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「…裸でお前と2人っきりってのはちょっとな。お前前科あるし」

想像して数秒で俺の頭の中でその結論が導き出された。

俺のその言葉を聞いて何故かエドアンは押し黙ってしまった。

俺を後ろから抱きしめるエドアンの腕の力が強くなり若干息苦しい。

「…前科って。身の危険を感じてるのは俺の方だよ。裸で密室に2人っきり…。お前に俺のこの清らかな体を痛めつけられ、汚され、バラバラにされて放置されるんじゃないかって。恐怖に怯えてるんだからっ!

そんな危険をかえりみず、お兄ちゃんと一緒に居たいって言う俺の健気な恋心がわからねぇかなー?」

「満面の笑みで言われても説得力ねぇんだよ。どMなだけだろ。お前はよっぽど俺を殺人犯にしたいらしいな」

胸に手を当て、言葉に酔いしれながらそう熱弁するチェシャ猫に冷たくそう言い返すと、何言ってんの殺人犯じゃん、と舌を出された。

煩わしいのでさっさと風呂に入って来た方が楽かも知れないと思い、着替えを取って来ようと思ったが背中の温もりに足を止められる。

「もー、エディが駄目とか言うから〜。俺とラクハはベロちゅーして過激で濃厚なプレイまでした仲なんだからお風呂くらいよくない?別に」

チェシャ猫がエドアンの顔を見つめながら不満気にそう呟くとエドアンの腕が僅かに震えた。

「悪かったよ。そうだよな、俺が決める事じゃない。クララが決める事だ。あんまり長湯するなよ?のぼせるとチェシャ猫に襲われるからな」

エドアンは何でそんなにも切なそうに、傷ついたような顔をして笑うんだろうか。

ゆっくりと名残惜しそうに離れて行くエドアンの腕を俺は思わず寸前で掴んでしまう。

チェシャ猫が退屈そうな顔をし始めたのを横目に捉えながら、不思議そうに掴まれた自分の腕と俺の顔を見つめるエドアンに俺は言葉を投げる。

「お前も…行かないか?」

声が変に弱々しく、不自然であった事に苛立ちながらも目線を僅かに上に上げると、そこにはもう曇りはない。


「何?一緒に行きたかったから拗ねてたのかよ?そうならそう言えばいいのに。別に俺は3Pでも構わないんだからぁ」

「何言ってんだよ。風呂は疲れを癒やす所だろ?疲れてどうするんだよ?」

「わかってねぇなぁ。風呂場はエロとサスペンスの泉だよ?」

チェシャ猫とエドアンの口論を聞き流しながら再び俺を抱きしめてくる黒い大型犬が嬉しそうに笑っている事に俺は1人安堵した。


end



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