[携帯モード] [URL送信]

小説
その15
 電話の相手は、2年生のクラス委員だった。
「で、何だよ、緊急事態って。緊急じゃなきゃ許さねえぞ、俺の安眠阻害した罪は重いぜ。」
 政宗は寝癖が付いてしまった髪をかき上げながら、大きな欠伸を一つ。
大の字になって気持ち良さそうに寝ている隣の元親に、ふつふつと怒りがこみ上げて完全に八つ当たりだと分かっていても、蹴りたくなる心境だ。左手の腕時計を確認したら、もう夜中の1時を回ってて、ますます気分がどんよりした政宗は、チッと舌打ち。
明日(あ、もう今日か)もいろいろ雑用があるってえのに、勘弁してくれよ、と泣き言を言いたくなる。
「え、2年生男子の中に、女子の部屋に行ってるやつがいるって?別にそれぐらいはいいんじゃねえの?許してやれよ。子供さえ出来なきゃ…。俺、疲れてっから、寝ちゃダメか?ちょっとした騒ぎになってセンセが見回りに行きそうって…、まあ、見つかったら停学だよな。わーったよ、はいはい、どこの部屋?」
 肩に携帯を挟むと、生徒手帳を鞄から出してメモをする。 
「で、その夜這いの主犯の名前は?」
『俺のクラスの、あ、俺、2−Aなんスけど、前田慶次と、あと…何人か…ですね。』
「えーと、2−Aの前田、慶次…。他に数名…って。」
 ―――まてよ、2−Aの前田って…、確か幸村の友達。
 嫌な予感が少しだけ頭をよぎって、政宗は、そんなまさかと首を横に振って、打ち消す。
―――あの幸村は、まさか、そんなことに足突っ込むやつじゃねえはず。何より、今時天然記念物並みの「ド」が付くほどの純情野郎だ、天然培養の純真無垢みたいな…。
「あとは、…もしかして、その友人の毛利ってやつか?」
『あー、あいつは、そういうことには、絶対のらないですからね。でも、もう一人もまさかそんなことになるヤツだとは…。何でわざわざ、生徒会長に連絡したかって言うと…。』
 電話の相手の次の言葉に、眠気が完全にぶっ飛んだ。
 電話をプツッと切った瞬間、政宗は、苦虫を潰したような顔をして舌打ちをする。
「あの馬鹿…ッッ。」
 ジャージの上着を引っ掴み、部屋を飛び出した。


[*前へ][次へ#]

15/46ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!