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シンはゼロのその言葉を聞くと、何かを諦めているような眼差しで俺達を一瞬だけ見つめた。

俺にはシンのその眼差しの意味を理解することが出来なかった。


「そう言えばお前今日は当然ウチに来ないだろ」

例の遊びに行く約束の件だと言う事は直ぐにわかった。

「行くよ」

俺がそう答えるとシンは目を大きくした。

片付けを終え、俺達は兄ちゃんと合流するべく出口へ足を進める。

ゼロとピンクの鶏さんは歩きながら俺とシンの会話を一緒に聞いている。

「お前正気か?」

「約束は俺守りたいし、それに俺ノアのおじさんと話がしたいんだ今回のこと」

「わかっているのか?お前らを恨んでいる奴も当然いるし、仲間を殺されて皆怒り狂っている。そんな中に来るって言うのかお前」

シンは多分俺の事を心配してくれている。

そしてこれ以上仲間を失いたくないと怯えている。


「うん。俺はシンの事は信じてる。

だからシンの言う通りノアのおじさんは俺との約束を守ってくれていたって信じるよ。

あくまでも小百合の暴走って事で。だから行ってノアのおじさんと話がしたい」


俺がそう答えるとシンは苦い顔をした。

「もしもの時は…俺を殺していい。俺はノアさんやあいつらを裏切れないしお前を殺せない」


俺はそんな事を言うシンを思わず突き飛ばしてしまった。

「俺だって殺したくねえよ!ふざけんな!そんな事言わないでよ」

俺が簡単にいつでもシンを殺せるみたいなシンの言い方がむかつく。


「だったら俺にどうしろってんだよお前は!少しは俺の気持ちも考えろよ!」

「そう言う時はシンは俺の手を引いて逃げればいいんだよ!そうすれば俺もシンもノアのおじさん達もみんな無事じゃん!」

「駆け落ちか!なんつーわがままいいやがる…てめえはもう本当に…。

まあでも…そうだな。いざって時はそうする。無茶苦茶だが多分それが一番平和だ。危険物は取り除くに限る」

そんな悪態をついて俺の肩に拳を当てるシンの表情が少し和らいだ。

俺はその事に少しホッとしながら、ノアのおじさんの元へ一足先に帰っていくシンを見送った。

ごめんシン。

わかってるんだ。全ては俺の我が儘。

どれだけシンを苦しめているのかも、どれだけシンに甘えているのかも。

ちゃんとわかってる。

だけど、俺にも譲れないものがある。

そして守りたいものもあるんだ。

俺はシンと友達になった事を絶対後悔なんてしないし、させないよシン。

「お前らってまじでダチやってんだなあ。普通に仲がいいのな」

階段を上ったいつもの所で兄ちゃん達を待ってると、ピンクの鶏さんにそんな事を言われた。

「どう言う意味?よくわかんないよ」

俺がそう言って見上げると、鎖が絡まった大きな手で頭を撫でられた。

「そう言えば、ラクハは何か言ってなかったか。俺の事」

ピンクの鶏さんは聞きにくそうにそう尋ねてくる。

「別に何も。どうかしたの?兄ちゃんに用事があるの?」

「いや、だったら別にいい」

ピンクの鶏さんは口ではそういいつつも、何かを考えるように目を伏せた。

その時何故かわからないけど、何か嫌な感じがした。

「兄ちゃんを傷つけたら俺怒るよ」

俺がそう言うとピンクの鶏さんはわかりやすく驚いた。

「何言ってんだハイジ。俺がラクハに何かする訳ねえだろ?俺とラクハは仲良しなんだぜ?」

俺を宥めるように頭を撫でてくるピンクの鶏さんはいつもの鶏さんで。

何で俺は嫌な感じがしたのかよくわからなかった。

「そうだよね。兄ちゃんここに来て仲良しな人が沢山出来てよかった」

「ち、因みにあいつは今誰と一番仲がいいんだ?」

「うーんとね」

「一番は当然フック船長だろ。プロポーズ受けたって言ってたし」

俺が考えていると代わりにゼロが答えてくれた。

「うん。それは間違いない。後はベリーズも仲良しだよね」

「あいつクララ大好きだからな」

「後はね、猫さんも結構仲良しだと思うよ。
兄ちゃんロゼと居る時結構素が出てるもん。
ロゼなら多分兄ちゃんがどんな事しても笑ってくれそうだしね」

俺とゼロの会話を聞いてピンクの鶏さんは何故か顔をしかめた。



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あきゅろす。
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