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俺が反応のないゼロの膝に手をかけるとゼロはハッとして嫌だ、やめろ、と激しく抵抗し始める。
「この人達に酷い事されるよりは俺の方がいくらかマシだと思ったんだけど俺間違ってる…?」
ゼロのあまりの嫌がり様に軽くショックを受けながら恐る恐るそう尋ねるとゼロは口ごもった。
「…だって、俺が逆の立場だったら絶対にあり得ねぇって思うのに。
そんな事をお前にさせられる訳ねぇだろっ、
何で逃げねぇんだよ…」
ゼロの目から今まで堪えていた涙がついに溢れ出した。
泣かせるつもりじゃなかったんだけどな。
俺達を囲むように上から見下ろす囚人達からは早くしろ、と野次がとんでくる。
俺はゼロを安心させる為にゼロの右手を握りしめた。
「俺は何ともないから大丈夫。ゼロが気にする事は何も無いんだよ?俺の事今だけ女の子だと思ってちょっとだけ我慢して」
俺がそう言い聞かせるとゼロは大きく息を吐き、目をギュッと閉じた。
「マジで死にたい」
「駄目だよゼロ。物事は前向きに考えないと。これも何かの経験だと思えば、まぁお兄さんを信じなさい」
まるで世界の終わりが来たように泣き崩れるゼロにそう返すと、
涙をボロボロ溢しながらゼロは俺を怪訝そうな顔で見つめた。
「何でそんなにポジティブなのかマジで理解出来ねぇっ。
つーかお前が俺より年上だって言う事がまずあり得ねぇから」
酷いっ、俺童顔気にしてるのに!
俺は若干の精神的ダメージを受けたものの、ゼロに少し元気が戻って胸を撫で下ろした。
俺は覚悟を決めたように再び目を固く閉じ、体を強張らせるゼロの足に手をかけた。
ゆっくりとゼロの足を開かせていく俺にゼロの顔は赤く染まり怯えるように体を震わせた。
俺は再びゼロの手を自分の手と絡ませるとしっかりと握りしめた。
大丈夫、怖いことはしないから。
心の中で俺はゼロにそう言い聞かせた。
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