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小説
政宗さんマネージャー編☆ダテサナ後篇☆
 目を伏せた政宗は、男性のわりに綺麗で長めな指先でかけていた眼鏡を外し、ガラス製のローテーブルの上にカツンと置いて。
「とりあえず、シャワー浴びて来いよ。」
「…、え?」
 らしくなく少し緊張気味に早口で言った政宗の提案に、一瞬答えに間が開いてしまった。


 バスタオルを両腕で抱きしめた幸村は、ぺたぺたとペンギンみたく歩き、政宗に言われるままに風呂へと入るため、まずは脱衣所につま先から足を踏み入れる。フローリングからタイルへと移動すると足裏への感触が微妙に変わった。ふと下を見てみても几帳面な性格なのか、髪の毛一つ落ちていなく床はつるつるだった。風呂場を覗くと、幸村は「すごい」と感嘆の声を上げる。黒を基調にしたスタイリッシュなデザインで、バスタブは政宗でも足を伸ばして入れそうなほど広くて。おまけにテレビまで着いていたからだ。
 とりあえずタオルを洗濯機の上に一旦置くと、まず白いブラウスの第一ボタンに指をかける。緊張しているのか、指はかじかんでも無いのに上手く外せなくて、なんで手間取っているんだと自嘲気味に笑いが零れてしまった。
ミニスカートも脱いで足元にストンと落とすと、続いて、前かがみになって後ろに手を回し、ブラのホックに手をやる。軽い締め付けから解放されて、ほうっと小さく息を吐いた。
 ふと何気なく振り向きざま目線を流した先に、壁に立てかけ備え付けられている大きな畳一畳分くらいの姿見へ自分の体が映し出されていて、ううっと息を飲む。見慣れている自分の体、とは言っても、実際はあまりお目に描かれていないそれ。普段、夜には本当の男の体に戻るからだ。通学鞄の中に隠してあるコンパクトを取り出し秘密の呪文を唱えると、いつでも変わることは可能だ。
何より女性特有の丸みを帯びたお尻が、突き出した姿勢でバンっと視界に入ってしまって、あわあわと取り乱してしまう。十分すぎるくらいに育ってしまった二つの胸、白く透き通るような背中、そして首まで赤くなってこっちを見ている幼い顔つきの女の子な自分と目が合ってしまって、それは紛れも無く自分自身のはずなのにますます恥ずかしくなって体温を上げるばかりだ。
 とりあえず脳裏に焼き付いてしまった自らの裸を意識から遠のけようとブンブンと首を振り、慌てて浴場に飛び込んで行って、蛇口を捻って噴き出たシャワーを武者修行のごとく頭から勢いよく被ってみる。最初冷たかったのが、突然熱くなったりと、その度に、幸村はうわっとかひやっとか小さく悲鳴を上げている。そして適温に温まったシャワーを肩から存分に浴びながら、少し落ち着きを取り戻した幸村は、ぶつぶつと独り言を口内に漏らしていた。
「何で俺…、人ん家で風呂に入ってんだろ…。」
(後のことなんて全然考えていなかったけれど、この状況は、ちょっと、いや、かなりヤバイでござるなあ…。)
 自分の有りっ丈の知識で考える先にはこのままマネージャーと…と、そこまで考えて、幸村は、うわうわと、また再び水滴を飛ばしながら忙しなく首をぶんぶんと振りまくる。
 自分の身に起こるであろう未知の体験への恐怖と同じくらいに、幸村自身より正直な胸がドキドキと高鳴ってきて、何かしていないと落ち着かなくなってきて、両手で頬が上下に動くほど顔をゴシゴシ洗ってみたりする。
ポンプタイプのシャンプーを一押し掌に取り、くしゅくしゅと髪を粟立てると、辺りに柑橘系の良い匂いが漂い始めた。髪の毛の先から泡が落ちるのを目で追いかけつつ、また再び悶々と考えて込んでいたら、突然に視界がふらついた。
「うわあああああああああっ。」
 瞬間無防備だった体がふわりと踊り、つるんと踵がタイルで滑って、重力に従って幸村はドシンと振動を立てて尻餅をつく。その隣の部屋まで届いた激しい振動に、驚いた政宗は、ドンドンと入り口の扉を壊れそうなほどに激しく叩く。
「幸村っ。」
「ひあっ。」
 慌てた形相でシャワー室に飛び込んできた政宗に、意外にがっしりした腕でぎゅっと強く裸体をくるむように抱きしめられて二重に驚いてしまった。
「大丈夫か?泡でこけたんだな、どこか怪我してないか?」
「うう…マネージャー…大丈夫で…。」
 背中を丸めている幸村を安心させようとしてか酷く優しい声で、政宗は宥めるように、耳元へと直接声を吹き込んだ。
「びっくりしたでござる…。」
 政宗のブラウスに頬を付け、その腕の中で幸村は、瞼を閉じてぽつりと安堵に似た言葉を漏らした。 
「おい、その胸反則、大きすぎるだろ…。」
「え…っ。」
 頭の上でボソッと呟いた政宗の、不躾な視線が、抱きつきすぎて政宗の胸板でへしゃげてしまっている乳房に流れているのを知って、幸村は瞬間湯沸かし器のごとくカアアアッと顔を真っ赤にした。
「は、破廉恥い…っ。」
 声を発すより早く、目にもとまらぬ早業で政宗の頬を張ろうと上段に構えた掌が、それに上回る瞬発力で制され、政宗の一回り大きい手の中に吸い込まれる。政宗はその簡単に手折れそうなほど華奢な手首を拘束したまま、上から圧し掛かる姿勢で唇を奪った。
「…んんーっ。」
「隠すなよ。」
「や、やだっ…。」
 逃げようと身をよじる幸村の体へ、政宗はますます体を密着させる。
「幸村の全部を俺に見せてくれ。」
 背を逆エビに反らし、逆に胸を突き出す形になってしまって、幸村は狼狽えまくった。政宗は裸の幸村の背中に手を回し、噛みつくように深く唇を奪う。呼吸のために薄く開いた唇の隙間から舌を差し入れて、何度も何度も擦り合わせる。入り込んできた政宗の舌はかなりの場数を踏んだのか慣れた様子で口内を蹂躙し、初心すぎる幸村を翻弄した。
「んっ…んん…ふあっ…んんんっ。」
 止めどなく降り注ぐシャワーの打ち付ける音と、口同士を何度も合わせる音、荒い吐息が、室内に反響して耳に届く。
「胸もいいけど、赤くなったあんたの顔が一番美味しそうだ。」
 ちゅっと、啄む音を立ててフレンチキスをして、また深く合わせて飽きることなく、赤く腫れてきた唇を吸った。
「…あんたの唇、甘いな。ずっとキスしてみたかったから、嬉しい。」
 政宗は、体育座りで座っている幸村の足の間に手を伸ばして、予測して無かった場所、股間にある秘部に無遠慮に中指と人差し指で触れてきた。
「あっ…。」
「すっげ熱くなってる、ここ、感じてるのか?」
 政宗はその部分を視姦するかのごとき熱い視線で見つめ、耳たぶを舐めながらねっとりと囁く。
「んんーっっ。」
 政宗の指の腹がその突起部分をくりくりと捏ねくり、触れた途端、今まで感じたこと無い、つま先まで走った鋭い快感に、体を震わし涙目で幸村は悶えた。
「な、何、今のおっ…。」
「幸村、もしかして初めてなのか?」
「え?」
「俺が、最初?」
 動きを一時停止し、真剣な顔つきで告げてきた政宗の、その言っている意味が分からなくて、きょとんと目を丸くした幸村に。
「そっか。」
 政宗は顔をくしゃりと破顔し、酷く嬉しげに微笑むと、はあと感慨深げに息を吐いて、またぎゅっと幸村の頭を懐に丸めこむ。
 再びそろそろと指を再びそこに伸ばし、長い指先を駆使して、繊細な動きで刺激を始める。
「ここ、気持ち良い?」
 少し深めに中指を突っ込み、ぐちゅっと円を描くように動いて膀胱近くを小刻みに探られるそれに、幸村は快感が深すぎて怖くなってきたのか、体を小刻みに震わし腰が引かれる。それでも政宗は逃がさまいと覆い被さって、もっともっと強い刺激を与えようと、更に敏感な部分を往復し擦り続ける。その逃れられない苦しいほどの快楽に、幸村は翻弄され、のたうつ。
「ああんっ、や、やだっ、変っ…やだあっ。」
 短く喘ぎ声を上げる度に、連動するかのように指の動きが加速する。
「あっああっあんっ…だめえっ…ふあっ、もお、変っ…変になる…。」
 目の奥に鋭い閃光が走る。頭の中が真っ白になってきて、幸村は政宗の肩に爪を立てる勢いですがった。 
「は…あああっいやっ…いやあ…だめえっ…ああああっ。」
 浴室に甲高い声がめいっぱい反響して、幸村はビクビクンッと数回体を痙攣させた。

☆☆☆☆
 リビング同様生活感の無いショールーム並みに綺麗な寝室に移動し、1人用には大きすぎるキングサイズのベッドに寝かされて、裸の幸村は隠れるように手身近な毛布で春巻きみたく包まっていたが。
 案の定にそれはあっけなく剥ぎ取られて手が届かないほど隅に投げられて、心細くなった幸村は胸元に手首をクロスし、両目をぎゅっと閉じた。
 政宗が、幸村の呼吸と共に上下する大きなふっくらとした胸に掌を被せた瞬間、幸村はんんっと息を飲む。それに気を良くした政宗は、ゆるゆると強弱をつけて感触を楽しむふうに揉み始める。白い首筋から鎖骨に添って政宗は唇をゆるゆると滑らせた。ちろちろと舌先を出し入れして、少し前歯を当ててみたりして刺激する。その間も、手の中にある乳房を愛撫し続けていた。
「ふあ…んーっ。」
 鼻にかかったような、聞いたことの無い高い声が出て、幸村は唇を噛んで堪えようとするけれど、上手くいかなくて、堪えようとすればするほど腰に直結する甘ったるい声が出てしまって、政宗を密かに喜ばせた。
 左手で胸を強く掴んだり、乳首を摘まんだりして弄びながら、次のステップへ進もうと目的を持って右手は下へと伸ばされた。
「…いたっ…。」
 立てた両膝の間に手を差し入れられて、先ほど指でいかされた部分、花弁に指を這わせられて、幸村は引きつった声を出した。
「痛いか…。」「ん…。」
感じる鈍い痛みに眉間に皺を寄せた幸村は息を詰める。怯えたせいか、すっかりそこは潤いを無くし乾いてしまっていた。
「ちょっと待ってろ。」
 そう言葉を残し一旦姿を消した政宗だったが、リビングから帰ってきた彼の手には何かドレッシングの容器のようなものが握られていた。
目を閉じて浅く呼吸をしていた幸村は、どろりとねばりを持った液をたっぷりとその部分に感じて、酷く驚いて両目を極限まで開いた。
「ふあああ…?」
 くちゅっと水音が鳴った。
ビクンッと体を感電したかのごとく震わせて、幸村は背骨を逆エビに反らせる。
「んあ…んんっ。」
 浴室では入り口付近を刺激していた指が、今度はズボッと付け根部分まで深く突っ込まれる。内部を割り開ける感じで二本の指は蠢き始めた。
「あ…あんっああああっ、やんっ…。」
 感じ切った声が止まらない。
 政宗は、幸村が動くたびに目の前でゆらゆら揺れている乳房の中央、ちょこんとピンク色で出っ張っている突起に舌を絡め、強めに吸った。
「だ…だめっ…舐めちゃ…だ…っ、いや…やあ…もお…変になっちゃっうう…ああああっあんっ。」
 弱い部分、胸も秘部も同時に刺激されて、泣きそうに幸村はやだやだと喘ぎ続ける。
 時間をかけて解され、三本入れられた指もスムーズに動くようになった。幸村はまたもや達してしまいそうなほど感じてしまい、細い腰を淫らに振るわせ、ひっきりなしに喉の奥から声を出しながら悶えている。
「んあ…っ、あああっ、あんんっ…も、もおだめっだめっ…ああっ…。」
 ずずっと音を立てて焼けそうに熱い内部から、一気に指が抜かれた。
 体中を強張らせていた幸村は、腑抜けたように何故と問う顔で政宗を見てしまう。
「もう、入れていいか?」
「い…入れる?」
「…俺のを、あんたの中に入らせてくれってこと。あんたの初めてを俺にくれる?」
「……。」顔を耳まで真っ赤にさせた幸村は、無言でコクンと頷いた。
 政宗は着込んでいた服を脱いで、幸村に体重をかけないようにそっと覆い被さる。きめ細やかな肌が触れ合って、このまま触っていたいほど心地良かった。
 真っ赤になった顔を両手で隠した幸村の、その両足を大きく広げて腰を数p浮かせると、そのぱくぱくと開閉し待ちわびる中心に、痛いくらいに固く張ってしまった自分自身を宛がう。
「…んんっ。」
 ゆっくりと亀頭部分から腰を進め埋め込んで行き、出っ張った部分が入った時点で幸村はその身を真横に裂きそうな痛みに小さくうめき声を上げて、生理的に涙を流していた。
「止めようか?」
 中途半端に入った状態で動きを止め、額にうっすら汗を滲ませた政宗は、薄く微笑んでそう囁く。
 そんな政宗に幸村はブンブンと横に首を振ると。
「だいじょ…ぶ…だから、全部、入れて下され…っ。」
「幸村…。」
 やせ我慢をしているだろう幸村の、その健気な姿に胸を打たれた。
「お願い…んんっ…。」
 政宗は唇を合わせてくすぐるように舌を絡めた。幸村も拙いながら、一生懸命その動きに合わせる。
「んん…。」
 キスに夢中になっている幸村の意識がそちらに向いている間に、政宗はゆっくりゆっくり腰を進めていく。本当は一思いに一気に入れてしまった方が、くらくらするほど、蕩けるほどの凄い快楽を得られるかもしれない。けれど、幸村を大事にしたいと思ったから。自分だけじゃなく、幸村にも気持ち良くなって欲しいと思ったから。
「んんん…あああん…。」
 腰を小さく上下に揺すって角度を変えて、中の良い部分を探る。
「ふあ…っ。」
 幸村の声に甘さが含まれたところを見計らって、もう一度、無防備になっていた形の良い胸にじゅっと吸い付く。
「ああ…ああっ…あああ…っんんっ。」
 探り当てたそこを重点的に狙い、入れたり出したりの運動を続ける。
「ふああ…あああっ…あああんっ…。」
「幸、気持ち良いか?」
「んっ気持ちっ…良い…っああっ、奥…が、ああっ、気持ち、…いいのお…っ。」
 幸村の背中がシーツへ擦れるほど、ズンズンと最奥へ何度も打ち付ける。
「ああああっ、もおおっ、あああああっ、へんっっ…いっちゃうっ…。」
「…くっ…。」
 階段を一気に駆け上がったかのごとく気持ち良さが頂点に達して、幸村は泣き叫ぶような嬌声を上げた。同時に、政宗はその内部へ液をたっぷり流し込んでいた。




☆☆☆
「幸村、大丈夫か?」
 政宗に、ゆるやかに髪、そして頬を少しひんやりとした掌で撫でられて、疲労感で体中が重いと感じていた幸村だったが、何とか意識をはっきりさせて目を開ける。気怠い表情の幸村は、ぼそりと言葉を落とした。
「お腹すいたでござる…。」
「おっけー。」
 政宗は裸にトランクスという出で立ちで、ベッドから降りる。しなやかな筋肉がついている後姿も見惚れるほどカッコ良かった。隣の部屋のソファに置いていた通勤鞄に手を突っ込み、ごそごそと探って、戻ってきた彼の手の中には見覚えのある包装紙。
「これ、一緒に食おうぜ。」
「あ…俺があげたチョコ。」
 幸村の人並はずれた握力で箱はへしゃげてなんともみすぼらしかったが、鼻歌交じりの政宗は何も気にしない風に、するするとリボンを林檎の皮みたいに解き包装紙を外すと、中から出てきたチョコを摘まみあげた。
「ほい、あーん。」
「?、あー。」鼻先にチョコを持ってこられて幸村は条件反射で口を大きく開ける。そんなまだまだあどけなさを残す幸村を見て、まるで雛鳥みたいなだと笑いを零す。
 口にチョコを一欠け放り込ませたと思った途端、政宗は不意打ちで唇を深く合わせてきた。互いの舌の上でチョコが程無く溶ける。その甘い甘い塊の形が跡形も無く消えてしまった後も、夢中で飽きることなくキスを続けた。
「ん…ん…んっ。」
「美味かったぜ。」
 惚けてしまった幸村の唇を開放して、政宗はペロッと自分の下唇を舐めた。それがまた煽情的で幸村はドキドキと心臓を高鳴らせ、裸の胸をそっと毛布で隠す。
「マネージャー。」
 とん、と幸村は政宗の肩に額を乗せてもたれ掛る。
「ん?」
「どんな俺でも、好きでいてくれるので?」
「幸村?」
 もし俺が、男だとしても、とは、聞けなかった。聞いてしまうのが怖かった。
「当たり前だろうが、あんたのことをずっと大切にする。」
 くすぐったいほど甘い声と甘い顔でそう言うと、幸村の頭を包み込むようにふわりと抱きしめる。
「俺も…。」
 切なげな表情を滲まし下を向いた幸村は、感極まったのか、ぎゅっと縋るように政宗の首に両手を回した。
「変なやつだな。」
 少し苦笑を含ませて政宗はそう嘯くと、その自分と同じシャンプーの香りがする髪に唇を寄せた。
「…なあ、もう一回するか?」
「え?」
 幸村は毛布を頭から被り、火照った顔を隠してしまうと。
「…する。」
 と、小さく囁いた。

 
 この何でもない平穏な日々が、続きますように。
 永遠に幸せが続きますように。
 大好きな人と、ずっとずっといられますように。
 溢れんばかりの幸福感で心を満タンにさせた幸村は、目を閉じたまま、政宗の腕の中でそう願った。



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