X ザワザワ…… ンッ… 尚哉が目を覚ます。 目を擦りながら、ぼーっと隣にいた朔夜を見上げていると朔夜が視線に気づいた。 「どうした?まだ寝てて良いぞ」 「……ぅん」 素直に返事をすると、何故か朔夜に向かって両手を広げる。 朔夜はウォッカが入ったグラスを持ったまま一瞬固まった。 二人の珍しい光景に周りのスタッフは笑っている。 ここまでではないが、実は朔夜が来る前に尚哉の甘え攻撃に鼻血続出だったのである。 尚哉は酔うと甘えるらしい。 フフッ… と朔夜は笑うと尚哉を抱き寄せる。 今まで笑って見ていたスタッフは、 これ以上見てたら、やベー!と目をそらし鼻血を回避しようとした。 まだ酔っ払ったままの尚哉は、望み通りに朔夜が近くなったことに嬉しそうに笑うと、朔夜の耳元で 「ちゅーして?」 と頭を傾げたまま朔夜に囁く。尚哉は、酔うと甘えるだけではなく小悪魔になるらしい。 意外な一面を発見し、 二人の時また飲ませよう… と朔夜は心の中で密かに呟き、ニヤリと笑った。 そして、周りに気づかれないように、触れるか触れないかのキスをして背中をトントンと叩く。 尚哉は少し不満気に、むぅーと口を尖らせせるが、朔夜の温もりに安心したのかまたうとうとし始める。 目をしばしばさせた後、小さな声で何かを呟いた。 「どうした?」 朔夜は尚哉に聞く。 「俺…」 眠そうな顔のまま尚哉は口を開いた。 「…ここにいていいのかな。」 そう小さく呟くと、コテンとまた朔夜の胸で寝始める。 様子からするとまだ酔っぱらっているらしいが、普段は言わない様な言葉は、心の中でずっと思い続けていた事だったのだろう。 朔夜は、神妙な顔をすると尚哉を抱いたまま席を立つ。 スタッフ達に挨拶をして会場を後にした。 ヴィーン… とエレベーターが上がっていき、チンッという音とともに扉が開くと、最上階についた。 トサッ… 豪華な部屋には目もくれず、尚哉をベッドに寝かせる。 そのまま、朔夜は隣に腰掛け尚哉の寝顔を見つめていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |