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「…アンタにんな事言われるとは思わなかったぜ。二度とあんな真似はしねぇよ」
ハイジと目を合わせないようにして俺にそう釘をさすシン・アベルを見て、もしかしたらこいつの弱点はハイジなのかも知れないと何となく悟る。
昨日ワンやシン・アベルと楽しそうに笑っていたハイジの姿を思い浮かべていると、ベリーズがシン・アベルに声をかけた。
「何だよ」
本人は別に怒っている訳ではないんだろうが、悪い意味で目力が強いシン・アベルは一言でベリーズを怯えさせる。
「…えぇっと、そのっ、昨日は僕達を体を張って守ってくれてどうもありがとうございました」
冷や汗を流しながら感謝の言葉を告げるベリーズにシン・アベルは目を大きくする。
更にベリーズに続くようにしてゼロも口を開く。
「…ハッキリ言って俺はてめぇらが大嫌いだしクズ野郎だとも思ってる。
だけど敵のエリアの人間を助ける事はかなり勇気のいる事だと思うから、一応礼は言っておく」
不本意だが仕方ないと言った顔でゼロなりに精一杯感謝の言葉を伝えようとしているのが伝わったのか、シン・アベルは気まずそうに舌打ちをした。
「自惚れてんじゃねぇよ。てめぇらは全員ノアさんの獲物だ。大事な獲物をアリスの森のイカレた連中に切り刻まれるのは許されねぇ事なんだよ。ノアさんの為にやった事でお前らの為にやった事じゃねぇ」
吐き捨てるようにベリーズとゼロにそう言って顔をしかめるシン・アベルを見てハイジは不思議そうに首を傾げた。
「あれ…?俺勘違いしちゃってたのかなぁ。シンが昨日あんなに怒ってたのは俺の為に手伝ってるのにふざけんなって言う意味かと思ってたんだけど…」
違うの?とスプーンをくわえたまま困った顔をするハイジにシン・アベルの耳が一瞬にして赤くなった。
シン・アベルは自分でも自分の体の変化に気がついたのか、瞬時に両手で両方の耳を覆いハイジを睨みつける。
「いつまでも呑気に飯なんか食ってんじゃねぇよっ!俺はてめぇらと違って暇じゃねぇんだよ」
まったくハイジの質問の答えとは違う言葉を吐いてハイジに怒りをぶつけるシン・アベルと、
そんなシン・アベルの不可解なリアクションを見て、そんなに怒らなくてもいいのに、シンってもしかして低血圧?と何の疑問も感じる事なくベリーズにそう尋ねるハイジのやり取りを見て俺達はおそらく同じ事を思ったに違いない。
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