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シンの突然の言動に少し驚いたものの、俺は少しほっとしていた。
よかった、シンとは友達でいることができる。
シンと争うことなんてない。
とっさにそんな自分勝手で、甘い考えを持ってしまった自分をどうにかしたい。
「…ハイジ」
シンに呼ばれ顔を上げるとそこには普段の顔とは違う、ノアの箱船の司令塔の顔をした一人の男が立っていた。
「俺も…お前のことは結構…信用してるぜ。けど、俺はノアの箱船の人間であり、こいつらを任されている以上見殺しにすることは出来ねぇ」
その言葉を聞いた瞬間、視界が真っ暗になった。
普段の俺なら、シンが誰よりも責任感が強くて、仲間意識が強くて、ノアのおじさんが大好きだっていうことにすぐに気づくことが出来たと思う。
だけど今の俺には、そんなことを考える余裕も気づくゆとりもなくて。
シンが俺の敵になるってことがわからなくて。
シンが俺の敵だなんて思える訳もなくて。
「おい、ハイジ…?」
膝が言うことを聞いてくれなくて、無意識にシンから後退ってしまう俺をシンは訝し気に見つめてくる。
どうして…?
どうしてシンは小百合を庇うの?
シンも俺のこと変だって言うの?
見殺しに出来ないって、俺を殺してでもこいつらを助けたいって言うの?
シンが俺よりも小百合を、ゼロに酷いことをしたやつらを庇うのが悲しくて。
悲しくて悲しくて切なくてやるせなくて。
気がついたら俺はシンの胸倉を掴み床に叩きつけていた。
「シンっ!!っ、てめぇシンに何してんだよ!!」
「小百合、近寄るなっ!!」
はっとしたように小百合が俺に殴りかかろうとするのを、シンがやめさせる。
上からシンを見下ろしながら、俺は歓迎パーティーのことを思い出していた。
俺はポケットからナイフを取り出すと、それをシンの頬のラインに沿わせるように当てた。
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