れて来られたのは、誰もいないがらんとした部屋。間取りは自分たちの部屋と同じなのに、人がいないと言うだけですごく広く感じる。
「こ、ここは…。」
「予備の空き部屋。」
「なんで、ここの鍵…。」
「実行委員だから。」
 幸村の質問に簡潔にそっけなく答えると、片手で米俵みたく幸村を支えたまま、パチンと蛍光灯を点ける。
「何故、部屋に戻らずここに?」
 その質問には答えず、行儀悪く足で引きずって部屋の隅から持ってきた座布団の上に、幸村の体をそっと下ろす。
「え?」
 そのまま肩を押され肉厚の座布団に押し倒されて、幸村は大きい目を数回瞬かせる。
 逃げ場を完全に塞ぐように両手を幸村の顔の横に置いた政宗は、未だ逆に怖いくらいの無表情で、言葉を発さない。その息をするのも躊躇するほどの無音の時間に耐え切れなくて、先に幸村が声を出す。
「ごめんなさい、規則を破ったことは…。」
「なんで、あんなところへ行ったんだ?あんた、分かってんのかよ?生徒会役員だっていう自分の立場。そんなに女に飢えてんのか?」
 目を眇めた政宗は、幸村の耳元へ直接囁くように、低い声で問うた。
「え?」
「そんなに、女とやりたかったのかって言ってんの。」
 至近距離の、その見たことの無い冷徹な表情に、背筋が凍える。
「俺っ、女子とそんな…、そんなつもりでは…。」
「あんたに抱きついてた女、あれが新しく出来た好きな女か?」
「え?何を言って…。」
「あんたがそんなやつだとは思わなかった。ホント見損なったよ。俺が過剰に評価していたみたいだな。騙されてた俺が馬鹿みてえ。最低だよ、あんた。そんなに軽い感じだったわけ?女がそんなに好きなら、俺の知り合いでも何でも、幾らでも紹介してや…。」
「違いますっ!!」
 耳を塞ぎたくなるほどにつらつらと酷い言葉を投げかけてくる政宗に、心臓をえぐられるような胸の痛みを感じ、堪えきれず幸村は大きな声で遮ってしまう。
「ちがっ……違いっ、っまっ…。」
 かさぶたになっていた心の傷が広がってゆく。まだ癒えてなかったそこに、塩を塗りたくられているように痛くて、痛くて苦しくてたまらない。どす黒い血がどんどんそこから溢れ出るように、鈍い疼きが止まらない。
「俺…、俺は…、俺が、好きなのは…っっ。」
 必死に声にしようとした言葉が途切れ途切れになって、語尾が震える。
 負け犬のように泣くのは悔しくて、負けず嫌いの幸村は、下唇を噛み締めて涙を堪えるけれど、喉は反射的にひくっとしゃくりあげる。幸村はたまらず両手で自分の顔を覆い隠した。
―――それ以上は、言ったら駄目だ。駄目だってば。
俺は、もう、好きだった事実を、忘れようと、決意したんだから。
1か月では、まだ、完全に忘れられるわけないけれど、忘れようと一歩足を踏み出したはずなのに。
喉が火傷するみたく、熱くて熱くて、痛くてたまらない。ツンと鼻の奥が沁みる。
 熱い塊が胸を渦巻いて、とうとう我慢しきれず、言葉の代わりにポロッと大粒の涙が零れた。
「幸村。」
「ふっ…ううっ…っ…ふえっ…。」
 肩を小刻みに震わせ、声を出さないように静かに泣いている幸村の顔は、涙でぐしゃぐしゃになってきていた。拳で擦っても擦っても、涙は止めどなく流れてくる。
「ごめん…、ごめんな、ごめん、幸村。」
 政宗は、小さく丸まってしまっている幸村の体を、巻き取るようにぎゅうっと両腕で抱き閉める。
 それは酷いことを言って傷つけてごめんなのか、幸村の告白に対してのごめんなのか、何に対しての謝罪なのか分からないけれど、政宗は幸村へ謝り続けた。
 小さく出した舌で、幸村の赤くなった目の縁、紅潮する頬を滑り、しょっぱい液を舐め取ってゆく。前髪をかき上げて、噛みすぎてリップを塗ったみたいに赤くなった下唇を舐めて、幸村の甘い唇を吸い上げた。
「幸村。」
「んん…っ。」
斜めに顔を傾けた政宗は、幸村の口全体を隙間無く塞ぐように、深く唇を重ね合わせた。
「ふ…んんっ。」
 隙間から捻じ込んだ舌で頬裏までねっとりと舐めて、幸村を翻弄してゆく。ちゅくちゅくと幸村の舌を吸い上げて、何度も舐め合っていく内に、幸村の吐き出される息が上がってきて、黒目勝ちの眼がトロンとしてきた。
「ふああ…。」
 幸村の口から舌を引き抜くと、とろりと透明な唾液が、幸村の頬に垂れた。
くったりと幸村の力が抜けてきたころを見計らって、ジャージのチャックを開いて、中のシャツをたくし上げ、胸元を曝け出す。
「あっ…んんっ!」
 平べったい胸の周辺を揉むように摩られ、首筋に強く吸い付かれた鋭い感覚に、幸村は声を小さく発してしまう。
「こんな感じやすい体でどうするんだよ…。」
 幸村は、胸を愛撫されて出てくる、女の子みたいな声を聞かれたくなくて、親指を跡が付くほど噛んで、必死に漏れる声を押さえている。
「んーっ。」
「誰も来ねえから、もっと声出せよ。」
「やっ…あっ…、ふあっ…んんっ。」
 幸村の、力が入らない右手を造作なく奪い取り、畳の上に縫い付けた。もっと我を無くさせようと、汗ばんだ胸の、立ち上っているピンク色の乳首全体を口に含み、ちゅくちゅくと吸い上げ、歯を軽く乳首に当てる。
「ぃあっっ!」
 腰に直結する鋭い快感に、幸村は首を反らして、高い声で啼いてしまう。
 きつそうにしているズボンと下着を取り去ると、そこらに放り投げる。その中は、白い液でベタベタになってしまっていた。
「掴まれ。」
 幸村の手を自分の背中にかけるように促すと、幸村は両腕を差し伸べて、ぎゅっと首に縋るように巻きついてきた。幸村は政宗の耳の傍で、絶え間なく甘い声を出し続ける。
「やぁっっ…も、だ、だ、めっ…あっ…くぅ…。」
 下に滑られた政宗の指先が絡んできて、自身を直に触れられて、狂ったようにいやいやと首を振るけれど、それを擦る手は更に追い上げるように速度を増してゆく。
「ひあ…、いっ、あ…あっ…ひああああっ!」
 いっそう切なげな嬌声を上げ、ビクンビクンと数回身震いして、政宗の手の中でイってしまう。最後の一滴まで搾り取るように、政宗は指を上下に動かした。
 ぐったりと力が抜けて目を閉じた幸村の、半分脱ぎかかっていた邪魔っ気なジャージとシャツを脱がし、胴をひっくり返すと腰辺りを持ち上げて全裸の状態で四つん這いにする。
「や…だっ…こんなのっ、はずかし…。」
「恥ずかしがることねえよ。すっげ綺麗だぜ。」
 ここも、と、剥き出しの尻の曲線をいやらしく掌で撫でると、幸村はビクンッと腰を跳ねさせた。そして、先ほど幸村自身が出した粘ついた液を指先に塗りたくり。
「いっ!」
 信じられないところを指が掠めて、幸村は息を飲む。
「力抜けよ。傷つくぞ。」
「いたっ…いっ…んっ…ぁ。」
 政宗の前で丸見えな秘部に、つぷっと第一関節が入り、探るようにゆっくりゆっくりと、指が埋め込まれてゆく。
「ん…ふあ…んん…。」
 うっすら汗ばんだ額に、異物感からか皺が寄る。
「く…ふう…はあ…あ…。」
 政宗は、ゆるやかに長い指を蠢かす。
 もっと奥を探ろうと、中でクッと折り曲げられた。ある箇所を掠った瞬間、幸村の腰がビクビクッと大きく跳ねる。
「あ!…やっ…何か、いっ…変っ…ひあっ!」
 頭の芯がぼんやりしてきて、目の前が霞んでくる。意識をもっていかれないように、ぎゅぎゅっと拳を握った。
「ここ、感じてきた?」
 政宗は、その幸村の声の甘さが増した箇所を、中指の腹で小刻みに擦る。
 その底が見えない激しすぎる快感に怖くなってきて、細い腰を逃げるようにくねらせる。すると、思わぬ角度で、ますます内壁に指を擦りつける形になって、体を跳ねさせた。
 先走りの液がぽたぽたと床に垂れる。
「あっ…ふあ…っぃあっ…あんっ…んーっ。」
「かわいいな…ホント…。」
 政宗は、紅い舌を出して、ペロッと舌舐めずりをする。
 ぐちゅぐちゅと水音を立てながら、内部で割り開くように指が蠢く。
「あっふああ…っあ…んぁっ…やっ…ああっ…。」
 声を聞いているだけでイってしまいそうなほど、艶のある腰にくる声で、無心に幸村は喘いでいる。
「ぃあ…っ。」
 内部を蹂躙していた指が、内壁をもっていきながら、一旦抜かれた。
 ホッとしたのも束の間、政宗は幸村の太ももを合わせると、その間に、はちきれんばかりに成長した自分の肉棒を挟ませ、尚且つ、幸村の自身に擦り付けた。
「このまま太ももぴったり合わせとけよ。」
 右手はお互いの肉棒を重ね合わせるように持ち、左手は手を前に伸ばして、幸村の痛いほどに立ち上った乳首を摘まんだり、指の腹で転がしたりして愛撫している。
「いあっ…っこすれ…てっ…あ!…ふああ…。」
政宗は腰を動かし、疑似本番のように幸村の太ももの間で自身を擦る。お互いの精液で政宗の掌はぬめってきて、掴む手が滑ってくる。
「ぃあ…あっ…んんっ、もっ…あっ、ひあっ…。」
 政宗も限界に近いのか、幸村を煽る動きが早まってゆく。
「…く…、幸…、」
「あ…っ、んあっ!あ…、もおっ、だめ…っ、あああ!…っ。」
 2度目の絶頂に達した幸村は、自分を支えていた腕が力を失って、ガクンと前のめりに滑るように畳へ倒れ込んでしまう。
「幸村?」
 目を閉じた幸村の頬には、乾いた涙の跡が数本流れていて、政宗はそっと上唇でなぞる。そして、ぐったりと動かない幸村を、壊れ物を扱うように両手で抱き上げた。
「ごめんな…幸村…、俺…本当は…。」
 その後の言葉を噤み、辛そうに眉根をひそめ再び小さくごめんと謝った政宗は、失神してしまった幸村の体を、ぎゅっと切なげに抱きしめた。


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