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小説
その6
 政宗はパーテンションで仕切られた向こう、ベッドがある方へずんずん無遠慮に行ってしまう。幸村は、保健室自体怪我以外では来たことが無いので、見知らぬ場所に来たみたいに若干入り口で躊躇する。ネクタイを緩めつつ政宗は勝手知ったるといったふうに、窓際のベッドを陣取り、エアコンのスイッチを入れ、戸棚とかも開けたりしている。
 幸村は諦めたように溜息をつくと、政宗が座っているベッドの隣のベッドに腰を下ろし、借りてきた猫みたく大人しくしている。
「何ボーっとしてんだよ。ほら、こっち来いよ。」
「え。」
 政宗は体を伸ばして、幸村の手首を掴む。
「さみいから、こっちで一緒に寝ようぜ。」
「え?一緒に??そんなっ、む、無理でっ!!」
 あわわわわと、両手を振って、幸村は慌てふためいてしまう。
「何誤解してんの?男同士だから良いだろ、別に、なんか間違いが起こるわけねえし。」
「まあ、それは、そうでござるが…。」
 顔を赤らめて、幸村は口ごもる。そう言われてしまっては身も蓋も無い。変に意識する自分が変みたいではないか。
ほら、と強引に腕を引かれて、隣のベッドに雪崩れ込むように移動する。
「そのまま寝ると制服皺になるな。シャツとブレザーとズボンは脱いで、そこの椅子の背にでもかけといた方が良いぜ。」
「ぬっ脱ぐ!?」
 その単語にも大きく反応して、背筋が背中に物差しを入れられたかのごとくシャキッとなってしまった。政宗は掛布団を剥ぎながら、いちいち過敏に返事する幸村に、からかい交じりに言ってのける。
「なーに、恥ずかしがってんの?あんた、実は女なのか?」
「ちっ、違いますっ!!!俺、恥ずかしがってなんてないでござるっ。」
 根っからの負けず嫌いの性格が顔を出して、幸村は勢いよくネクタイを引き抜くと、ブレザーの上着を脱いだ。続いてシャツも脱ごうとしたけれど、手がかじかんでいるうえに不器用すぎる幸村は、もたもたと第一ボタンでもたついている。
「手伝ってやるよ。」
 すでに手際よく脱いで、下着代わりの黒のタンクトップとボクサーパンツ姿の政宗がこちらに寄ってくる。その均整の取れた体に、男の幸村でさえ見惚れてしまう。シーツの上に向かい合って座った政宗が、お母さんみたいに幸村のシャツを脱がして肩を肌蹴た。恥じらう幸村は体全体を火照らせ、俯き、大人しくされるがままになっていた。
 政宗が動くたびに仄かにコロンがふわりと鼻腔をくすぐる。嫌味の無い、柑橘系の香り。
 その香りに酔ったみたいに心臓をばくばくさせながら、この甘辛い拷問のようなひと時に、(早く終われ)、と幸村は心の中で念仏のごとく唱えていた。
 Tシャツとトランクス姿になった幸村は、見られたくないのか、掛布団とシーツの間に即座に滑り込む。
「じゃ、さっさと寝ようぜ。」
 携帯のタイマーをセットしていた政宗は、幸村の行動を見て苦笑交じりにそう言うと、ギシッとベッドを軋ませながら体制を整えた。
 一方の幸村は、政宗に背を向ける形で横向きに横になり、ダンゴ虫みたいに背を丸くした。
―――こんなの、こんな状況でどうやって寝ろというのだ。
 ぎゅううっと瞼をきつく閉じて、何とか寝てしまおうと幸村は思ったのだが。
 狭いベッドの中、互いの呼吸音が聞こえる中で、ますます目が冴えてきてしまい、意識はシーツが擦れる音にまで過敏になる。
「落ちるだろ、もっとこっち寄れよ。」
 政宗は幸村の腰を引き寄せ密着し、背中からぎゅっと抱きしめる格好になる。
「ああああ、あのっちょっと、これは…っ。」
 距離感0の、あまりの近さに耐え切れず、もぞもぞと居心地悪げに幸村は体を揺らす。
「眠れねえの?子守唄でも歌ってやろうか?」
 クスクスと笑い交じりに、耳の中へと声が直接吹き込まれる感じに反応してしまった幸村は、ビクンッと背筋を伸ばす。
「あ…っ!?」
 尻の尾てい骨あたりに、信じられない、何か固いものがあたる。同性同士、これが何かなんてこの状況では、見なくても分かってしまう。
「あっ、あまりくっつかないでくれませんか。なんか…っっ。」
「あーあ、あんたがあんまり動くから反応しちゃったじゃねえか。」
「そんなっ…っ!」
 後ろから抱きついた姿勢のまま、政宗の両手が前に回り込む。長い指が、幸村のそれにトランクスの布越しに絡まってきた。瞬間、幸村はくっと息を飲む。形がはっきりと分かってしまうほどに興奮していることが、政宗に伝わってしまって、恥ずかしすぎて逃げ出したくなる。
「ふああっ!…ちょっっ!…。」
「あんたも、たってるじゃねえか。」
 敏感な首筋に、温かい息があたってくすぐったい。
「こっち向けよ。こんなにたたせて辛いだろ、楽にしてやる。」
「ひあ…っ」
 くるんとあっけなく一回転させられて、政宗と向かい合う体制を取らせられる。
 トランクスから熱くなったそれを取り出された。ひんやりとしている外気にあたって、ますます敏感に反応し固くなる。政宗は何を思ったのか、持っていた幸村自身を、自分のそれにぴったりと重ねて、手を上下にスライドさせ始めた。
「だ、だめでっ…さわっ、たらぁっっ、あああっ。」
「何だよ、その可愛い声。」
 幸村はその快感の強さに、ゾクンッと鳩尾辺りに、熱の塊が落ちてきた錯覚に陥る。
「やべえ、何か、まじで興奮してきた…。」
 ペロッと舌で自分の唇を舐めた政宗は、体の力が抜けてきた幸村の、その邪魔っ気な下着を取り払って、ベッドの下に放ってしまう。蛍光灯の灯りの下、幸村の下半身が完全に露わになる。
「なんかそそるな…すっげえエロい…。」
 ぐちゅぐちゅとお互いに放出した白濁した精液で、政宗の手もしとどに濡れる。
 政宗は親指の爪で幸村の先端の割れ目をぐりっと刺激する。途端、とろっと液が溢れてきた。
「あっ、いあっ…やだっあっ、ああっ…。」
―――そんなところ、兄弟のように育った佐助にさえも触られたことが無いのにっ。
 幸村の羞恥心の針はマックスを振り切ってしまっていた。もう、恥ずかしすぎて、頭がどうにかなりそうだ。しかも自慰行為を最近してなかったせいで、簡単にいってしまいそうになる。この耳障りな、女の子みたいな声を抑えたいのに、我慢が全然効かない。
「どろどろ液が出てきてるけど、たまってたのか?」
 政宗はもっと感じさせようと、幸村のTシャツをたくし上げて、ピンク色の胸の突起を口へ含み舌の上で転がす。
「んあぁっっ!ひあ…ああっ、んんっ…あっあっ。」
 瞬間、ますます甲高い嬌声が、喉から絞り出された。
 自然にあふれる涙と、ぼやけてきた意識で、幸村の視界は朦朧としてくる。
 どさくさに紛れて、政宗の指は太ももの奥の秘部に届く。垂れた精液が潤滑液代わりになって簡単に指は第二関節までずぷっと飲み込まれていった。
 信じられない場所を探られて、幸村は顔を真っ赤にして腰を跳ねさせる。
「そ、そんなとこ、やだっ…!あっ、だめだってえっ…んぁっ。」
 逃げようと退ける腰を体で抑え込んで、幸村の柔らかい内壁を割り開くように探る。
 肉棒と、乳首と秘部を同時に刺激されて、幸村はひいひいと悲鳴のごとく喘ぐしか出来ない。
「…ふ…、でも、良いんだろ、腰、揺れてるぜ。」
敏感な乳首を舌で嬲りながら、幸村へ言葉で攻め立てる。
「あああっくっんんっ…ふああっ…っ。」
「ふ…っ、はあ…、こっち向けって、キスしようぜ。」
「んんっ…ふぁ…んんーっ…。」
 政宗の上級者のキスになんとかついて行こうと、幸村は必死になって舌を出す。
「キス、少し上手くなったんじゃないか、前よりは。」
「んあっ…あっ。」
 限界に近づいてきたのか、政宗の手の摩る動きも加速度を増してゆく。手の中の二本の陰茎はもう爆発寸前にまで腫れ上がっていた。
「あっ、ああっんあっっ、いあっぁあっああーっも、だめっ、だめでっ。」
 切ない涙交じりの喘ぎ声は、ひっきりなしに反らされた幸村の喉から漏れ出る。
 幸村の顔は、溢れ出た涙と唾液でぐちゃぐちゃになっていた。
「っくっ…。」
「も、いくっ、いっちゃっ、ああああーっ!」
 一段と大きい声を漏らした幸村は、達した瞬間、ひくひくっと体を数回痙攣させる。
そして、ぐったりとベッドへ倒れ込むように横になってしまった。
「ふう…、って、ちょっと暴走すぎたかな…って、おい、幸村?」
 政宗は手に受け止めた2人分の精液を、しゃーない、という感じで、とりあえず自分のタンクトップで拭きつつ、隣へ視線を向けると、幸村は微動だにしない。どうやら、失神してしまったようだ。
 政宗は、幸村の、その涙の跡を指先で拭いながら、ふうと、深く長く溜息をついた。
「…たかが、外れちまった。」


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あきゅろす。
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