342 「…う゛ーん。取り合えずもう一回ゼロと話をしてみようかな。襲うかどうかはその時考えるよ」 悩んだ挙げ句に俺がそう結論を出すとワンワンに鼻で笑われた。 「わかんねぇー、押し倒して舌まで入れておいて何を躊躇してんだか。何でそん時そのまま襲わなかったんだよ。俺なら確実にヤリ倒してるぜ?お前本当に男かぁ?女じゃねーの」 「そんな事言ったって俺、ゼロに怖い事したくねぇもん」 俺は疑いの眼差しで俺を見つめ、確認の為に俺の下半身を撫で回すワンワンの形のいい綺麗な手を大人しく見つめる。 「ちっ、つまんねぇ」 「当たり前じゃん俺男だし。ワンワンには俺が女の子に見えるの?」 「顔だけ見ればな。あいつノンケだろ?そう言った意味ではお前得だな。相手がお前なら男と言うハードルを越えやすいんじゃねぇか?」 俺が男だと言うことを自分の手で改めて確認して、ワンワンは少し残念そうな顔をして投げやりに俺に言葉を投げる。 「うーん。でもゼロ俺の裸見てるしどうだろ?」 ゼロが俺を男と認識していなかったら微妙だなぁと思っていると、ワンワンが後ろに倒れそうなくらいに伸びをした。 「さすが俺、出来たぜ」 「えっ?!もう出来たの?わ〜わ〜どうしよう〜」 「わかったから首出せ」 俺は抑えきれない興奮を持て余しながら大人しくワンワンに首を差し出す。 間近にあるワンワンの顔を観察しながら俺の首に触れるワンワンの手の感触がくすぐったくて俺は身をよじってしまう。 「ん、いいんじゃねぇの。これでタートルネック以外も着られるぜ?」 「鏡、鏡っ」 俺のリクエスト通りに首が隠れるデザインにしてくれたワンワンに感謝しながら俺は周りを見渡す。 図書室に自分の姿を映すものがなくてガックリしていると、急にワンワンが机の上を片付け始めた。 「ハイジ、ここに横になれ」 「…?何で?」 物が無くなった広い机を叩いて俺に机の上に乗るように指示するワンワンを不思議に思いながら、俺は言われた通りに机の上に体を横たえる。 すると天井に机の上に仰向けに寝ている自分の姿が映った。 「なかなかいいだろ?」 俺の傍らに立って自慢気に俺の顔を見下ろすワンワンに俺は何度も首を縦に振る。 全面鏡張りの天井を見上げて、俺はにやける顔をこらえる事が出来なかった。 BackNext [戻る] |